動詞の人称標示
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 03:49 UTC 版)
主語や目的語などの動詞の項の人称が動詞に標示されることは、世界のいろいろな言語にみられるありふれた現象である。アンナ・シェヴィエルスカが世界380の言語についておこなった調査によると、人称がまったく動詞に標示されない言語は84あり、残りの296の言語には何らかの人称標示が見られた。人称が動詞にまったく標示されない言語は西アフリカ、コーカサス、東アジア、東南アジアで特に顕著である。 項を二つとる他動詞では動作主と対象の両方の人称を標示する言語が最も多く、シェヴィエルスカの調査では193あった。これは全体のおよそ3分の2にあたり、ユーラシア大陸以外ではこのような標示が優勢である。 次いで動作主(A)を表す項の人称だけを標示する言語が73あった。ユーラシア大陸の言語ではこれがもっとも普通であり、インド・ヨーロッパ語族、ウラル語族、ドラヴィダ語族、テュルク諸語などがこの標示をとることが多いが、北アメリカやオーストラリアには見られないものである。これに対して動作の対象(P)を表す項の人称だけを標示するものは少なく、24言語だった。 また、動作主か対象かに関わらず、人称の階層の高い方だけが標示される言語が6あった。人称の階層は一人称が最も高く、第三人称が最も低い(1>2>3)。このような言語では、動作者の人称が対象の人称よりも低い場合、逆行形(INV)という特別な動詞のかたちが使われる。 動詞の人称標示は接辞によることが多いが、接語による言語も存在する。例えば、ティンリン語では動詞句の最初に人称を表す接語が付く。また東南テペファン語では、文の最初の句の次に人称の接語が付く。 また、語幹の変化による言語もある。
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