転落と後継
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 06:18 UTC 版)
NLS、そして ARC の転落の原因として、そのプログラムの習熟が困難であったことが挙げられる。NLS は学習しやすさを設計のポイントとしておらず、プログラムモードを多用し、厳密な階層構造に依存し、ポイント・アンド・クリックといった簡単なインターフェイスを持たず、役に立つことをするには暗号のようなコードを覚える必要があった。キーボードの代替として Chord Typeset を使う場合、5ビットの二進数コードを覚える必要があった。さらに1969年、SRI にARPANETが接続され、分散コンピュータネットワークの時代となり、少人数向けのタイムシェアリングシステムは時代遅れとなりつつあった。実際、タイムシェアリングは急速に個人用のミニコンピュータ(さらにはパーソナルコンピュータ)やワークステーションに代替されていった。NLS を他のハードウェアに移植する作業も行われ、PDP-10 などへの移植に成功したものの、NLS を SRI 以外に広めようという動きは起きなかった。 エンゲルバートの「ブートストラッピング」活動の方向性に不満を感じた SRI の研究者らの多くはパロアルト研究所に移り、マウスの考え方をもたらした。1977年、SRI は NLS を Tymshare 社に売却し、NLS は Augment と名称が変更された。Tymshare 社はその後それをマクドネル・ダグラス社に1980年代初めに売却した。NDMA Inc. が販売した HyPerform というソフトウェアは NLS/Augment の後継品である。 「完全対話型」というパラダイムの一部は、他のシステムに継承された。例えば、Mozilla Firefox のアドオンである Hyperwords がある。Hyperwords はエンゲルバートのウェブドキュメンタリー Invisible Revolution に触発されて考案された。そのプロジェクトは、ウェブ上のリンクのない単語とも相互作用できることを目的としている。Hyperwords は単純な階層型メニューを通して機能する。エンゲルバートはこのプロジェクトの諮問委員を務めていた。 2005年から2008年にかけて、コンピュータ歴史博物館のボランティアチームがNLSの復元を試みた。
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