2015-01-01から1年間の記事一覧
価値観が行動を規定することは社会科学でしばしば指摘されているが,本稿では伝統主義(traditionalism)が女性の就業/非就業に影響を与えているのかを分析している. Polavieja, J. G. 2015. "Capturing Culture: A New Method to Estimate Exogenous Cultura…
マルチレベルモデリングの有用性と限界が明確に述べてある論文.著者はData Analysis Using Regression and Multilevel/Hierarchical Modelsで有名なAndrew Gelman. Gelman, A. 2006. “Multilevel (Hierarchical) Modeling: What It Can and Cannot Do” TEC…
親がケアワーカーだと子もケアワーカーになりやすいのかを検証した論文. Charles, M., Ellis, C., & England, P. 2015. "Is There a Caring Class? Intergenerational Transmission of Care Work." Sociological Science 2: 527–547. 親の社会経済状況が子…
計量社会学のレクチャーで漸近理論の話が出てくることはあまりないが,これはまずいと思っている.漸近的性質については計量屋のフロンティアでいまもたくさん成果が出ているし,それらをフォローするのは難しいが,基本的なことは共有されるべきである.さ…
簡単なメモをしておく.アウトカムに対する年齢(age),時代(period),世代(cohort)の効果を識別するのは単純でない.なぜなら「世代=時代ー年齢」が成立しているからだ.これらを工夫して何とか識別しようとするのがAPCモデルであるが,これは社会学での呼…
最近Bruce Westernがよく使っているVariance Function Regression(VFR)を本人が解説した論文.国内学会の報告等でもVFRは最近みかける. Western, B., and Bloome, D. 2009. "VARIANCE FUNCTION REGRESSIONS FOR STUDYING INEQUALITY." Sociological Methodo…
制度変更等を利用したShock-Based IVはIVが満たすべき仮定のひとつである独立性(as-if random assignment to treatment)や除外制約(only through)を満たしていると考えられているため,多くの研究で利用されているが,先行研究のShock-Based IVは本当に仮定…
傾向スコアによるマッチングとウェイティングの推定量を比較した論文. Busso, M., DiNardo, J., & McCrary, J. (2014). "New Evidence on the Finite Sample Properties of Propensity Score Reweighting and Matching Estimators." Review of Economics an…
Regression Discontinuity Design(RDD)の外的妥当性を検討した論文. Hainmueller, J., Hall, A. and J. Snyder. 2015. "Assessing the External Validity of Election RD Estimates: An Investigation of the Incumbency Advantage." Journal of Politics 7…
社会学や心理学でしばしば用いられるマルチレベルモデリングであるが,経済学者のいる研究会で「それって標準誤差をクラスター化すれば良いのでは?」と言われた経験のある人は多いのではないだろうか.このセリフを言ったことも言われたこともあるのだが,…
社会科学で急速に増えている実験や自然実験を用いた分析のトレンドを激しく非難したDeaton(2010)やHeckman and Urzua(2009)に反論した論文.誘導系vs構造推定を含め,エコノメ界隈では皆が知っているこのやりとりだが,日本の社会学界隈ではあまり知られてい…
共変量が多い場合,傾向スコア法はいかに用いられるべきかを検討した論文.前回紹介したStuart(2010)でも示されているように,マッチング法といっても色々あり,傾向スコアを用いた因果推論の方法も色々ある.高次元の場合にはどの方法の組み合わせが望まし…
傾向スコアマッチングの歴史や方法について外観したもの. Stuart, E. A. (2010). "Matching Methods for Causal Inference: A Review and a Look Forward." Statistical Science 25(1): 1–21. マッチング法は経済学,社会学,政治学,疫学,薬学,医学など…
これまた積ん読だったモレッティ本を読了した.労働経済学の論文しか読んだことがないが,都市経済学でも著名な経済学者である. 年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学 作者: エンリコ・モレッティ,安田洋祐(解説),池村千秋 出版…
イギリスの社会学者ゴールドソープが因果関係について整理し,さらに社会学で因果関係の分析がいかになされるべきかを説いているエッセイ. Goldthorpe, J. H. (2001). “Causation, Statistics, and Sociology.” European Sociological Review, 17(1), 1–20.…
最近まわりで耳にする論文なので読んでみた. Xie, Yu. 2007. "Otis Dudley Duncan's Legacy: The Demographic Approach to Quantitative Reasoning in Social Science." Research in Social Stratification and Mobility, 25(2): 141-156. ダンカンといえば…
大卒学歴が賃金に与える因果効果について,異なる個人に異なる因果効果(heterogeneous causal effects)を想定し検証した論文. Brand, J. E., & Xie, Y. (2010). "Who benefits most from college? Evidence for negative selection in heterogeneous econom…
固定効果モデルと変量効果モデルについて平易に解説した本.Fixed Effects Regression Models (Quantitative Applications in the Social Sciences)作者: Paul D. Allison出版社/メーカー: SAGE Publications, Inc発売日: 2009/07/07メディア: ペーパーバッ…
実験学派のラスボス的存在アングリストとピシュケの新刊Mastering 'Metricsをやっと読んだ.本書の主眼,というか実験学派,というかlabor系の主眼が,いかに特定のtreatmentの因果効果を綺麗に識別するかであることを断っておく. Mastering 'Metrics: The …
言わずと知れたポール・ウィリスの著作である.かつて読んだ時には気付かなかったが,その第7章「文化と再生産の理論のために」では,制度に関する言及が多くあると教えてもらったのでここにメモしておく. ハマータウンの野郎ども―学校への反抗・労働への順…