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白川静先生は,「字統」,「字訓」,「字通」の辞書3部作を世に問うた後,『字書を作る』(平凡社刊)... 白川静先生は,「字統」,「字訓」,「字通」の辞書3部作を世に問うた後,『字書を作る』(平凡社刊)を上梓した。この中からいくつかの箇所を引用して,このシリーズのまとめとしたい。いまの漢和辞典の問題点や字典のあり方について示唆に富むと考えるからである。文字を古代学的な立場から理解しようとする試みは,かつてなされたことがなかった。それは[説文]の字形学の権威があまりにも強く,新しい文字学の方法の導入を,容易に許さない状況にあったことも,その一因であろう。たとえば[段注]では[説文]を殆ど経典として扱っており,また章炳麟のように,音韻学に新しい発想をした人でも,甲骨文・金文はみな偽作,信ずべからずとするなど,新しい資料に拒絶反応を示している。しかし資料的には,甲骨文・金文をこそ信ずべきであり,[説文]の依拠した篆文は,古代文字が字形的に整理された最終の段階のもので,すでにその初形を失っているところ