繁殖 Feed

2024年12月25日 (水)

胚移植による生産馬2頭の成長

 年の瀬を迎え、何かと慌ただしい時期となりました。日高育成牧場では来春の繁殖シーズンに向け、着々と準備を進めています。日に日に大きくなるおなかを抱えた受胎馬は分娩馬房に近い放牧地へと移動しました。早い馬は2月初旬の分娩を予定しています。

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 今回は2023年秋に胚移植にて生産した1歳馬の成長をご紹介いたします。誕生については過去ページ『胚移植による生産馬誕生』(2023年10月公開;https://blog.jra.jp/kitanoheya/2023/10/post-e15f.html )をご覧ください。
 約450日齢を迎えた2頭の体重はそれぞれ380kg、450kgにまで成長しました。離乳前に厳冬期を迎えるなど、春生まれのサラブレッドとは異なる飼養管理を実施しており、2024年2月の離乳以降、24時間放牧を継続しています。5月には新たな仲間を迎え入れ、3頭仲良く過ごしています。血統的背景の違いからか、これまでのJRAホームブレッドと比較して馬格がある様子で、今後の成長も楽しみです。寒い冬を元気に乗りきってもらえるよう、しっかり管理していきます。

 本年のブログはこれで最後となります。みなさまよいお年をお迎えください。

E 現在。中央と右の2頭が胚移植生産馬。(3頭仲良く走って寄ってきました)

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2024年11月 7日 (木)

実践研修プログラム(直腸検査体験)

日高育成牧場ではJBBA軽種馬経営高度化指導研修事業の一環として、日高育成牧場の職員が講師となり、競走馬の生産、育成に従事している方々に向けて、実際に繁殖馬、子馬、育成馬を活用する研修を行っております。

研修内容も研修生と相談の上、希望に沿ったものを随時行っているところですが先日、直腸検査(繁殖検診)の体験希望がありましたので講師をさせていただきました。

基本的に馬の直腸検査は獣医師が行うので研修生に必要な技術ではありません。しかし、私が日高育成牧場にきて2年、毎年のように数グループで直腸検査体験の希望があります。

直腸検査の最も大きな目的は「種付けタイミングの判断」です。

研修では卵巣や子宮の触診、そして超音波検査で得られる所見を種付けに向けてどう解釈していくか実演しながらレクチャーしています。そしてその後、研修生の方々にも実際に直腸検査をやってもらいます。

多くの方が体験後に「わけわかんない!」、「難しい!」と言うのと同時に「獣医さんはこんな難しいことをやっていたんだ!」と言って下さる研修生もちらほら。

 この研修を通して繁殖検診時に獣医師が何をしているのか、何を考えているのかを知っていただくことで、牧場と獣医師の意思疎通も深まるのではないかと考えています。

また、獣医師でなくとも馬繁殖の知識レベルが上がることで、日本の良い馬づくりの一助になればいいなと思っています。

 

(講師をしていて今回の写真が撮れませんでした。参考までに獣医学生の研修時の写真です。)

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2024年5月 7日 (火)

暖かくなってきました🌸

 最高気温が15℃を超える日も増え、放牧地の草も青々としてきました。馬たちにとっても、わたしたち人間にとっても過ごしやすい季節の訪れです。

 4月13日にミスミズ2024(牡:父アニマルキングダム)が誕生し、今シーズンすべての分娩が終了しました。子馬は破水から15分経たずに娩出され、介助要らずのスムーズな分娩となりました。全頭無事に分娩を終えることができ、安堵しています。

 2月、3月に誕生した子馬たちは広い放牧地での昼夜放牧を開始し、子馬同士で遊ぶ姿も見られるようになってきました。社会性を身につけはじめ、こころもからだも成長しています。元気に大きくなりますように!

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分娩1時間後のミスミズ親子

P4281574 満開の桜の下、爆睡中

24_2 遊ぼう!!

2024年1月 5日 (金)

JRA育成牧場管理指針-生産編-(第3版)発刊のお知らせ

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年もJRA日高育成牧場をよろしくお願い申し上げます。年が明け1歳になったホームブレッドは、昼夜放牧を通して心もからだも日々成長しています。妊娠馬は昼夜放牧から昼放牧に切り替え、2月上旬から幕開けとなる分娩シーズンにむけて、準備を整えているところです。

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 さて、日高育成牧場ではJRAホームブレッドを活用してサラブレッドの生産および育成に取り組み、調査・研究や技術開発を行っています。2010年には「JRA育成牧場管理指針-生産編-」として成果を取りまとめ、生産地における講習会で使用する普及用参考書として活用してきました。

 このたび本指針を改訂し、第3版を発刊いたしました。繁殖牝馬や子馬の管理に関する最新の知見を追加するとともに、動画への二次元コードを掲載し、これまで以上に活用しやすい内容となっております。引き続き、生産・育成の参考書として利用いただけますと幸いです。JRA HPに冊子PDFを公開しておりますので、ぜひご活用ください。

 (リンク先:https://jra.jp/facilities/farm/training/research/ )

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2023年10月25日 (水)

胚移植による生産馬誕生

 胚(受精卵)移植によって生産された馬が誕生しましたのでご紹介いたします。

 胚移植とは生殖補助医療技術のひとつであり、代理母出産ともよばれます。馬の場合はドナー(胚提供馬)が本交配や人工授精によって自らの子宮内で胚を生産したのち、その胚を回収してレシピエント(代理母)へ移植します。

 ドナーとなったのは2023年現在17歳になるオランダ混血種(KWPN)の牝馬(写真1)です。2020東京五輪の総合馬術競技リザーブ馬になるなど高い能力を有していましたが、怪我によりハイクラスの競技会からは引退しました。現在は日高育成牧場で胚移植技術の実践に供しています。

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写真1. ドナーとなった牝馬

 昨年10月、このドナーから一度にふたつの胚(いわゆる二卵性の双子)を回収、それぞれひとつずつ2頭のレシピエントへと移植し、順調に妊娠を継続してきました。

 2頭ともに9月20日が出生予定日でしたが、1頭(写真2)は9月13日に、もう1頭(写真3)は10月4日に誕生しました。血統的には同じ両親から生まれた全兄弟である2頭ですが、レシピエントの違いからか出生には3週間の差が生じ、出生時体重もそれぞれ42kg、50kgと差がありました。毛色や白斑にも違いがあり、血統の奥深さを感じます。


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写真2. 9月13日生まれの子馬

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写真3. 10月4日生まれの子馬

 サラブレッド生産時期と比較すると暖かく青草も豊富なため、生後早いうちから放牧時間を長くした管理を実施しています(写真4)。寒くなるこれからの季節に備えて、サラブレッド生産とは異なる飼養管理方法について模索しているところです。この馬たちの成長も楽しみにしていてくださいね。

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写真4. 少しずつ距離が縮まってきた2頭

2023年5月10日 (水)

ホームブレッドすくすく成長中

GWも終わり、日高育成牧場では桜の木もすっかり葉桜になりました。

放牧地の牧草も青々と茂りだし、放牧に出た親子は嬉しそうに駆け回っております。

 

放牧地での親子の距離感にも変化が出始めています。

生まれて1か月程度までの子馬達は、母馬からあまり離れず親子で過ごす時間がほとんどですが、年長の子馬達は、親から離れる時間が増え、子馬同士で遊び始める時期になりました。

一般的に15~16週齢以降に、子馬は群れの中で「精神的」に自立すると考えられており、早期離乳のタイミングの基準になっています。

 

今年のホームブレッド達も秋の離乳に向けて精神的にもすくすくと成長中です!

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「遊ぼうよー。」「えー眠いからやだー。」

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「1か月齢ですけど何か?」

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「桜をバックにハイポーズ」

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「寝る子は育つ!」

2023年2月17日 (金)

2023年 ホームブレッド第1号・第2号が誕生しました

 2月12日22時頃、今シーズンのホームブレッド第1号となるルイゼリアクィーン2023が誕生しました。大きな星が特徴的な牝馬です。父は2022年より供用が開始されたミスチヴィアスアレックスで、この世代が初年度産駒となります。

S__114245640_2 ルイゼリアクィーン2023

 また、16日7時頃には第2号となるブレシッドサイレンス2023も誕生しました。母馬によく似た白斑をもつ牡馬で、父はデクラレーションオブウォーです。

S__114245638 ブレシッドサイレンス2023親子

 日高育成牧場では出生翌朝(出生8~12時間後)に子馬の血中免疫グロブリン濃度を測定して、初乳免疫移行の確認を行っています。今回生まれたルイゼリアクィーン2023は出生3時間以内に哺乳行動を確認していたものの、翌朝の母馬の乳房が大きく腫れていたこと、また子馬の免疫グロブリン濃度が低かったことから、十分な初乳摂取ができていなかった可能性が考えられました。子馬が初乳から免疫抗体を吸収できるのは生後24時間以内と言われており、中でも6時間以内が最も吸収率が高いと言われています。そのため分娩直後の初乳(搾乳し、冷凍保存しておいたもの)とその場で搾乳した母乳の強制投与を行い、初乳免疫の獲得を促しました。

 処置翌朝(出生翌々日)、子馬の血中に十分量の免疫移行が確認できたことから、初乳免疫獲得は成功したと考えられました(ここで移行確認ができなければ、血漿輸血の検討も必要です)。その後数日間母馬の乳房を確認したところ大きな腫れは引いたことから、子馬の哺乳は上達し十分な栄養摂取ができていると判断しました。

 子馬の初乳免疫移行にはタイムリミットがあり、新生子馬は感染症に弱いためその確認は極めて重要です。免疫グロブリン濃度の測定が難しい場合でも、母馬の乳房の状態から母乳摂取状況を推察することで、子馬の健康状態把握の一助となるかもしれません。

S__114245635 哺乳の様子

2022年2月14日 (月)

ホームブレッド第1号が誕生しました!

 2月12日23時24分頃、本年のホームブレッド第1号(通算101頭目)となるアーツィハーツ2022(父:デクラレーションオブウォー)が誕生しました。両親と同じ鹿毛の牝馬です。外は雪が舞うほどの寒さでしたが、母子ともに無事に分娩を終えました。今回で2産目となる母馬。子を乳まで優しく誘導する姿に感心しました。子馬には少しずつ新しい世界を楽しんでもらいたいと思います。

 本年のホームブレッドはあと8頭生まれる予定です。全頭の無事を祈り、楽しみに待っています。

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2022年1月12日 (水)

出産シーズン

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年もJRA日高育成牧場をよろしくお願い申し上げます。

 年が明け、生産地では出産シーズンが始まりました。JRA日高育成牧場もホームブレッド第1号の分娩予定日まで残り1ヶ月をきり、分娩準備が本格化してきたところです。馬房内の監視カメラを起動させ、妊娠後期の流産原因となる馬鼻肺炎対策としてアームカバーやタイベック防護服の着用、長靴等の消毒も徹底しています。

 無事に元気な子馬たちが生まれてくることを職員一同祈っています。

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アーツィハーツ号(デクラレーションオブウォー受胎)

2021年2月25日 (木)

今年も元気な子馬が生まれました!

 まだまだ冬の寒さが厳しい浦河ですが、日高育成牧場では今朝方、今年最初の子馬が生まれました。お母さんは一昨年にアメリカから日本にやってきたのですが、日本の寒さにも負けず無事に元気な初子を産んでくれました。分娩も順調そのもので、破水から分娩まで15分の安産、子馬が立ち上がるまでの時間も1時間のスピード出産でした。少し小柄な女の子ですが、片時もお母さんの傍から離れず、すでに甘えんぼの片鱗を見せています。順調に成長して立派な競走馬になるんだよ!

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