ヴィジョンの真価

この記事は Kyash Advent Calendar 2024 の25日目の記事です。今年もKyashのアドベントカレンダーの締めくくりとして、この場を借りてエントリーさせていただきます。今回のテーマは、Kyashが創業当初から大切にしているヴィジョンについてです。

ヴィジョンとは何なのか

よく「あの起業家はヴィジョナリーだ」や「この会社にはヴィジョンがある」などと表現されることがあります。ヴィジョンがあることと、良いプロダクトや事業を作ることとはどのような関係があるのでしょうか。ヴィジョンは単なる理念やスローガンではなく、会社やプロダクトの方向性を形作る羅針盤であると思っています。私たちが日々の挑戦を通じて進むべき道を示すものです。いろんな文献などを見ても、ここまではよく書かれていると思います。ただし、これもいまいち抽象的でわかりづらいですね。 自分の解釈では、どのような世の中に貢献したいのか、どのように利用者の暮らしを良くできるのか、ということに対するスタンスだと考えています。 英語にはなりますが、この記事が自分は一番しっくりきています。 チームのベクトルともいうべきKyashのヴィジョンについてもう少し詳しく書いていきたいと思います。

Kyashのヴィジョン

Kyashのヴィジョンは、「新しいお金の文化を創る」です。 ミッションである「価値移動のインフラを創る」ことによって、お金と人間の関係を取り戻し、 新しい文化 ≒「常識」が生まれてくるところに貢献したい。 Kyashのミッションや創り出そうとしているモノについては以下の過去エントリーをご参照ください。

Kyashは個人向け(C事業)と法人向け(B事業)があります。 ここでは、創業来からコミットしている個人向け事業について、この「新しいお金の文化を創る」が意味するものを書いていきます。 これは遠大なヴィジョンですが、まず実現していきたいのは「人びとの経済的な豊かさに貢献する」ことです。英語では、「Contributing to users' financial well-being」になります。 日本では失われたX十年や給料が上がらない報道などをよく目にしますが、Kyashのサービスで利用者の所得を直接的に増やすことはできません。 Kyashは、利用者の日々のお金をコントロールしたり、アクセスしやすくすることを通じて、豊かさの実感に貢献したいと考えています。 興味深いことに、アメリカでは、このFinancial Well-beingを測る指標として、政府機関であるCFPB (Consumer Financial Protection Bureau)がFinancial Well-being Scoreというものを出しています。

https://www.consumerfinance.gov/consumer-tools/educator-tools/financial-well-being-resources/measure-and-score/

さらにこのスコアの要素が開示されており、これをKyashのビジョンを構成するものとして全社会議でも共有したことがあります。

Financial Well-beingの構成要素

ポイントは、利用者に「実感がある」ということ。「状態である」ことと、「実感があること」は似て非なるもので、 Kyashのプロダクト体験を設計する上で重要な視点になっています。

※ Kyashのヴィジョンに興味を持っていただいた方は、こちらのVision Deckもぜひご覧ください。

ヴィジョンの実現に向けて

上記で示した利用者の豊かさの実感に貢献するためには、決済領域のみでは役不足です。 Kyashは、自社のサービススコープを決済サービスではなく、ライフスタイルサービスと定義しており、 利用者の日々のお金の接点で貢献できる存在を目指しています。

従来は、下図で示す領域の金融サービスは、業態が分かれ、異なる法規制とアカウントの概念で提供されてきました。 そこでKyashは、利用者の日常に一通り必要なお金の接点をワンストップで提供することで、暮らしに利便をもたらすことを目指しています。

Kyashはライフスタイルサービス

例えば、Kyashが10月から提供を開始した「スポットマネー」も、Kyashのヴィジョンに基づく取り組みの一環です。ユーザーが日常的に抱える「お金が足りない」や「計画的に貯めたい」といった課題に対応する機能として設計されました。KyashのPM、デザイナーそしてエンジニアが体験にこだわって、ヴィジョンに基づく価値観をプロダクト上で表現してくれています。詳しくはこちら。 blog.kyash.co

ヴィジョンはWillドリブン、プロダクトは顧客起点でありたい

これまでヴィジョンについて書いてきました。ヴィジョンは、会社やチームが大切にするベクトル、利用者への働きかけ方。ヴィジョンは、利用者に答えを聞くことが難しい分、自社が何をしたいか、どのような世の中の変化の一部になりたいか、が根幹になります。他方で、その方針を誰に対してどのようなプロダクトを提供するか、というプロダクト戦略は、「マーケットイン」という考え方、つまり具体的なN1ニーズに基づいて設計を進めることが大切だと考えています。プロダクトアウトという概念は必ずしもマイナスな表現ではありませんが、ターゲット顧客やニーズの解像度が低いと誰のためでもないプロダクトが出来上がってしまいます。 冒頭に言及したように、ヴィジョンがあるから良いサービスや事業ができるとは限らないし、逆も然り。良いサービスと事業であっても、ヴィジョンがなければ場当たり的になり、中期的に取り組んでいくものが積み上げになりづらい。自分たちの存在意義を定義した上で、顧客起点で解像度を上げながらプロダクトを開発することがとても大切です。そして組織化が重要なスタートアップのフェーズでは、いかに優秀なチームと共に組織としての学習力を身につけられるかが勝負だと、日々の失敗を通じて痛感しています。

未来への展望

私たちのヴィジョンである「新しいお金の文化を創る」という使命は、これからも変わることはありません。むしろ、これまでの経験から学び、より強固なものへと進化させていきます。

これからのKyashは、さらに多様な金融ニーズに応えるプロダクトを展開しつつ、ユーザー一人ひとりが経済的な豊かさを実感できる世界を作り上げていきます。そして、このヴィジョンを共有するすべてのステークホルダーと共に、新しいお金の文化を育んでいきたいと思っています。

最後に、おかげさまでKyashは年明けで創業から10年になります。Kyashに関わってくださったすべてのメンバーやステークホルダーの皆様に心から感謝しています。とりわけ現在も第一線で奮闘しているKyashメンバー一人ひとりが、ヴィジョンの実現に向けて日々挑戦を重ねてくれていることに、改めて感謝の意を表します。

本年も、Kyashを大変お世話になりました。 これからもKyashをどうぞよろしくお願いいたします。

どうぞ素敵な新年をお迎えください!!

Kyash Visaプリペイドカードって、チャージするのが手間だし、ちょっと面倒じゃない??

Kyash COO の鳥越です*1。これは Kyash Advent Calendar 2024 24日目の記事です。

Kyashはチャージ型クレカ (Visaプリペイドカード) を提供していますが、カード利用する前にチャージするって面倒ですか?

「普通のクレカはチャージしなくても使えるのに、使う前にチャージ残高を確認して残高が足りなかったらいちいちチャージするってちょっと面倒だし不便だなあ〜」といったユーザーの声もあります。一方で、「チャージ型クレカはちっとも手間ではなく、むしろ使い過ぎを防げるから安心」といったユーザーや、そもそもチャージ型クレカによってクレカを普段使いできるようになり、キャッシュレス社会で暮らしていくなかで多くの恩恵を受けているというユーザーも実はたくさんいらっしゃるのです。

Kyashでは、オンライン・オフラインのハイブリット環境で All-hands meeting を毎月開催しています。2024年12月の All-hands meeting で僕が話した内容を少し引用しながら、現在Kyashで進めているブルーオーシャン戦略 (Kyash2.0) の方向性についてここに書いてみます。

*1:id:konifar が代理で公開しています

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iOSアプリからKMPで定義したsuspend関数を呼ぶ

これは Kyash Advent Calendar 2024 の22日目の記事です。KyashでiOSアプリを開発している tamadon です。

Kyashのモバイルアプリ開発では KMP(Kotlin Multiplatform) を採用しています。「KMPとはなんぞや?」「KyashでKMPの構成は?」については以下の記事を御覧ください。

AndroidとiOSのエンジニアでKMPの実装をペアプロしている話

この記事で掲載している構成図を紹介します。新規でKMPを使用する画面はこの構成で実装しています。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/rmakiyama/20231205/20231205094930.png

KMPの採用を積極的に進めていった結果、既存の画面に機能を追加する際にReactorを作成して画面全体を作り直す程ではないけど、UseCase層まではKMPで実装し処理を共通化したいという要望が上がってきました。

今回はサンプルなのでこういった仮のsuspend関数があると仮定します。

class ExampleUseCase {
    suspend fun exampleFunction() {
        // Do something
    }
}

KMPを採用していない既存の画面は以下のような構成になっています。このViewModelにKMPで実装したUseCaseを追加するイメージです。

こちらをSKIE(スカイ)の機能を利用して実現する方法を紹介します。 SKIEの説明については以下の記事を参照ください。

Kotlin Multiplatform の SKIE (スカイ)を導入して、iOS エンジニアの開発者体験を改善しました。

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やさしい金融を作るための非常識な体験設計

この記事は Kyash Advent Calendar 2024 20日目の記事です。

Kyashでプロダクトマネージャー(と貸金業務取扱主任者)をしている Ueda です。

Kyashでは10月にスポットマネーという機能をリリースしました。 www.kyash.co

一般的な言葉で言うと「お金を借りる・貸す」サービスであり、こういった言葉を聞くだけで「うっ」となる方もいるのではないでしょうか。

今回はアドベントカレンダーという機会を通じて、本機能提供を担当した自分から「どういう背景と思いでスポットマネーリリースしたか」そして「Kyashが目指すやさしい金融とそのための非常識な体験設計」について、タイトルの説明もしながら書いてみようかと思います。

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なぜKyashのモバイルチームは周りからいいチームだよねと言われるのか

この記事はKyash Advent Calendar 2024の19日目の記事です。

こんにちは。Kyashでモバイルエンジニアをしているkato(@ktc_eng)です。 Kyashのモバイルチームはありがたいことにいいチームだよね、仲が良いよねと社内の方々から評価していただくことが多い印象です。今回この記事ではなぜモバイルチームが社内にそのような印象を与えているのか、その秘訣は何なのかを言葉にしてみたいと思います。この種の記事は書き手がマネージャーであることがほとんどのように思いますが、これをメンバーが語ることで、よりリアルに雰囲気が伝わるといいなと願っています。

半期に一度の目標設定と振り返り

モバイルチームは目標設定と振り返りを半期に一回の頻度で設けています。現在Kyashは事業部制をとっており事業部ごとに目標が存在しますが、それとは別にモバイルチーム単位で独自に目標を設定しています。今年は目標設定も振り返りもメンバーから、やりたいよね、そろそろそういう時期だよねという話が自発的に出てきて実現していたりします。手前味噌ながらすごいことですよね。

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EM1年生の振り返り

これは Kyash Advent Calendar 2024 の17日目の記事です、こんにちは あるいは こんばんは。KyashでEngineering Managerをしている 牧山(@_rmakiyama)です。

2024年1月からEMのロールとなり、気づけばまるっと1年が経とうとしています。キャリアの中でEMを担うのは初めてです。
どんなロールでも、誰しも始めは1年生。RPGのように、ロールが変わるとステータスに変化があるような世界ではありません。

唯一の正解のないEMというロールに対し、とあるEMのセーブデータを覗いてもらえるよう、徒然なるままに振り返りを残しておこうと思います。

どういう経緯でEMに?

私は2022年の10月に、AndroidエンジニアとしてKyashにジョインしました。 前任のEMの卒業を機に、一時的にEMが不在の時期がありました。その当時モバイルメンバーは6名(iOSAndroidともに3名)かつ、それぞれが自律して動けることもあり、個人的にもそこまで大きな課題感はなかったように思っています。
そんな中で、弊社VP of Engineeringのこにふぁーさんから「モバイルチームのEMやってみるのはどうか?」と打診を受けました。打診のときに用意してもらっていたdocsの一部はこんな内容です。

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開発完了からリリースまでのリードタイム改善に挑戦した話

はじめに

これは Kyash Advent Calendar 2024 の13日目の記事です。12日目は おもたに@k_omotani の 「銀行振込設計で考えていること」です。

こんにちは、 Kyashでモバイルエンジニアをしているnitakanです。

金融業界のスタートアップであるKyashでは、品質を担保しつつ、より迅速に価値を提供できる開発フローを目指しています。

開発プロジェクトにおいて、「開発完了からリリースまでのリードタイムが長い」という課題に直面したことはありませんか?
Kyashでもこの問題が存在しており、その改善策としてQAチームをプロジェクトチームに早期から参加してもらうというトライを行いました。

この記事では、以下の取り組みを中心にご紹介します

  • プロジェクト初期段階からのQAチーム参加
  • チケットベースでの要件定義とテスト設計
  • スプリント内でのQA実施

これにより、開発完了からリリースまでのリードタイム短縮に一定の効果がありました。具体的な改善内容や成果について、ぜひ最後までご覧ください。

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