wa4’s blog

リカンベントを自作して乗っています

自作リカンベントに乗ってみて

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Cruzbike社のサイトにある手順に従って練習。

①最初は跨って、足でペタペタと歩いて感覚を覚える。

②慣れてきたら、足で勢いをつけて両足を浮かせて滑走してみる。緩い坂があればそこで長く滑走する練習をする。この時点ではまだペダルまで足を上げない。

③滑走になれたら、ペダルまで足を上げてみる。まだこがない。

④いよいよ漕ぐ。

わかったこと

普通の自転車の間隔で踏み込むと盛大に舵を取られる。考えてみれば構造上、当たり前の話である。走り出してスピードが乗ってくれば大きな力で踏み込むことは無くなるので、それほど問題ではない。むしろこれまでの自転車で染みついた常識で、最初のひと漕ぎでスピードに乗せて不安定な低速域を早く脱しようという発想を捨てること。舵を取られない程度にゆるーく加速することを心がける。

Mark0.5でキャスター角を変えて乗り比べてみてわかったのが、キャスター角を寝かすと安定性が増すかというとそうではないこと。アップライトの自転車においてセルフステアが生じる理由の1つに重力効果(ステア軸の下側の重心がステア軸より前上方にあると、自転車を傾けると前輪が重力によって自然に旋回内側へ切れ込む)というものがある。Cruzbikeはステア軸下の重量が重く、前方にある。今回の構造でキャスター角を寝かすと重心が高くなり、重力効果が極端に強くなり、かえってコントロールしにくくなった。ドナーバイク、Mark0.5、Mark1の写真を見比べるとMark1のキャスター角がアップライト車より起きていることがわかる。

 

ネットでリカンベントのメリット・デメリットを読んでいたが、実際乗ってみるとその通りのこともあれば、さほどでもないこともあった。

一概にリカンベントと一括りにできるものでもなく、自作のブツの出来によるところもあるだろう。自分では元が24インチの自動車なのだから、まぁこんなもんだろうと思っている。リカンベントという自転車の形式は横へおいて考えると、24インチ3/8のホイールで18.8kgfという重量級の内装3段変速車なのだ。そう考えると上出来なのだろう。すくなくとも同じスペックのアップライトで80kmのサイクリングに出かけようとは思わないので、リカンベントという形式の利点は間違いなくあるだろうと思う。

良いところ

肩がこらない。アップライトで疲れてくると、下を向きがちになるが、それがない。股が痛くならない。盗まれる心配が少ない。(←練習しないと乗れないから。)

良くないところ、期待したほどでもないところ

当たり前だが、リュックが背負えない。もちろんアップライトでも長距離をリュックを背負って走るものではないが、近場で荷物が少ない場合にリュックが背負えないのは荷物の運搬という面では地味に面倒。

長時間座っていれば、やっぱり尻は痛くなる。これはシートの出来によるところもあるとは思うが、長時間乗っていると、普通に長時間椅子に座っているときと同じ程度には尻が痛くなる。とはいえアップライトの股の痛さの比ではないので、やはりリカンベントの長所と言って良いだろう。

尻と背中が蒸れる。長く乗っていると腰の裏の背骨が出ている当たりが痛くなる。これはシートバックの出来によるところが大だろう。

これも当たり前だが、立ち漕ぎができない。従って坂道に弱い。内装3段なので尚更である。これも製品Cruzbikeの多段変速では印象が異なるかもしれない。しかしながら、アップライトがシングルでも立ち漕ぎすればそれなりに坂を上れることを考えると、リカンベントのデメリットといえるだろう。

余談だが、アップライトで適宜立ち漕ぎを入れると股の痛みの緩和に効果的だが、リカンベントでは尻が蒸れても立ち漕ぎはできないので、信号待ちの度に積極的にシートから立ち上がるようにしている。

この辺りの姿勢にまつわるエトセトラについては、「Just ride」※に書いてあった「どんな自転車だろうが、どんなスポーツだろうが、長時間同じ姿勢で特定の筋肉ばかり使っていて、体に良いわけがない。1~2時間自転車を漕いだら10分や15分は自転車を降りてそこらを歩くなり休憩するなりしよう」(というような趣旨のこと)が改めて全くもって正しいと思った次第。

「空気抵抗が小さいので楽にスピードが出る」「シートバックで反力が取れるので力強く踏み込める」というリカンベント一般に言われる点についてはさほどでもないと思う。前者については、上述のとおり、そもそもが19kg近くある内装3段だということを考慮すると、ベースのスペックの低さと行って来いになっている可能性はある。後者についてはPedal Steer InterenceがあるCruzbikeにはそもそも該当しない。

これも当たり前なのだが、以外に語られることが少ないことがあって、アップライトに対して軽くなる要素は何もない。

 

※自転車についての書籍。自分が読んだのは赤い本だったけど新版が出ていた。ISBN-13:9784910511184

今回の自作に固有の改良すべき点

海まで往復で80kph乗ってみたら、膝が痛くなった(いわゆるお皿ところの軟骨が圧迫された感じ)ので、155mmの子供用クランクでは負荷が高くなり過ぎていかんと思い、165㎜の大人用クランクに交換した。交換後はそういうこともなく、快適に乗れている。

ライダーが乗車すると自然な位置に重心が来るのだが、自転車単体では猛烈にフロントヘビーである。この為、押し歩き中に段差に引っかかるといとも簡単にジャックナイフする。歩道橋とかのスロープの登り口で普通の間隔で前へハンドルを押すと引っかかる。斜め上に持ち上げる必要がある。

ジャックナイフと言えば、前輪がバンドブレーキのままだったので、慣れてきたころに油断して低速で電信柱に衝突しそうになってパニックブレーキをかけながら両足をついて立ち上がったら、ジャックナイフした自分の自転車に後ろから叩かれるようになって転倒するということが一度あった。(Mark2ではデュアルピボットブレーキに交換。)

人々の反応

乗る前から覚悟の上だが、とにかく目立つ。人々に奇異の目で見られる。面白かったのが、世の中の人々の反応には2種類あって、「やばい人が来た」という胡散臭いものをみるような視線と、「面白いの乗ってる人がいる!」という笑顔の反応。ここまでは想像の範疇だったが、発見だったのが、この2種類の反応と年齢・性別にはあまり関係がなさそうということである。年配の方の方が前者が多く、子供が後者が多いかというと、そうでもない。お年寄りの笑顔に会うこともあれば、小学生に警戒されることもある。

娘からは「学区内で乗らないで」と言われた。(とはいえ、出かける時と帰る時には学区内乗る(通る)けど。)

正確な記憶も記録もないが、撮影した写真のプロパティの撮影日によれば、2019年10月下旬までにMark1で200km超は試走した。この経験をもとにMark2の設計・製作へ取りかかった。

手直し~Mark1の完成

 最初のトラブルシュートは膝とハンドルの干渉。長いコラムを付けたが、まだ若干膝が当たる。構造的にヘッドチューブの取付け角度を変える余地があるので(一緒にキャスター角も変わってしまうが)その範囲内で膝が当たらない位置を探し出した。下の写真のように付けて思い切ってハンドル位置を高くすることも考えたが、これだと杉板に挟まれているパイプを軸にグラングランに回ってしまうことがわかり却下。

改良過程(却下した案)

ヘッドチューブ固定部のアップ写真が出たついでに構造の説明をしておくと、M8ボルト3本で締める構造も一応は考えて決めた。1本はこの位置に残した小さい三角穴を貫通させて、最悪の事態になっても走行中の空中分解だけは回避する。3本あると滑っていっても、どこか2か所が接触して滑り止まる。M8で然るべきトルクで締めれば滑らない算段だったのだが、締める相手が杉板なので、ずぶずぶと沈み込んで最前方の穴に至ってはクラックが入る始末。クラック対策として鉄の補強プレートをあてがった。上述の膝干渉対策で位置を決定した後、最後は杉板とフレームを組んだ状態で貫通穴(杉板-水色のパイプ-杉板)を開けてM5のネジを通して滑り止めとした。

他の手直し箇所としては、シートバック固定の強度、剛性が明らかに不足していたので、組み立て家具用の600mmの穴あきフラットバーを後ろ車軸との間にステーとして入れた。

Mark1(クランク交換前)

 上の写真の状態で、家の近所から徐々に距離を伸ばし、家から海まで往復で80km程度を走ったのがMark1での遠出の思い出。後にクランクを大人用の165㎜に交換し、Mark1としての最終形となった。

Mark1(最終形)

 上の写真の状態がMark1の最終状態。ホイールベースが965mm、ライダー込みの重心位置が前車軸から441㎜、ライダー抜きで前輪軸重13.4kg、後輪軸重5.4kg、総重量18.8kg、フレームの傾斜角26度となった。

シェイクダウン

そんなこんなで試作1号機【Mark1】のシェイクダウン。

シェイクダウン時のMark1(Mark0.5ともいう、、)

正確な日付は記憶していないが、画像ファイルのプロパティから撮影日を確認すると、ドナーバイクを撮影したのが2019年3月24日で、このMark0.5状態の撮影日が5月26日なので、約2か月かかっている。勤め人なので土日の余暇時間を使って製作。

構造としては、杉板L610xW90xt15 2枚でヘッドチューブ部分を挟んでM8ボルト3本で締めこんで固定。一応の構造設計として、この断面積で中央部分で折れることはないように計算して断面積を決めている。

シートとシートバック部分は不要になった家具を分解して生じた集成材で製作して木ねじで固定。クッション材としては銀マット(不用品を工作材料として在庫をもっていた)を切って両面テープで貼り重ね、合皮(これも別の工作の余り)でくるんでタッカー留め。

リアのフォークはU字ボルトで左右の杉板に2本ずつ計4本で固定。さらに心配だったので、余っていたクイルステムを挿入し、シート下でM10ボルトを本来ならハンドルバーが組み付く穴に貫通させて抜け留めとしている。M10ボルトの周りにゴムシートを巻き付けて隙間は埋めてある。

シート周り

後からシートバックの後方に荷台を作成。(これも家で余っていたヒノキ板を使用。)

自転車の部品としては、クランクはこの時点ではまだ子供用の155mmのクランクを流用。前輪ブレーキもバンドブレーキのまま。ボトムブラケットはカートリッジタイプに交換したかったのだが、右ワンが固着していて断念し、カップアンドコーンのまま。

辻褄合わせ

ボトムブラケットから後方に伸びる(元)シートチューブとヘッドチューブ上部の繋ぎ

ヘッドチューブ前方で元々ドナーバイクの後ろ三角だった部分を止めている構造は、ドナーバイクのシートのガワを剥いて芯の鉄板を露出させ、これに穴を空け、買い物カゴ用のブラケットとの間を曲げ板2枚とM5x2本,M6x2本のボルト&ナットで止めただけの簡単なもの。こんなやっつけ仕事のやわやわな構造で大丈夫かと思われそうだが、Pedal Steer Interferenceという現象(←後の記事で紹介したい)があり、大きな力は入れられないので、案外問題は起きていない。

キーパーツ(と自転車用の簡易パーキングブレーキ)

 自作をしていると時々遭遇する場面で、「これがなければこの作品は成立しなかった」というキーパーツ。今回のキーパーツは「折り畳み自転車のコラム」。

ハンドル周り

私が使ったものは本当に安物の折り畳み自転車についていそうなハンドル、ステム、コラムが溶接で一体となった代物。たまたま近所のリサイクルショップで安く売られていたものを購入。ググってみると、多少お金がかかるがコラム単品で新品が流通している模様。折り畳み機構部がギシギシ言うのが気に入らないが、安いのでまぁこんなもんだろうと諦めて使っている。

これがキーパーツだった事情を説明すると、ほぼ完成という段になって、オリジナルの児童車のクイルステムとハンドルを仮組みし、またがってポジションを確認すると、ハンドルに膝が干渉してまともにこげない。本家のCruzbikeの写真を見ていると割と手前にハンドルを配置しているように見えるが、今回の作り方ではフレーム設計の自由度が乏しいのでそういう配置にする余地はない。(あるいは手足の長い欧米人と胴長な私の体型差か?)

そういうわけで、膝との干渉を回避するために長いコラムが必要で、流通している既製品で長いコラムとなると折り畳み自転車のコラムとなる。否応なしに折り畳み機構(と異音)がついてくる。

 

上の写真で黒い紐状のものはショックコードとコードロックで作った「簡易パーキングブレーキ」。ショックコードの一端に小さい輪が作ってあり、コードロックをそこへ引っ掛けて紐全体を輪にし、任意の輪の大きさまで絞って使う。手の代わりにブレーキレバーを握りこませると駐車時に壁や柱に自転車をもたれかけさせる際に安定する。

もともとはアップライトの自転車で、ゴムの平バンドをちょうど良い長さで輪にして使っていたのだが、ネット上でこのショックコード&コードロックを輪行時のホイールをフレームに固定するバンドとして使うアイデアが紹介されているのを見つけ、真似をさせてもらった。ズボンの裾止めバンドの代わりにもなり、3役こなす優れもの。

塗装について

ドナーバイクのフレームはディスクグラインダーで派手にぶった切るし、フロントフォークにリアハブ軸を入れるには、エンドの開口をヤスリがけして開口幅を広げてやらないといけない(←フロント軸径<リア軸径なので)、そんなこんなで鉄の地肌が露出する。放っておけば錆びてみっともないことになるのは目に見えているので、自動車用のタッチアップペイントを買ってきて、ペタペタと塗った。

写真は移植した後ろ三角の切り口。径が大きいので、何を詰めてやろうか思案したが、ペットボトルのキャップがちょうど良いサイズだったので、バスコーク(シリコンシーラント)を塗りこんでキャップを嵌めた。

ヘッドバッジは”なっちゃん”

 

フロントフォークの拡幅

 

ネット上で情報を漁ると、古いクロモリロードバイクのリアエンド幅を長ねじとナットで拡幅した話が出てくる。また、先に書いた米国の自作サイトでも「力づくでフロントフォークのエンド幅を広げる」(具体的な手法については記載なし)とある。ドナーバイクのフロントフォークのエンド幅はママチャリで割と標準的な96mm。リアの内装3段のハブのOLDは130mm近くある。(作業時には実測したのだが、メモ書きを紛失した。)ネット上でよく見かけるロードバイクのリアエンドを広げる話の多くは片側2.5mm程度の話で、広げる量が違う。幸い、近所のリサイクルショップで所謂ルック車のフロントフォーク単品が500円で購入できたので、本番の加工前に試しにやってみた。

写真も何もなくて恐縮だが、やってみてわかったことが2つある。

1つはネジ面に油を塗布して作業しないとネジが焼き付いて上手く行かない。焼き付くと加えたトルクが有効に拡幅する方向の軸力に変換されなくなる。

2つめはナットとして通常のナットではなく、長さ50mmとかの高ナットを使用すること。通常のナットだけだと軸力にまけてM10の長ねじが座屈し始める。

リアハブ軸の段付き形状やチェーン引きを入れる都合やらを考慮すると、移植したリアエンドを内側に入れて外側からフロントフォークで挟むようにしたいのだが、そうすると移植したリアエンドの板厚分を更に広げる必要がある。実際にはさすがにそこまで広げることは断念し、左から、リアエンド-フロントエンド-内装3段ハブ本体-リアエンド-フロントエンドという様に左右非対称になることを承知で組めるように組んだ。

自作者には職人肌でクラフトマンシップを発揮して美しく仕上げるタイプと、適当にガシガシつくるタイプがいると思うが、自分は後者である。板厚分くらいずれていたって何とかなる。あんまり細かいことを気にしていたら、こんなものつくれないのだ。

フロントハブ周り

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