巴・色・卩

巴と色とは似ていますが、字源的には無関係で、巴が取手の部分を示す象形文字であるのに対して、色の下部は人間が屈曲した姿を表します。したがって、どちらかと言えば卩(セツ)と近い。つまり、巴には二系統あり、巴や把は取手の方、色や邑は卩と近いのです。
卩を含んだ字の代表格は、音も同じ「節」でしょうが、他にも、印(左は爪の形)や即、御や卸、仰・迎・抑・昂に含まれている部分もそうです(「卯」や「卵」はこれ全体が象形文字なので違います。「卯」は「田」や「貝」の上に来ると「留」「貿」となりやや変形しますね)。「令」の下部もそう。ちなみに「命」は「口」+「令」です。「危」の右下部も「卩」の変形ですが、(ガケの上と下に屈曲した人がいる)、どうも「厄」は違うらしい。「厄」の原字は「戹」で、馬などをつなぐ「くびき」から生まれた象形文字のようです。「軛」や「扼」もそこから来ている。但し説文解字では、「戹」について、「戸」+「乙」で、「乙」が声符であるとしています(日本でも藤堂明保はこの説を採用している)。
「危」の下部と似ているのが「氾」「犯」「範」などのつくりです。こちらも、人間の屈曲した姿を表す点で同じだと思うのですが、いずれも音が「ハン」で「セツ」とは遠いので、別系統なのかもしれません。ひょっとしたら、「氾」は「汎」の変形で、他の「犯」「範(笵)」の音は「氾」から来ているのかもしれません。ちなみに「配」のつくりは「己」となっていますが、これも「氾」「犯」「範」の仲間で、「キ」の音を持つ「紀」や「記」とは別系統のようです。「妃」のつくりについては、「犯」の仲間か、それとも「巳」の仲間かで、説が分かれています。「圮」(ヒ・こわす)についても同様。