日本での感染拡大はおそらく武漢ほどではなく、個人が対策できる余地はまだある。

〇日本での感染拡大について

武漢からチャーター便で帰国した集団と、クルーズ船の集団では感染の状況が大きく違う。
チャーター便集団には顕著な感染拡大が認められず、自宅に帰れるようになったにも関わらず、クルーズ船集団では感染拡大が止まらず、第二の武漢とも言われる有様ともなっている。

どちらも各部屋に隔離されている集団なのにこの違い。
これには大きな意味があるように思う。

クルーズ船の空調は各客室を循環するものと伝えられており、この情報が正しければ船内ではエアロゾル感染(弱い空気感染)が起きており、これが感染を拡大させている要因と考えられる。
そしてこの情報は香港や武漢での情報とも整合する。

香港では同じマンションの、異なる階の、同じ部屋番号の住民で感染が拡がったとの情報がある。
階こそ違うが同じ位置関係にある部屋で感染が拡大したとすれば、糞便から生じたエアロゾルが下水管を通じで各階の同じ位置にある部屋に拡がり、感染を拡大させたものと考えられる。

同様の情報は武漢でもあり、糞便由来の感染拡大の指摘とも符合する。

これらを総合すれば、新型コロナはやはりエアロゾル感染力(弱い空気感染力)を持った感染力の強いウイルスと判断されるが、一方で日本にとっては安心材料も含む。

日本のマンションやアパートと言った集合住宅は衛生環境が整った作りをしており、下水管は共有でもトイレや洗面所といった水場には排水トラップがあるのが普通。
トラップ内には水が満たされているので、排水トラップが正しく機能していれば下水管を通じてウイルスが各階に侵入することは考えにくい。

もちろんこの考えが正しければだが、感染者の糞便から生じたエアロゾルが武漢での感染拡大の一因であったとすれば、日本ではその危険性は少なくなるので、武漢ほどの感染拡大は日本では起こらないことになるだろう。

もちろんその場合でも、クルーズ船が示すように糞便エアロゾル以外での感染可能性は健在なので、過度に安心することなく十分な注意は必要だ。
新型コロナは未発症でもエアロゾル感染力を持つ、強い感染力を持ったウイルスであることは忘れてはならない。
しかし排水衛生環境の整った日本では、武漢程の感染拡大は起こらないのではないかと思う。


〇個人ができる対策について

個人ができるウイルス対策についてはインフルエンザと同じと言われているが、厳密に言えば同じではない。
手洗い、うがい、マスク、十分な睡眠などと言えば確かにインフルエンザと同じなのだが、それは「手法」が同じなだけ。

「インフルエンザに備えて手洗い、うがいを」と頭では理解していても、毎年のこととなるとつい面倒で手抜きをしていた人は多いのではないだろうか。
事実私はそうだった。

今回は未知のウイルスに対することなので、これまでより危機感を持って手洗い等に励むことはできる。
つまり、対策の「手法」は同じでも、「頻度」は増やすことができる。

そして実際、ウイルス対策においてこの「頻度」の違いは小さくない意味を持つ。

ウイルス感染とは手などに付着したウイルスが、口や鼻を触ったときに体内に侵入することで感染が成立する。
手洗いを怠っていた場合なら、自分がウイルスの付いた手で机を触り、その机を別の人が触り、その手を口に持って行った時に感染が成立する。

この場合、自分が机を触る前に手を洗っていれば机にウイルスは着かないし、その後の感染拡大も起こらないことになる。
つまり手洗いの頻度を増やせば、それだけウイルスの伝播を遮断できることになる。

ごく単純な表現だが、手洗いの頻度を2倍に増やせば、手を媒介とした感染拡大は半分に減らせると言っていいだろう。
「どうせインフルと同じ」などと諦めず、「手法」は同じでも「頻度」は増やすことができる。
そしてこれがウイルス対策では確実な意味を持つ。

その場に石鹸が無ければ流水だけでもいい。多少なりともウイルスを少なくすることもできる。
多くの人がそのような積み重ねを行えば、ウイルスの伝播が抑制され、無用な患者を抑制することにも繋がるだろう。

新型コロナにはインフルエンザのような有効な薬が無く、現状で我々には衛生意識の高さしか新型コロナに立ち向かえる武器はない。
それだけに、個々人の衛生意識の高さが重要なカギを握ることになる。
衛生意識を高めて「頻度」をあげてウイルスに立ち向かう。
精神論のようだが、やった分だけウイルスを抑制できるのは、確率論的に確かだ。