沈める滝
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『沈める滝』(しずめるたき)は、三島由紀夫の長編小説。原題は旧漢字の『沈める瀧』である。愛を信じないダム設計技師が建設調査の冬ごもりの間、或る不感症の人妻と会わないことで人工恋愛を合成しようとする物語。ダム建設を背景にした一組の男女の恋愛心理の変化を軸に、芸術と愛情の関連を描いた作品である[1]。人間を圧倒する超絶的な自然環境の中で推移する男の心理、やがてダムによって沈む小さな滝に象徴される女、人間主義的な同僚との絡み合いを通じ、冷徹な物質の世界と感情に包まれた人間の世界との対比や、社会的効用主義に先んずる技術者(芸術家)の純粋情熱が暗喩的に描かれ、自然と技術(芸術)との相互関係が考察されている[1][2][3]。
- ^ a b c d e f 「創作ノート『沈める滝』」(5巻 2001, pp. 731)。肉筆の写真はアルバム 1983, p. 38に掲載
- ^ a b c d 「第三章 問題性の高い作家」(佐藤 2006, pp. 73–109)
- ^ a b c 「II 自己改造をめざして――第二の人生」(村松 1990, pp. 233–260)
- ^ 井上隆史「作品目録――昭和30年」(42巻 2005, pp. 406–410)
- ^ a b 山中剛史「著書目録――目次」(42巻 2005, pp. 540–561)
- ^ 「自己改造の試み――重い文体と鴎外への傾倒」(文學界 1956年8月)。『亀は兎に追ひつくか』(村山書店、1956年)、29巻 2003, pp. 241–247に所収
- ^ a b c 「十八歳と三十四歳の肖像画」(群像 1959年5月号)。31巻 2003, pp. 216–227に所収
- ^ 田中美代子「解題」(5巻 2001)
- ^ 「『沈める滝』について」(中央公論 1954年12月号)。28巻 2003, pp. 397–398に所収
- ^ 「わたり初め」(岩下 2008, pp. 44–53)
- ^ 「三章 贅澤な彼女――梨園と花街とに室咲きの」(岩下 2016, pp. 59–100)
- ^ 「願掛」(岩下 2008, pp. 148–155)
- ^ 「七章 水槽の熱帯魚――『施餓鬼舟』、『橋づくし』、『女方』、『鹿鳴館』の頃」(岩下 2016, pp. 205–238)
- ^ 田中美代子「解題――山の魂」(19巻 2002, p. 795)
- ^ 栗栖眞人「沈める瀧」(事典 2000, pp. 160–162)
- ^ a b c 大岡昇平・寺田透・三島由紀夫「創作合評」(群像 1955年5月号)。旧事典 1976, p. 183、事典 2000, p. 161
- ^ 臼井吉見「文芸時評」(東京新聞 1955年3月25日号)。旧事典 1976, p. 183、事典 2000, p. 161
- ^ 臼井吉見「文芸時評」(毎日新聞 1955年3月29日号)。旧事典 1976, p. 183
- ^ 石原慎太郎「文明批評の強靭な鑿――三島由紀夫氏の文体」(文學界 1956年8月号)。旧事典 1976, p. 183、事典 2000, p. 161
- ^ a b 田中澄江「『沈める瀧』の男と女」(中央公論 1955年6月号)。村松 1990, pp. 245–247
- ^ a b c d e f 「第六章 第二幕への前奏曲――『真夏の死』と『沈める滝』――」(野口 1968, pp. 147–164)
- ^ 油野良子「沈める滝」(旧事典 1976, pp. 183–184)
- ^ a b c d e f 村松剛「解説」(滝・文庫 2004, pp. 288–296)
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