今日は初夏秋冬1年通してポスティングした話です。内容は以下。
1.ポスティングをして得られるもの
2.実際この仕事はどうなのか
3.ポス禁ステッカー
4.ポスティングをしていて不審者扱いされる
5.ポストの構造
6.馬鹿な話
1.ポスティングをして得られるもの
人間関係が理由で仕事を辞めたので、繋ぎとしてポスティングをしていたのですが、毎日歩き続けることは人生という道を太陽の光が照らしてくれるのと同義だった。
一番役立つのは「地図を読む能力が得られる」ことです。そしてチラシ配りをしていた地域1つ1つが思い出に変わり、自分の新たな故郷のように思えてくることです。
「この場所ポスティングで来たなあ、懐かしい」「ここは苦労して配った難所だ」「この特徴的な建物を覚えてる」
別の仕事で通りかかると今でも懐かしく、無駄なことは1つもない。地図をパッと見で即座に理解し道を覚える力が手に入る。ついでに生きる希望も与えてもらった。
なるべく長い時間を、お金を稼ぎつつ1人で過ごせる仕事こそ最高だと思っている。水田に揺れる稲穂を眺め、小さな虫たちの生活ぶりに微笑み、そうしながら煙草を吸っていたい。
金欠時に助かるこの素晴らしいセーフティネットがこれからも長く存在し続けてくれることを願いながら振り返ってみます。
2.実際この仕事はどうなのか
私が出した結論から言うと、ポスティングでどれだけの量配れるかはスニーカーの良し悪しで決まる。私はナイキの値が張るスニーカーで配っていたので歩くのはそんなには苦にはならなかったです。
あとは飲料代の小銭を持っていれば、いつでも喉を潤せる、煙草もいつでも吸える。こんな自由は工場に監禁されている状態では不可能で、加えて人間関係の悩みはほぼ無いと言っても過言ではない。
と、良いことはここまでにして、
ポスティングを経験するまでは「主婦がダイエットにしている」と考えていました。しかし想像以上に体力を要する仕事です。誰にどう見られていようが、この目標を達成するという強い気持ちが無ければ、太陽の照り付ける中で歩き続けることは出来ない。
1人でする仕事なのでかなり真面目な人でないと無理です。例えばチラシをコッソリ捨ててやろうなどと、一瞬でも頭に浮かぶようならこの仕事はよしておいたほうがいいです。周囲からヘンだなって多分見破られます。
頭も使います。
地図を見て効率良いルートを判断し、自分が配り終えた一軒家を覚える記憶力がないと地図ばかり見ていては歩みが止まってしまいます。
人間1人が持ち運べるチラシの量は限界がありますから、その限界までリュックなりトートバックに紙を詰め込んで、持ち出した量が区域をまんべんなく配ったタイミングで大方片付いているのが理想です。そうでないと無駄に重い紙を持って移動するだけになってしまいます。
気紛れな天候の変化にも左右されます。突然の雨で自身はずぶ濡れでもお客様にお届けするチラシは守らねばならない。予め雨とわかっている日は傘を持ってはいるものの… 片手に傘を持つ状態でチラシを濡れないように投函するのは不可能に近い状況もあります。
防水バック+雨具を着る(傘ささないで配る)を試してみましたがかなりみずぼらしいことになり住民にジロジロ見られて精神的にキツイのでやめておいたほうがいいです。
それでも、どんな悪天候でもベストを尽くす真面目な人でなければ苦情だらけになってしまうので、それは他社も含めて配る人全員の連帯責任だと感じていました。
例えば、ポストからはみ出して入れたり、折り曲げて汚い入れ方をしたり、禁止のところに入れる人がいるとポスティング界全体にどのような弊害が起こりうるのか考えてみました。
3.ポス禁ステッカー
数年前この仕事をして直面した問題が「ポスティング禁止」マンションが近年増え続けているということです。こうなると大型マンションにチラシを入れることは出来ないです。
ネットで情報は手に入るのでチラシは必要ないと思うかもですが、ポスティングというアナログな仕事があることで、その日暮らしのお金を得て私の命が救われました。私にとってはそれがすべての正義で、可能であればただ純粋にチラシを入れたい。
宗教やピンクを配ってるわけではありません。そして反響がなければそんなことわざわざしていないはずです。意味があるからやっていることです。
大型マンションの美観を損ねるということでしたらチラシ用のゴミ箱を集合ポストの脇に設置していただければ、捨てるかは個々の住人の方が選択することではないでしょうか。
マンションだけでなく一軒家でも「チラシお断り」ステッカー見かけます。アマゾンで買ったようなのもあれば、手書きもあります。手書きでかなり厳しめな内容の貼り紙も見ました。
インターネット上で、ポスティングは悪と言わんばかりのポス禁ステッカー推しの記事が増えていますが私は残念です。
自分が認めたくない職業を排除する方向へ人々を導くのはよくないと思います。それで生活している人がいます。
確かに、大荷物抱えてようやく帰宅してポストにチラシが入ってると鬱陶しいかもしれません。荷物を抱えながら重要書類との選別をするお手間をかけさせることは申し訳ないですが、言い換えればただ、それだけのことです。私自身も不要なチラシが入っていたら捨てるだけです。それ以上に何かアクションを起こす必要があるでしょうか。
マンションは色々な人間が一箇所に集まっているのでその中の数件でも苦情があればそれがすべてになるのでしょうか、結果としてポスティングの仕事を奪っているのではないかと私は考えています。
4.ポスティングをしていて不審者扱いされる
ポスティングをしていると大型マンションの管理人によく不審者扱いをされました。エントランスに入って集合ポストを探していると「貴方!ここで何してるの?不審者で警察に通報しますよ、今すぐ出てって」と管理人のおばさんに背中をグイグイ押されて追い出されました。普通に断ってくれたら大人しく出ていくのにいきなり犯罪者扱いするなんてちょっと酷いです。
しかしそんなことで傷付く繊細な心でポスティングの仕事はできません。大抵の問題は、歩いている内にどうでもよくなります。
交渉次第でチラシ入れさせてくれる管理人もいるので、すべての大型マンションは無理だとしても、諦めないで熱意を伝えていました。中には特別に許可してくれることも多々ありました。
小さなアパートでもそこの経営者のような人が見張っているところがあって少し不快な体験をしました。チラシを投函していると背後にいつの間にか現れて「あんた誰言うんか、名前を言ってくれ!」と人差し指を私の胸すれすれに突き付けてきて唾飛ばしながら説教を繰り返してくる爺さんがいました。そこ、私の胸ですあと数センチでセクハラです。まるで私一人がここのアパートに迷惑かけてきた言い草ですが、私は今回初めてここのポストに来た者です。面倒なので最後はシカトして去りました。
そうなると集合系は諦め、効率は悪いですが一軒家のポストへしらみつぶしにチラシ投函してゆくのですが、こちらのたてる音で気付いた住人が、なんだなんだと出てきます。そしてチラシを見て「いらないです」とよく言われました。ジェスチャーだけで追い払われることもあります。車や原付で近付いてきて「入れるな」と怒ってくる住人もいます。
何か間違ったことをしているのか、もうやめよう。特に大雨の日はそう思いました。公園で一休みしていると、少し離れたところで遊んでいた少年達が「糞ババアー」と叫んでいました。公園には私しかいないので腹は立ちましたが子供のすることだから我慢しました。
チラシ背負って歩いていると下校中の小学生達がよく「こーんにーちわー」と元気に挨拶してきた。怪しい人を見かけたらとりあえず挨拶するよう指導されてるのか。こちらが「こんにちは」と返事をしても、壊れたレコードのように子供たちは「こーんにーちわー」を繰り返してくるので馬鹿にされていると気付き、もう何も言わなくなっていた。
100mくらい後ろから追いかけてきて「チラシいらん」と付き返してくる婆さんもいた。「何度も注意したでしょう」と怒られたのだが、そのお宅がポス禁という話は聞いていない。チラシを嫌う住人は、チラシを投函してくる人間をとにかく敵視していることだけはわかっていたので謝罪して「気を付けます、もう入れないです」と約束した。
チラシは、人に見られたくないレシートを包んで捨てるのに使ったり工夫次第で他に使いようはあるので、受け取って欲しかったです。
私なら、汗だくの・あるいは寒そうな若者がチラシを背負ってきていたら「お疲れ様です」と言って100%受け取ります。但し、宗教とNHKはお断りです。
5.ポストの構造
チラシは全部表向きではみ出さないように入れている。今は盗難配慮機構(フラップ構造)が多い。その歯型のポストは投函しづらくて一度入れると取り出せない。いや、取り出すことはほぼないけど間違って投函したとしても見ず知らずのお宅の郵便物を盗むわけがない。
蓋のないベーシックなステンレス製集合ポストなら手裏剣投げるみたいに一気にさばけるので有難いです。
歯型ではない蓋付きポストなら纏まったチラシの強度で突っ込めるのでこれも合格です(合格とか私が決めるの笑える)。
一軒家の玄関に設置してある様々なお洒落なポストは見ていて楽しいです。大容量だからチラシも許容しているのかポス禁のステッカーはあまり見かけませんでした。
縦型で蓋が頼りない(開いたら開いたままになってる)ポストはチラシが重力で垂れて綺麗に収まらないのが不満だった。まるで真面目に仕事していないように見える。そして縦型でフラップ構造の大型マンションだと地味に骨が折れる作業になります。
「〇〇荘」のように歴史を感じる集合住宅のポストは表面を触れると指をアイチーと怪我しそうなほどガジガジに錆びてしまっていますが、あと数枚~20枚はかせたいという時にそういう錆びたポストに遭遇することが多かったです。歩き疲れたどり着いたそこは時代錯誤な異空間でした。
アメリカのポストのような筒形は支柱がグラグラしていたり、それ以外にも強度に不安を覚えるポストが多かったのですが、私がポストを壊したことがあるのかどうかはご想像にお任せします。
6.馬鹿な話
チラシ配っていると犬によく吠えられましたが、たまに全く吠えない犬もいて不思議でした。いや、それだけなんですが、、猫は何処でも居るので話しかけてました。誰かの家の軒下で、大仏みたいに動かない妙に貫禄のある猫と一緒に雨宿りしたこともありました。
ポストを探しながら歩くので足元への注意が足りなくてよく転びました。誰も見ていないところで転んで怪我をするとかなり虚しいです。雨の日に段差プレートですべってしばらく立ち上がれないでいる時は、段差プレートに向かって「何でこんなところに!お前のせいで計画が狂ってしまった」と1人で怒ってました。
不気味な廃墟とか、ごみ屋敷もありました。大丈夫なのかここは、まさか人が中で死んでいるのではないかと嫌な想像が駆け巡る。不気味な廃墟から人間が死んで腐った異臭がする気がしたり(そんなの嗅いだこともないのに)中から狂ったやつが現れて私を殺そうとしたらどうする。一応、紙の束を裁く用にカッターは持っているが、そんなやばそうなやつとカッター1本でどう戦うのだ。まだ走って逃げて助けを呼べる場所ならいいが、竹の生い茂る暗い山奥へ行くときは本気で助からないと思う家もあった(住んでる人に失礼すぎる)
どうしてこんなところに池が何個もあるのだ。この池に死体が放り込まれていて誰も気づいいていないからこの池はこんな不気味な色なのか。底が何も見えないから悪魔がやりたい放題している。
何故こんなところにロープを張っているんだこの家は危険人物がいて過去に公にされてない殺人事件が起きてるから立ち入り禁止ということなのかそこに今からチラシを入れるために入って行こうとしている。今回はなんとか無事生きて出ることができたが次回はどうかはわからない。何度も来ているが一度も住人を見たことのないこの不気味な家の庭にあるぬかるんだブヨブヨの地面は一体…
家がデカすぎて入り口がどこかわからなくて、裏口の雑草が高く生い茂る蜘蛛の巣だらけの中を川口探検隊のように勇気を出して突き進んで行ったあとで、実は正しい玄関は逆側にあったことに気付いた。足に変な草の棘がいっぱいくっついてるし無駄な探検をしただけだったこともある。家がデカくて門構えは立派なのにポストが門から入ってかなり遠くの玄関戸のところにありかなり歩かされたり(なんでそんな遠くに)
雨の翌日に庭の水たまりすべてが繋がっていてどこにも渡れるところがない。ポストはその向こうでスニーカーが濡れて気持ち悪い。なんて不親切な家なんだと思った。
4世帯が一つの賃貸形式になってる2階へ上がる階段が、喫煙者である自分にはきつく感じた。そんな賃貸が集まった地域がある(どうして)。そのすべての階段を無視するわけにはいかないのでどれかは選んで階段を上らねば…えっほえっほ、ここの2階は両方住んでいるはず、そして辿り着いた2階2世帯両方「ポス禁」か「空室」で私は無駄に階段駆け上がってるだけだった。出来ればこの4世帯分の集合ポストを1階に設置して欲しい。
その地域すべての一軒家が高所に建っていて、その一軒一軒のまあまあ長い階段を上らないとポストに辿り着けないところがある。そんな地獄みたいなところでもすべてを無視するわけにはいかない。何故、階段の下側にポストを付けないのか。
私は一生懸命やっていたが、一度として住民に「お茶でもお飲みなさい」とか言われたことがない。差し入れなどとんでもない。冷たい世の中になってしまったのか…例えば私がガス検針ならどうなのか、少しは態度変わってくるのか。たまに強烈な住人にゴキブリのように叩かれ、蚊かカメムシのようにジェスチャーで追い払われ、子供にまでコケにされたりしたので、人の視線があまり気にならなくなった。
そんな冒険の中に哀しみあり笑いありのポスティングですが、私の人生の中で一番楽しかった仕事かもしれないです。