硬膜外腔とは? わかりやすく解説

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こうまくがい‐くう〔カウマクグワイ‐〕【硬膜外×腔】

読み方:こうまくがいくう

脊髄を覆う硬膜とその外側を囲む脊柱管の間にある空間また、頭蓋骨硬膜の間にある隙間硬膜上腔

[補説] 硬膜内層外層2層構造になっている脊髄では、硬膜外層骨膜として脊柱管内側をおおい、内層脊髄を袋状に包んでいる。狭義に、この内層を脊髄硬膜と呼ぶ。脊髄の硬膜外腔は、硬膜外層骨膜)と内層狭義脊髄硬膜)の間にある空間で、静脈張り巡らされ脂肪組織満たされている。一方、脳では、硬膜内層外層が、一部除いて密着している。脳の硬膜外腔は、その外側にあるわずかな間隙で、リンパ液脂肪組織がある。


硬膜外腔

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/11 06:34 UTC 版)

硬膜外腔
脊髄髄質と膜
概要
表記・識別
ラテン語 Spatium epidurale,
spatium extradurale,
cavum epidurale
MeSH D004824
グレイ解剖学 p.875
TA A14.1.01.112、A14.1.01.110
FMA 71228
解剖学用語

硬膜外腔(こうまくがいくう、英:Epidural space)は、解剖学上、硬膜椎骨(脊椎)の間の潜在的な空間である[1][2]

英語の"epidural"は、古代ギリシャ語に由来する。上を意味する"ἐπί"と硬膜を意味する"dura mater"である。ヒトの硬膜外腔には、リンパ管、脊髄神経根、疎性結合織英語版脂肪組織、小動脈硬膜静脈洞英語版、および椎骨静脈叢英語版のネットワークが含まれている[3]

硬膜外投与: epidural administration)とは脊髄周囲の硬膜外腔に薬剤を注入する投与経路である。この投与経路からは、硬膜外麻酔において、局所麻酔薬オピオイドが投与される[4]。他に、造影剤[5]などの診断薬、グルココルチコイドなどの薬剤を投与するためにも用いられる。硬膜外腔には、カテーテルを留置し、治療期間中はその場所に留置し続けることも可能である[6]。意図的な硬膜外投与の技術は、1921年にスペインの軍医フィデル・パヘス英語版[7]によって初めて報告された[8]

頭蓋硬膜外腔

頭蓋骨では、硬膜の骨膜層が頭蓋骨の内面に付着し、髄膜層がくも膜の上に重なっている。それらの間に硬膜外腔がある。硬膜の2層は数カ所で分離し、髄膜層は脳実質の奥深くまで突き出し、脳組織を区画する線維性隔壁を形成している。硬膜外腔は、硬膜外静脈洞が存在するのに十分な広さがある[2][9][10]

4つの線維性隔壁がある:[9]

  1. 大脳鎌、大脳左半球と右半球を分ける。上矢状静脈洞と下矢状静脈洞が含まれている。
  2. 小脳テント英語版小脳から大脳を分離し、横静脈洞、直静脈洞、および上錐体洞を含む。
  3. 鞍隔膜、下垂体窩を上側から囲み、下垂体を保護している。前洞と後洞を含む。
  4. 小脳鎌英語版、左右の小脳半球を分離し、後頭洞を含む。

病的な状態では、血液などの液体がこの空間を満たすことがある。たとえば、断裂した髄膜動脈(多くの場合中硬膜動脈)または硬膜静脈洞(まれに)がこの潜在的な空間に出血し、硬膜外血腫を引き起こす可能性がある[10]

硬膜外麻酔の模式図
治療法
赤: くも膜下腔

ピンク: 硬膜外腔
薄黄色: 脊髄

硬膜外針(ツーイ針)は硬膜外腔に到達している。
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脊髄硬膜外腔

脊柱管において、骨膜層は、体によって形成される脊柱管の内面に付着する。髄膜層は、くも膜脊髄の上にある[2]。椎骨と硬膜鞘の間には脊髄硬膜外腔がある。頭蓋硬膜外腔とは異なり、脊髄硬膜外腔には脂肪組織、内椎骨静脈叢、および脊髄神経根が含まれる[1]

硬膜外腔は頸部で最も小さく、1~2mmである。第2~第3腰椎で5~6mmまで拡大する。その後、腰椎下部および仙骨部まで徐々に拡大する[11]。ただし、第1仙椎レベルで2mmまで、腰部中央部以降でサイズが減少するという説もある[12]硬膜外麻酔はこの腔に局所麻酔薬を注入することにより、行われる。麻酔科の文献やカルテに単に硬膜外腔と記載されていれば、ほぼ、この脊髄硬膜外腔である。

脚注

  1. ^ a b Waxman, Stephen G.『Clinical neuroanatomy』(26th)McGraw-Hill Medical、New York、2010年。ISBN 9780071603997OCLC 435703701 
  2. ^ a b c Blumenfeld, Hal (2010). Neuroanatomy through clinical cases (2nd ed.). Sunderland, Mass.: Sinauer Associates. ISBN 9780878930586. OCLC 473478856 
  3. ^ Richardson, Jonathan; Groen, Gerbrand J. (2005-06-01). “Applied epidural anatomy” (英語). Continuing Education in Anaesthesia, Critical Care & Pain 5 (3): 98–100. doi:10.1093/bjaceaccp/mki026. ISSN 1743-1816. https://academic.oup.com/bjaed/article/5/3/98/278715. 
  4. ^ 森田 2022, p. 340.
  5. ^ 森田 2022, p. 345.
  6. ^ 森田 2022, p. 339.
  7. ^ 硬膜外麻酔を発見したスペイン人医師、フィデル・パヘス | スペイン語を学ぶなら、スペイン語教室ADELANTE大阪・神戸でスペイン語を学ぶなら、スペイン語教室 ADELANTE”. スペイン語教室ADELANTE (2021年11月27日). 2024年8月11日閲覧。
  8. ^ Pagés, F (1921). “Anestesia metamérica” (スペイン語). Revista de Sanidad Militar 11: 351–4. 
  9. ^ a b Patestas, Maria; Gartner, Leslie P. (2013). A Textbook of Neuroanatomy (1st ed.). New York, NY: John Wiley & Sons. ISBN 9781118687741. OCLC 899175403 
  10. ^ a b Collins, Dawn、Goodfellow, John、Silva, Dulanka、Dardis, Ronan、Nagaraja, Sanjoy『Neurology & neurosurgery』JP Medical Publishers、London、2016年。 ISBN 9781907816741OCLC 945569379 
  11. ^ Mathis, JM; Golovac, S (2010). Image Guided Spine Interventions. Springer Science & Business Media. p. 14. ISBN 9781441903518. https://books.google.com/books?id=3DJVAElCmQYC 5 March 2022閲覧。 
  12. ^ “Fluoroscopic guided lumbar interlaminar epidural injections: a prospective evaluation of epidurography contrast patterns and anatomical review of the epidural space”. Pain Physician 7 (1): 77–80. (January 2004). doi:10.36076/ppj.2004/7/77. PMID 16868616. 

参考文献

  • 森田, 潔 著、川真田 樹人 , 齋藤 繁 , 佐和 貞治 , 廣田 和美 , 溝渕 知司 編(日本語)『臨床麻酔科学書』中山書店、東京、2022年。 ISBN 9784521749495 

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