各文化圏の神様が死んだり死ななかったりするのがフト気になったので

映画「インモータルズ」はギリシャ神話と言いながら絶対こいつら神話じゃないもの出してくるだろ、と思ったので行ってない。(「300」も純粋に歴史、伝承として見ると自分はイラッとする類だったので…)

そもそもタイトルが「不死」なのに神様死にまくるとかどないやねん。


とかいう話をしていてフト思ったのだが、神が不死の文化と、死にまくる文化ってのがあるよね?

日本の神様なんかは、たとえばイザナミが死んでウジ虫まみれになったりするように、普通に死ぬし肉体が朽ちるし、一回死んでしまうともう戻ってこられないのが基本。

エジプト神話だと、オシリスのように神様は殺せば死ぬんだが、太陽が毎日夕方に死んで朝には復活するというように、定期的に死と再生を繰り返す基本は不死の神もいたりする。

ギリシャ神話の神様は基本的に死なない。冥界に下る=死ぬことではない。


…という感じで分類してみたら面白いかなーと思ったので、以下ちょっとやってみた。
ちなみに主な観点は以下の3点。

・神は不死か
・神は老いるか
・神殺しが出来るのは同等の神に限られるのか



【日本】

・神は不死か →No。ふつーに死ぬ。
・神は老いるか →Yes。寿命ある ただし長い
・神殺し →微妙。神に近い人間でも殺せる 人間による神殺しも恐らく可能?

【ギリシャ】

・神は不死か →Yes。奴ら面白いほど死なない
・神は老いるか →No。食べ物のせいもあり基本的に大人になったらそのまま
・神殺し →死なないのでどうにも。人間は神に絶対逆らえない壁がある

【エジプト】

・神は不死か →No。ふつーに死ぬ。
・神は老いるか →Yes。ただし定期的に老いたり若返ったりする神もいる
・神殺し →神同士は殺しあえる。人間は神を直接は殺せない

【北欧】

・神は不死か →No。ふつーに死ぬ
・神は老いるか →Yes。ただしギリシャ同様食べ物依存で寿命止めてる
・神殺し →神同士ならOK キリスト教化されてくると人間は神を追放できるようになる

【マヤ】

・神は不死か →No。むしろ神自身がイケニエになってる
・神は老いるか →不明。だが見た目の年齢は調整できるようだ
・神殺し →半神による神殺しは存在する 純粋な人間には無理

【ケルト】
・神は不死か →No。だが死んでから動いたりするのが微妙
・神は老いるか →常若。
・神殺し →半神なら可能と思われるが登場人物が神か人間か扱いが微妙

【カナアン】
・神は不死か →No。だが死体からいろんなものが生まれたりするので完全死ではない?
・神は老いるか →Yes。神としての引退もある
・神殺し →人間に神は殺せない絶対の壁がある


こうしてみると、神様が死ぬ神話が珍しくないことが見えてくる。ギリシャの神様は死を受けいれろ。特にゼウス。おまいはいっぺん女に刺殺されるべき。
あと、「神が死ぬことによって冥界が誕生し、この世とあの世が別れる」というモチーフも意外と多い。


当たり前だが神としての権威が高いうちは人間には手を出せない、殺せないという扱い。
むしろ特殊なのは日本神話で、定期的に神を殺していたり、たとえば「米粒には七人の神様がおるんやでー」と言いながらその米を食ってる、みたいな「神を食う」信仰があったりする。日本でいう神様は「自然界に宿る何か」的な扱いが大きいのかも。

中南米の神様は、ダイナミック・スーサイド多すぎっすね(笑
なんなのあの死にっぷり。「太陽が欲しいなー」→「あ、じゃ俺が死んで太陽なるわ。」(ドシュッ)→「輝きが足りない…。仕方ない俺も死ぬか」(ザシュッ)→こうして世界には明るい太陽が出来ました、めでたしめでたし。

マ ジ キ チ 

まさに死の文化。そら現代メキシコ人がガイコツモチーフをやたら好むのも当然だわ。
神話って昔の話って言いながら、意外と現代人の精神構造に繋がってる話だと思います、うん。


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【2018/03/02追加分】

最近の研究をまとめてみたところ、イギリスやアイルランドの「ケルト」は歴史上に実在した古代の「ケルト人」とはほぼ無関係な、近代的な概念であるという結論になりました。なのでこの記事の「ケルト神話」は現在は過去の慣習でそう呼ばれているけれど実際はケルト人のものではないモノのことです。

「島のケルト」は「大陸のケルト」とは別モノだった。というかケルトじゃなかったという話
https://55096962.seesaa.net/article/201705article_21.html

※「ケルト神話」と呼ばれてしたものは実際はケルト人の神話ではなく「アイルランドやブリテン島の神話」
※ローマとの戦争に敗れてケルト人が島へ大量に移住したという証拠はない

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