第三章：映画の時間年が明けて最初の土曜日。 星見シネマスクエアの前で、陽太は約束の時間より10分早く到着していた。 休日の映画館前は人で溢れ、人気作品とあって、多くのファンが列を作っていた。 寒気が頬を撫でていく中、陽太は時折、通りの向こうに視線を向けた。 結菜の姿が見えたのは、約束の5分前だった。 薄いピンクのコートに白のマフラー、ベージュのブーツという出で立ちは、普段の制服姿とは違う柔らかな印象を与えた。 髪の毛が風で少し乱れている様子が、どこか愛らしい。 「お待たせしました」　結菜が軽く息を切らせて言う。 「私も今来たところです」と陽太は微笑んだ。 待ち合わせ場所で二人は、映画の原作について話し合いながら開場を待った。 寒さで頬を赤く染めながら、時折白い息を吐き出す。 周囲の喧騒も、二人にとっては心地よい空気に変わっていた。 「寒くないですか？」陽太が気遣うように尋ねる。 結菜は首を

第三章　ショッピングセンターと小さな誤解週末、陽菜は、友人とサクランポート・マリーナのショッピングセンターに来ていた。 海辺に面した開放的な空間は、買い物客で賑わっている。 「今年の福袋、すごい人だね…」 陽菜は、人混みの中、ため息をついた。 すると、目の前に、見覚えのある後ろ姿が見えた。健太だ。 （健太さん…？） 陽菜は、思わず、健太の名前を呼んでいた。 健太が振り返ると、少し驚いた顔をした後、穏やかな笑顔を見せた。 「陽菜さん…？こんなところで会うなんて、奇遇ですね」 「本当ですね…！買い物ですか？」 「ええ、ちょっと福袋を見に来たんですが…。すごい人で諦めようかと思っていました」 「あはは、私もです。人混み苦手なんです」 二人は、しばらく、並んで福袋を見て回った。 会話が弾み、自然と連絡先を交換することになった。 「あの…、よかったら…」 健太は、少し照れくさそうに、スマホの画面を陽