化学的変化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 03:40 UTC 版)
アルコール発酵全体を通してみると、反応は以下の化学式で示すように、1分子のグルコースからエタノールと二酸化炭素が2分子ずつできる。この反応は大きく三つの段階に分けることが出来る。 C 6 H 12 O 6 ⟶ 2 C 2 H 5 OH + 2 CO 2 {\displaystyle {\ce {C6H12O6 -> 2C2H5OH\ + 2CO2}}} 第一段階で、1分子のグルコースが解糖系の複数の酵素によって2分子のピルビン酸に分解される。この反応は、同時に、正味2分子のADPをATPに、2分子のNAD+をNADHに変換する。この段階は、動物や植物の解糖経路と同じで、酸素呼吸の経路とも共通している。 C 6 H 12 O 6 + 2 ADP + 2 H 3 PO 4 + 2 NAD + ⟶ 2 CH 3 COCOOH + 2 ATP + 2 NADH + 2 H 2 O + 2 H + {\displaystyle {\ce {C6H12O6\ + 2ADP\ + 2H3PO4\ + 2NAD^+ -> 2CH3COCOOH\ + 2ATP\ + 2NADH\ + 2H2O\ + 2H^+}}} 第二段階からがアルコール発酵特有の反応になる。1分子のピルビン酸から1分子の二酸化炭素が取り除かれ、アセトアルデヒドがつくられる。この反応は、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.1)が触媒する。 CH 3 COCOOH ⟶ CH 3 CHO + CO 2 {\displaystyle {\ce {CH3COCOOH -> CH3CHO\ + CO2}}} その後、アセトアルデヒドは還元型NADHの電子によって速やかに還元されエタノールとなる。この反応は、アルコール脱水素酵素(EC 1.1.1.1)が触媒する。 CH 3 CHO + NADH + H + ⟶ C 2 H 5 OH + NAD + {\displaystyle {\ce {CH3CHO\ + NADH\ + H^+ -> C2H5OH\ + NAD^+}}} 多くの酵母では、アルコール発酵は嫌気条件でのみ進行し、酸素があるとピルビン酸を完全に分解して水と二酸化炭素に変える(酸素呼吸)。しかし、よく使われる出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)や分裂酵母(S. pombe)は酸素があっても発酵を好むため、適当な培養条件を選ぶと好気条件でもエタノールを生産する。 出芽酵母による発酵の結果、糖度計による計測糖度の値の約半分の値のアルコールが生成される。つまり、糖度20度ならば、アルコール度数は約10度になると言うことである。
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