読者の方から
ITC Bodoni Seventy-Two について、こういう質問をいただきました。「(前略)あの独特な曲線は想定された pt 以上に大きく使うと、美しく映らなくなってしまうものでしょうか・・・?」
図版がないと説明が難しいので、記事にしちゃいます。
ITC Bodoni は、アメリカのサムナー・ストーン氏をはじめ数人の書体デザインチームがイタリアに行ってボドニの活字の原型(父型)を見て、ボドニのつくったオリジナル活字の微妙なニュアンスまでをデジタルで再現しようとしたファミリーです。詳しくは、『欧文書体2』134–139 ページのストーン氏のインタビューをご覧ください。
金属活字は、その大きさによってデザインが少しずつ違っているので、それに合わせて字形の違うファミリーになりました。
一般的な
Bodoni と比べてみてください。
ITC Bodoni のなかで、Seventy-Two は、72ポイント程度の大きいサイズでの使用を想定してつくられています。でも、200ポイントで使っても、それだけで問題が出てくるわけではありません。
ただ、Seventy-Two はさすがに本文サイズでの使用はオススメではありません。字間が狭めに設定してあるし、セリフも細くつくってあるので小サイズでは読みにくいからです。
本文には、同じ ITC Bodoni ファミリーの Twelve のほうが読みやすいはずです。さらに小さい Six のバリエーションは、キャプションなどに向いていると思います。
これは、ドイツのファッション雑誌で使われている ITC Bodoni Seventy-Two のイタリックです。このくらいの個性があった方が、ファッション雑誌としてはいいのかも。
でも、この微妙なニュアンスを、不揃いと見る人もいるでしょう。また、個人の好みとは別に、目的に合っているかどうか、ということもあると思います。ファッションの場合は違和感なくても、精密機械の製造会社や製薬会社のパンフレットだったら、微妙なニュアンスは無いほうがいいのかもしれませんね。
そういうのも、書体の選び方の重要なポイントです。いろいろ使い分けてみては。