第一部：夕焼けの帰り道夕焼けが空を茜色と紫色のグラデーションで染め上げる頃、小学四年生の彩花は、使い慣れた赤いランドセルを背負い、両手を軽く振りながら並木道を家路へと急いでいた。 木々の間から漏れる夕日が、アスファルトに長く影を落としている。 三年前のあの日、交通事故で最愛の母を失ってから、父の拓也と二人暮らし。 システムエンジニアとして忙しい日々を送る拓也は、仕事と家事を両立させながらも、できる限り彩花との時間を大切にしていた。 週末には近くの公園でキャッチボールをしたり、少し足を伸ばして話題の映画を観に行ったり。 父の大きくて温かい手に、彩花の小さな手がそっと握られると、彩花の心は温かい安らぎで満たされた。 けれど、平日は仕事で帰りが遅くなることもしばしば。 マンションのエントランスのオートロックを解除する音が遅い日は、彩花は少しだけ心細くなるのだった。 「ただいまー」 遅い時間に疲れ

第一章：胸躍る招待状山々に抱かれた小さな町、星降町。 その名の通り、夜空には無数の星が降り注ぎ、人々は日々の終わりに星を見上げるのを習慣としていた。 冬が訪れると、町は温かな光の装飾で彩られ、おとぎ話の世界のような幻想的な雰囲気に包まれる。 とりわけクリスマスシーズンは、家々の窓辺を飾る色とりどりのイルミネーションが、しんしんと降り積もった雪にきらきらと反射し、星空と地上の光が呼応して、町全体が宝石を散りばめた箱のように輝いていた。 12月に入り、町がクリスマスの準備で活気づき始めた頃、小学5年生の元気いっぱいの女の子、ひまりの家の郵便受けに、見慣れない可愛らしい封筒が滑り込んだ。 封筒の表面には、きらきらと輝く星形のシールが丁寧に貼られ、中には色とりどりの愛らしいイラストが散りばめられた、手作りの温かさが伝わる招待状が入っていた。 「星降町のクリスマスパズル大会へご招待！優勝者にはとって