時を告げる山寺の鐘の音が 小さな町に鳴り響く夕暮れ時 「あんず」「かりん」「市」の３人は 山頂から神社の境内を通り抜け 鳥居まで来ると、また明日会う約束をして それぞれの帰る場所へと向かった 「あんず」は、竹林の中にある風の道を通り ポプラ並木の通りへ出て、並木通りを左に曲がった 自転車に乗った男子学生が 顔を真っ赤にしながら、緩やかな上り坂を 立漕ぎ（たちこぎ）しているのが 眼下に見えた 坂道を登り切り、下り坂になると 学生はペダルを漕がずに 両下肢をハの字に開いて、気分よさそうに 重力だけで一気に坂を下った 途中で、小さな小石をタイヤが弾いた瞬間 鞄に下がられていた交通安全のお守が 糸が切れて落ちた 「あんず」は、落ちたお守りに気付くと それを拾い上げ、学生の後を追った 学生は、少し年季の入った 誰もいない真っ暗な家に帰宅した 玄関を開け、電気を灯し、 暖房を入れ手を洗うと さっとお米

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