臨界量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/21 06:56 UTC 版)
臨界管理
同じ量の核分裂物質でも、その形状により臨界に達する場合と達しない場合がある。一般に核分裂物質の形状が細長かったり、薄い板状であれば、内部で発生する中性子の多くが外部へ飛び出してしまい、核分裂反応に寄与しなくなるため、臨界に達しなくなる。逆に物質の体積当たり最小の表面積となる球状の時、臨界量は最も少なくなる。
核分裂性物質を取り扱う施設(濃縮工場、再転換工場、再処理工場等)では、物質量の管理である質量管理のほか、物質の形を管理する形状管理を行って臨界を管理する。形状管理である。
安全審査指針によると、ウラン加工施設においては、臨界安全を担保する各機器(単一ユニットと呼ばれる)形状寸法、質量、容積、溶液濃度等に核的制限値と呼ばれる管理値を設け、設計および運転時に、この核的制限値を逸脱しないように管理を行うことで臨界事故の防止を行っている。この核的制限値の設定に当たっては、ウランの化学的組成、濃縮度、密度、溶液濃度、幾何学的形状、減速条件、評価手法の誤差等を考慮した裕度、評価手法の信頼性、二重偶発性(技術的に発生が想定されない事象が2つ同時に起こらない限り臨界にならない)ように設定する必要がある。また機器によっては中性子吸収材(ホウケイ酸ガラス小片を容器の中に入れる、ハフニウム製多孔板)等を使用する。
ユニット間の核燃料物質の移動に対しては、移動先の核的制限値を確認すること、運搬に使用する容器の健全性維持、使用する容器はなるべく寸法・形状管理がなされているものを使用することで担保する。
ユニット相互の間隔が近い場合には、各ユニットから発生する中性子による相互干渉によって、上記の単一ユニットに対する核的制限値を守っていても臨界事故が発生する可能性があるため、ユニット間の間隔の維持、中性子遮蔽材の使用によって臨界安全を担保する(これを複数ユニットの制限と呼ぶ)。
JCOの臨界事故では臨界管理を無視する方向で仕事の効率化が図られたのが直接の事故の原因となった。正規のマニュアルではウランの溶解は貯塔と呼ばれる装置で行うことになっていた。貯塔は形状管理されているため細長く質量管理により一回の容量が少ないため、大量の残作業を抱えていた作業員は貯塔ではなく、寸胴な円筒で容量の多い沈殿槽と呼ばれる別の装置を用いたのである。さらに不幸な事に沈殿槽は二重構造で、周囲に冷却水が通る構造であった。この冷却水が反射体となって外部に漏れた中性子を内部へ跳ね返し、中性子利用率をいっそう向上させたのである。この様に、周囲の中性子反射体となりうる物の有無も、臨界量を左右する重要な要素の一つである。
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