トール・ノーレットランダーシュ『気前の良い人類』

『ユーザー・イリュージョン』で知られるデンマークの科学ジャーナリスト、ノーレットランダーシュの新作(といっても原著の出版は2002年だが)。エモリー大学(ジョージア州アトランタ)で行われたゲーム理論の実験で、「協力」を選んだ場合に脳に、麻薬物質で得られるのと同様の満足感が得られたことから説き始め、寛大なふるまいが人間を進化させることを主張する。
 これが本当なら素晴らしいこととも思うが、いくつか疑問も残る。例えば終章で、生殖技術を否定しセックスで子供を作ることを主張することとは、論理的につながっているのだろうか。また、「憎悪」のような負の感情にも、それなりに存在理由はある(例えば、公正性を維持するなど)とする学説もあるが、それとは整合性は取れるのか、など。

気前の良い人類―「良い人」だけが生きのびることをめぐる科学