治水への利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/29 14:02 UTC 版)
利水ダムにおける治水への責務の詳細は日本のダム#利水ダムの分類を参照 新冠ダムは発電専用ダムであり、多目的ダムや治水ダムのように治水、すなわち洪水調節目的を持たない。だが新冠ダムでは洪水時にも治水効果を上げることが可能になるような運用が実施されている。 水力発電に適する河川は反面「暴れ川」として流域に水害を及ぼしやすい。実際新冠川は1955年と1956年の二年連続で大水害をひき起こし、新冠町は一面水没という被害を受けている。これは沙流川や鵡川、静内川でも同様であり、流域町村は電源開発の促進もさることながら治水対策の充実、すなわち多目的ダムの建設を要望していた。当時は新河川法の改訂前で一級河川・二級河川の分類が無く、北海道開発局が治水を主に担当していた。被災自治体の要望もあって、開発局は胆振・日高の主要河川にも多目的ダムを建設する計画を構想した。 この折、鵡川には勇払郡占冠村に高さ103メートル・総貯水容量が3億5,000万立方メートルと朱鞠内湖を大幅に凌駕する「赤岩ダム計画」を発表、新冠川でも新冠ダムを多目的ダムとして建設する構想が存在していた。だが赤岩ダム計画が占冠村全村の官民一体となる反対運動で1961年(昭和36年)白紙撤回、新冠ダムの多目的化も資金面や1964年(昭和39年)の河川法改正で新冠川が二級河川となったことで開発局の管轄から離れたことなどもあり、多目的ダム構想も立ち消えとなった。しかし河川法改正、1965年の河川法施行令、さらに1966年(昭和41年)の建設省河川局長通達によって新冠ダムのような治水目的を持たないダムでも、治水に対する責任が明確化されたこともあって、ダム建設において貯水容量の一部を治水に活用する方針を採った。 具体的には新冠湖の総貯水容量から水力発電に使う有効貯水容量を差し引いた残りの容量を、治水容量として活用する。その容量は2,500万立方メートルであるが、これは1998年(平成10年)に完成した多目的ダム・二風谷ダム(沙流川)に匹敵する大容量である。これを利用し豪雨の際には出来る限り洪水を貯水し、下流への影響を抑制する。こうして新冠ダムは水力発電のみならず、目的外ではあるが治水にも利用され新冠町の安全に貢献している。なお新冠ダムと並ぶ本計画のもう一つの柱・高見ダムは河川管理者である北海道が事業に相乗りし、国庫の補助を受けた補助多目的ダムとして計画が変更されている。
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