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大澤真幸『帝国的ナショナリズム』を読んだ。いつもながら鋭い論考が収められている。ただ疑問も持った。
現代的ナショナリズム(啓蒙された、反省的意識を有するナショナリズム)には、それが「作られた」ものだという指摘は効力がないという処方箋はよいとしても、現代的ナショナリズムと、それ以前のナショナリズムという二分法には疑問。かつてのナショナリズムも、知識人に関していえばそれ相応に反省的なものであったし、それを信じる民衆も、盲目的にしたがっていたとは思えない。それこそ、以前に触れたジジェクの、なぜ現代人は昔の人の信仰が素朴なものと思ってしまうのか、という反省をベースにすべきではないか。

帝国的ナショナリズム―日本とアメリカの変容