これは Kyash Advent Calendar 2024 の17日目の記事です、こんにちは あるいは こんばんは。KyashでEngineering Managerをしている 牧山(@_rmakiyama)です。
2024年1月からEMのロールとなり、気づけばまるっと1年が経とうとしています。キャリアの中でEMを担うのは初めてです。
どんなロールでも、誰しも始めは1年生。RPGのように、ロールが変わるとステータスに変化があるような世界ではありません。
唯一の正解のないEMというロールに対し、とあるEMのセーブデータを覗いてもらえるよう、徒然なるままに振り返りを残しておこうと思います。
どういう経緯でEMに?
私は2022年の10月に、AndroidエンジニアとしてKyashにジョインしました。
前任のEMの卒業を機に、一時的にEMが不在の時期がありました。その当時モバイルメンバーは6名(iOS、 Androidともに3名)かつ、それぞれが自律して動けることもあり、個人的にもそこまで大きな課題感はなかったように思っています。
そんな中で、弊社VP of Engineeringのこにふぁーさんから「モバイルチームのEMやってみるのはどうか?」と打診を受けました。打診のときに用意してもらっていたdocsの一部はこんな内容です。
ドキュメントではさらに、『なぜmakiyama=sanにお願いしたいか』『何をお願いしたいか』など、明確な期待をセットで伝えていただけました。これは【前編】評価、1on1だけやってていいの? こにふぁーさん、あらたまさんに聞く EMが担うべき役割とは #EMの役割や役割をお願いする時に伝えていることでも触れられているとおりですね。実際、受ける側としてとてもありがたかったです。
おかげでイメージもしやすく、自分としても、『積極的に目指してはいないがチャンスがあればやってみたい』と思っていたので、その場でイエスの回答をしました。
まずなにをやったのか
なにはともあれ、自分が何をやっていくのかということを整理しました。
整理にあたっては『エンジニアリングマネージャーのしごと』をガッと一読して全体像を掴み、『エンジニアリングマネージャ/プロダクトマネージャのための知識体系と読書ガイド』で少し具体な項目のインデックスを増やし、いろんな記事や登壇資料を読み漁りました。知らないことだらけの扉が開いてしまったという感じでしたね。最近はEMというロールも認知度が高まり、コミュニティの熱量も高いので、たくさん知見がインターネット上にあって良いですね。
EMのアウトプットについて『エンジニアリングマネージャーのしごと』では、下記のように定義しています。(あなた = マネージャー自身)
マネージャーのアウトプット = あなたのチームのアウトプット + あなたが影響を与えた他のチームのアウトプット
そこで私のミッションとしては、マネジメントするチームのアウトプットの最大化としました。ここでのチームはモバイルです。
「アウトカム」ではなく「アウトプット」としたのは、モバイルチームとして見たときに、アウトプットに目線を置くほうが、よりコントローラブルであり、個々人の目標を考えるときにもイメージがつきやすいという考えからです。
また、「他のチームのアウトプット」に触れていない理由として、当時のモバイルチームは職能の切り口で分けられたチームですが、それぞれフィーチャーチームにも所属しており、マトリクス組織のような構造になっていました。そのため、モバイルチームの活躍がおのずと各フィーチャーチームに影響を与えるだろうと考えたからです。
さてミッションは決まれどこれはだいぶ抽象的です。よし具体を考えるぞ、という中で、私がEMを担うタイミングでモバイルチームに大きな課題は認識していませんでした。(もちろん小さな課題や、やりたいことなどはある)とはいえこれはあくまで自分がメンバーという視点での話になります。
まずは自分だけで課題を定義して推し進めるのではなく、1on1を通して課題を見極めることにしました。
1on1
自分がメンバーとしての1on1はやっていましたが、マネージャーの立場として1on1をするのは初めてです。そこでまずは、教科書の『エンジニアリングマネージャーのしごと』に記載があるコントラクティングを素直にそのままやってみることに決め、最初の1on1のアジェンダとして下記の準備をしました。
当時は特に問いのスキルも低くてうまくいった感覚は正直ありませんが、期待値のすり合わせという意味では、やってよかったなという感覚があります。期待値のすり合わせは自分がメンバーとして1on1をするうえでも大事にしているところなので丁寧にやることを意識しました。
そこからは定期的な1on1ですね。1on1を通して課題を見極めるぞ、というスタンスでいましたが、実際にはメンバーそれぞれが自身で課題あるいはモヤりを見つけてくれているので、どちらかというと壁打ち相手になることがメインになっているなと感じています。私がひとりで見極めをしなければということはなかったわけです。ここは発見でもあり、メンバーにはいつも感謝しているところです。
壁打ちでは、一緒に課題の輪郭を明確にしたり、Howを実行したら課題が解決しているか?を一緒に確認したりして、Howの精度を高めることを意識しました。基本的に「これをやってください」と具体をそのままお願いすることはやらず、出てきた課題にオーナーシップを持ってもらい、実行まで委譲するようにしています。もちろん、いくらでもサポートするよ!がセットですね。
実行してもらううえで大事にしているのは、メンバーに気持ちよくファーストペンギンになってもらうこと、自分はセカンドペンギンとしてファーストフォロワーになることです。
これまで自分がメンバーとして動くときも、チームメンバーはいつもフォロワーになってくれて動きやすかったという実体験からこれを意識するようになりました。
プレイングとの割合
私もいわゆるプレイングマネージャーです。よくプレイングとマネジメントの割合や向き合い方についての話を目にするので私の考えと実態についても振り返ってみます。前提として、プレイングの割合についても決定を委譲されていました。
EMを担うタイミングで、私のチームはAndroid 1名(私)/ iOS 1名のチームでした。その後チームが統合され、Android / iOS 2名ずつのチームになりました。チームとして取り組む内容としても、私は1人のプレイヤーとしての動きも期待されていました。
この1年を振り返ると、70%くらいはプレイングに割いていたように思います(今さらだけど割合で表すの難しい)。それも下記のような背景からでした。
- 今は、EMに専念しないと解決できない課題がない
- 1on1で出てきた課題に応じて柔軟に変えたらいい
- 具体の実行は頼れるメンバーがいる
立ち返るとミッションはマネジメントするチームのアウトプットの最大化です。これを実現するために、どういう振る舞いをすればよいか、なので、どういう割合にすべきという答えはありません。割合で考える必要がないんじゃないかなとも思っています。
近視眼的にならないように気をつけながら、自分がプレイヤーとして手を動かすことが良いと判断をしているのでこれもひとつの正解でしょう。と、頭では分かっているけどなんだかこれでいいのかしらという気持ちは常にあるものです。付き合っていきましょう、やっていくぞ。
1年経った今は、改めて目線を中長期まで向けたうえで取り組むべき課題はないかを考える時期になってきたように思います。採用もやっていきますからね。やっていくぞ!
マネジメント範囲の変化
7月から組織変更があり事業部制が取られるようになりました。
これに伴い、マネジメント範囲がモバイルチームからtoC領域の事業部のエンジニアに変化しています。内訳としては、モバイルが3名、バックエンド+QAが3名となり、自身の職能であるモバイル以外のエンジニアもマネジメントすることになりました。
職能チームのマネージャーから、フィーチャーチームのマネージャーになったわけですが、どちらも良し悪しあるな〜という所感です。
職能チームのマネージャーは、スキルセットがかなり活きてくるので、技術課題の場合は解像度も高めやすく、壁打ちもラクです。もちろん評価という側面でもやりやすい。とはいえ、私の場合はメンバーのスキルも高く、技術的な側面で支援することはあまりありませんでした。どちらかというと、自身(メンバー)のチームやプロジェクトの進め方についての相談が多く、私が所属しないチームの細かい課題のニュアンスを汲み取るのは難しくて、少しもどかしさを感じていたりしました。それでもことが前に進んだのは、オーナーシップを持って実行を進めてくれるメンバーだったからだなと感謝しています。
フィーチャーチームのマネージャーは、私とメンバーが同じ事業部として持つ目標が同じなので、そこの目線が揃っている部分はとてもやりやすいなと感じています。この変化の前は、自分の専門じゃない技術領域のメンバーのマネジメントに多少なりとも不安はありましたが、モバイルチーム同様、技術的な話よりもチームやプロジェクトの進め方についてよく話しています。ここはファーストフォロワーにもなりやすいですね。
1年の間にこの変化があったのは良い経験でした。どちらにせよ、どこを頼り、どこをサポートするかの違いだなと今は思っています。
振り返ってどうだった?
いろいろと振り返ってみましたが、正直、EMとしてうまくいったという実感はありません。そもそもEMとしてうまくいくとはどういうことか、という解像度がまだ低いのかも知れません。 それでも、モバイルチームとしては1年前より成熟してきたように感じますし、事業部としてもこの半年で多くのトライをやってきて、こちらも成熟してきていると感じています。ここは救いですね、メンバーには本当に感謝です。
最初に戻りますが、EMというロールになったからといって突然ステータスに変化があるわけではありません。これは2年目も然りです。別の見方をすると、その後もしロールが変わったとしても、この経験値は必ず活きてくるという感覚もあります。ロールが変わってもレベル1に戻らないわけです。今は愚直にEMとしての経験値をためていきたいと思います。レベルアップしていくぞ!
さてさてKyashでは一緒に最高のプロダクト、最高の組織にしていくぞ!という仲間を募集しています 🙌🏻ちょっとでも興味がある、そんな人は、面識あるなしにかかわらずせび気軽にお話しましょう!
求人一覧はこちらから 🙋🏻♂️