室韋
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 16:18 UTC 版)
習俗
衣食住
南室韋の衣服は契丹と同じであるが、北室韋のように狐と狢の毛皮や魚の皮を衣に加工して着る部族もある。男子は索髪し、女子は髪を束ねて髷を結い、膝を抱いて座る(体育座り)。
おもに豚や牛などの家畜と魚を食べる。南室韋では、豚と牛を飼っているが羊は飼っていない、穀物で麹醸酒を作って飲み、習俗は靺鞨と同じである。
低湿地で蚊や蚋が多く、夏は城で高床式の住居に住む。冬は水草を追って遊牧を行い、突厥の氊車のような蘧蒢を家屋とする。しかし、雪の多い北室韋の地域では冬を丘陵の半地下住居で過ごす。
産業
南室韋は、粟・麦・稗が豊富で、冬は牧畜を行い、貂皮がよく獲れる。鉄は無く高句麗から略奪している。
北室韋は、鹿を獲って肉を食べ革を衣にする、漁網で魚を獲り、貂を捕まえるのを生業としている。
言語
中国の史書によると、室韋の言語は庫莫奚・契丹・豆莫婁と同じであり[25]、後に萌古国(モンゴル)が台頭したことからモンゴル系であるとされている。
婚姻
西の北方遊牧民族のようなレビラト婚はなく、夫が死んだら再婚はしない[26]。
葬儀
父母が死ぬと屍は林樹の上(もしくは大棚の上)に置かれ、男女の衆は3年間喪に服す[27]。
部族長
室韋には統一的な君長がおらず、各々部族長を立てており、その部族長を「余莫弗瞞咄」・「乞引莫賀咄」・「莫賀咄(バガトル)」などといった。部族長が死んだら、その弟か息子が後を継ぐ。もし弟か息子がいなければ、豪傑を推薦して部族長に立てる。
参考資料
- 『魏書』(列伝第八十八)
- 『隋書』(列伝第四十九 北狄)
- 『北史』(列伝第八十二)
- 『旧唐書』(列伝第一百四十九下 北狄)
- 『新唐書』(列伝第一百四十四 北狄)
- 『新五代史』(四夷附録第三)
- 『遼史』(本紀第一 太祖上、本紀第二 太祖下、本紀第四、本紀第二十四 道宗四)
- 『金史』(本紀第二、列伝第三、列伝第九、列伝第五十九)
- 内田吟風、田村実造他『騎馬民族史1 正史北狄伝』(平凡社、1971年)
- 宮脇淳子『モンゴルの歴史 遊牧民の誕生からモンゴル国まで』(刀水書房、2002年、ISBN 4887082444)
関連項目
- ^ 『魏書』列伝第八十八
- ^ 右から左へ読む。
- ^ 『隋書』列伝第四十九 北狄「又西北数千里,至大室韋,徑路険阻,言語不通。」,『北史』列伝第八十二「又西北数千里,至大室韋,徑路険阻,言語不通。」
- ^ 『旧唐書』列伝第一百四十九下 北狄「次東又有塞曷支部落,此部落有良馬,人戸亦多」
- ^ 『新唐書』列伝第一百四十四 北狄「稍東有塞曷支部,最彊部也」
- ^ 『旧唐書』列伝第一百四十九下 北狄「烏羅護之東北二百餘里,那河之北有古烏丸之遺人,今亦自稱烏丸国。」
- ^ 『新唐書』列伝第一百四十四 北狄「其北有東室韋,蓋烏丸東南鄙餘人也。」
- ^ 匈奴と交雑した鮮卑で、段部や慕容部と言語が異なる。
- ^ 隋書北狄伝奚条「奚本曰庫莫奚,東部胡之種也。」契丹室韋条「契丹之先,与庫莫奚異種而同類。室韋,契丹之類也。其南者為契丹,在北者号室韋。」、北史東夷伝奚条「奚,本曰庫莫奚,其先東部胡宇文之別種也。」契丹条「契丹国,在庫莫奚東,与庫莫奚異種同類。」室韋条「蓋契丹之類,其南者為契丹,在北者号為失韋。」
- ^ 『新唐書』列伝「室韋,契丹別種,東胡之北辺,蓋丁零苗裔也。」
- ^ 『隋書』列伝第四十九 北狄「室韋,契丹之類也。」,『北史』列伝第八十二「蓋契丹之類」,『旧唐書』列伝第一百四十九下 北狄「室韋者,契丹之別類也。」,『新唐書』列伝第一百四十四 北狄「室韋,契丹別種,東胡之北辺,蓋丁零苗裔也。」
- ^ 『新唐書』列伝第一百四十四 北狄「契丹,本東胡種,其先為匈奴所破,保鮮卑山。」
- ^ 『新五代史』四夷附録第一「故又以為鮮卑之遺種。」
- ^ 『旧五代史』外国列伝一 契丹「契丹者,古匈奴之種也。」
- ^ 漢代に活躍した烏桓と同族と思われるが、これは烏桓が南下した時に、南下せず残った者たちの後裔と思われる。
- ^ 『新唐書』列伝第一百四十四
- ^ 『遼史』本紀第一
- ^ 『遼史』本紀第一
- ^ 『遼史』本紀第四
- ^ 『金史』列伝第九、列伝第五十九
- ^ 宮脇 2002,p40
- ^ 『新五代史』巻七十四 四夷付録第三「達靼 ,靺鞨之遺種,本在奚、契丹之東北,後為契丹所攻,而部族分散,或屬契丹,或屬渤海,別部散居陰山者,自號 達靼 。」
- ^ 宮脇淳子『モンゴルの歴史 遊牧民の誕生からモンゴル国まで』p41
- ^ 『遼史』本紀第二十四 道宗四
- ^ 『魏書』列伝第八十八、『北史』列伝第八十二
- ^ 『隋書』列伝第四十九 北狄「婦人不再嫁,以為死人之妻難以共居。」,『新唐書』列伝第一百四十四 北狄「夫死,不再嫁。」
- ^ 『魏書』列伝第八十八「父母死,男女衆哭三年,屍則置於林樹之上。」,『隋書』列伝第四十九 北狄「部落共為大棚,人死則置屍其上。居喪三年,年唯四哭。」,『北史』列伝第八十二「部落共為大棚,人死則置屍其上。居喪三年,年唯四哭。」,『新唐書』列伝第一百四十四 北狄「毎部共構大棚,死者置屍其上,喪期三年。」
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