Plankton Staff Diary

プランクトンのスタッフ日記

マイノリティの目線

2011å¹´08月08æ—¥ | æ˜¯æ¾
個人的に好きな作家のひとりに堀江敏幸さんという方がいます。
志賀直哉の系譜に連なる研ぎすまされた日本語に、フランス文学研究家ならではの繊細な感性とロマンチシズムがきらりと光る、非常に美しい文章を書く方です。
彼の代表作に「おぱらばん」という随筆集があり、個人的にはこれこそ現代心理エッセイの最高峰、日本語の随筆かくあるべしと思わせる愛読書であります。

この「おぱらばん」は、堀江氏のフランス滞在中の体験を淡々と綴った作品。
普通、フランス滞在記などと言えばパリやプロヴァンスでの華やかな生活やパリジェンヌとの優雅な交流が書かれてしかるべきですが、この作品では堀江氏の「マイノリティ」としての立ち位置と目線が非常に明確に貫かれています。
パリの中心ではなく郊外の移民地区で、中国人や東欧系の人々と触れ合う日々を文学への憧憬を交えながら描くその感触は、とても美しく暖かく、そして力強いものです。

この10月にAsaとTeteという、フレンチ・アフリカンを代表するシンガーソングライター2人が来日します。
先日「おぱらばん」を読み返していて思ったのですが、その感触はどことなく2人の音楽表現が持つ感触に通じるものがあるような気がします。
AsaとTeteともにそのアイデンティティーには「移民」としての意識が少なからず介在しています。
彼らを見ていて、その感性の繊細さ、切ないまでの美しさ、高い芸術性、そして表現の力強さは、パリという人種のるつぼの中でマイノリティを意識した者に特有のものなのかもしれないな、と思ったり。


さて、毎日毎日暑い日が続きますが、暦の上では密かに立秋を迎えました。
間もなく訪れる秋の高い空と澄んだ空気の中、
読書の秋には堀江氏を、そして芸術の秋にはAsaとTeteをおすすめ致します。

BEAT CIRCUIT 2011 ~ASA & TETE 真実の熱い歌~

ASA単独公演

TETE単独公演

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