字がとんでもなく汚くて、自分でも判読できなかった。例えばスケジュール帳に予定を書いても、あとから見たとき何と書いてあるのかわからなかった。誰かに「これ何て書いてあるんですか?」と聞くわけにもいかないしな。知るかよって話だしな。俺の字は、まるで字ではなかった。喩え話になってないけど、まるで字ではないもののようだった。そうとしか形容できないくらい汚かった。
…という話を延々と蕎麦屋で聞かされた。俺が昼休み中に入った蕎麦屋で、見知らぬ人から聞かされた。
「そろそろ昼休みも終わるので会社に戻るのでここら辺でおいとまするので…」と俺が韻を踏みながら言うと、その人は「あっ、この教材のおかげで今では信じられないくらい字が上手くなったんだよ!」と焦り気味に勧誘しだした。
蕎麦屋でも気が抜けない世の中。
田舎に行くと今でも字がいっぱいあるけど、限界集落化が進んでいて大概は汚いな。