天王星の暗斑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 01:34 UTC 版)
海王星で多く見られる暗斑は、最初の暗斑のような構造が撮影された2006年まで天王星では観測されなかった。この年、ハッブル宇宙望遠鏡とケック天文台からの観測で、冬期の北半球に小さな暗斑(Uranus Dark Spot,UDS)が観測された。それは緯度約28±1度の位置に存在し、緯度方向に2度(1,300km)、経度方向に5度(2,700km)の大きさであった。UDSは、惑星に対して順行方向に、同緯度の雲の速度よりも20m/s程度も速い平均43.1±0.1m/sの速度で移動していた。UDSの緯度はほぼ一定であった。この構造の大きさや見かけは変化し、しばしば、ほぼ同じ速度で移動する他の明るく白い雲(Bright Companion,BC)を伴っていた。 UDSの方がかなり小さいものの、UDSとBCの振舞いや見かけは、海王星の大暗斑と似ている。この類似性は、これらが同じ起源であることを示唆する。大暗斑は、海王星の大気の高気圧の渦であると考えられているのに対し、海王星のBCは、その場で形成されたメタンの雲であると考えられている。UDSは、いくつかの波長で大暗斑と異なった見え方をするが、同じような起源であると考えられている。大暗斑は0.47μmの波長で最もはっきり見えるが、UDSはこの波長では見えない。一方、UDSは1.6μmの波長で最もはっきり見えるが、大暗斑はこの波長では見えない。この事実は、この2つの天王星型惑星の暗斑は、いくらか異なる気圧の地域に位置していることを示す(天王星のUDSは、恐らく約4バールの位置にある)。UDSの暗い色は、下にある硫化水素または硫化水素アンモニウムの雲が薄くなったせいだと考えられている。 長年暗かった方の半球に暗斑が出現するという事実は、分点近くで天王星は天候が活発化する時期に入ることを示している。
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