ネーター環とは? わかりやすく解説

ネーター環

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/28 05:23 UTC 版)

数学においてネーター環(ネーターかん、: Noetherian ring)は、イデアル昇鎖条件などのある種の有限性を持つの一種。エミー・ネーターによって提唱された。すべてのイデアルは有限生成という条件から単項イデアル整域の一般化と見ることもできる。

定義

環に対して、以下の 3 条件はZFC公理系のもとで同値である。

  1. (昇鎖条件):左イデアルの任意の昇鎖列は有限回で停止する。
  2. (極大条件):左イデアルの空でない任意の族は包含関係に関する極大元を持つ。
  3. (有限型条件):任意の左イデアルは有限生成

これらの条件のどれか一つ、従って全部を満たす環は左ネーター的であるあるいは左ネーター環であるという。「左イデアル」を全て「右イデアル」に置き換えても同様のことが成り立ち、右ネーター環が定義される。左ネーター的かつ右ネーター的である環は両側ネーター環と呼ぶ(単にネーター環と呼ぶこともある)が、考えている環が可換環であれば左ネーター環あるいは右ネーター環は自然に両側ネーター環となる。ゆえにネーター的可換環は単にネーター環と呼ぶ(左右の区別が明確であって誤解の虞のない場合には、左ネーター的あるいは右ネーター的であることをネーター的と省略して呼ぶこともあるので、ネーター環という用語が必ずしも可換ネーター環を意味するものというわけではない)。

可換環がネーターであるためには、任意の素イデアルが有限生成であることが十分である[1]

諸概念

ネーター環の定義において包含関係の双対をとった、降鎖条件、極小条件を満たす環をアルティン環と呼ぶ。アルティン環は一般にネーター環となり、組成列を持つ。

ネーター環の定義において、左または右からの積を加群への左または右作用に読み替え、環のイデアルを環上の部分加群と読み替えることによりネーター加群の概念を得る。左ネーター環とは自然に自身の上の左加群とみてネーター加群であるものに他ならない。

性質

  • ネーター環の剰余環はネーター環である。あるいは同じことだが、ネーター環の準同型像はネーター環である。
  • ネーター環の部分環はネーター環とは限らない。

R を関係 yx = y2 = 0 をもった元 xy で生成される Z-代数とすると、これは左ネーター環だが右ネーター環でない。証明。

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ネーター環

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/28 18:55 UTC 版)

可換環」の記事における「ネーター環」の解説

詳細は「ネーター環」を参照 環 R がネーター的(この概念発明したエミー・ネーター因む)であるとは、任意のイデアルの昇鎖 0 ⊆ I0 ⊆ I1 ⊆ … ⊆ In ⊆ In + 1 ⊆ … が安定、すなわちある番号 n 以降一定となることをいう。これは R の任意のイデアル有限生成であると言っても同じであるし、R 上有限生成加群任意の部分加群がまた有限生成になると言っても同じである。同様に、環がアルティン的であるとは、任意のイデアルの降鎖 R ⊇ I0 ⊇ I1 ⊇ … ⊇ In ⊇ In + 1 ⊇ … がどこかで安定となることを言う。上記二つ条件対称的なものに見えるにもかかわらず、ネーター環のほうがアルティン環よりも大い一般の環となる。例え有理整数環 Z はすべてのイデアルが単項生成ゆえにネーターだが、安定しない無限降鎖として例えば Z ⊋ 2Z ⊋ 4Z ⊋ 8Z ⊋ … が取れるからアルティンではない。実はホプキンス・レヴィツキの定理により任意のアルティン環ネーターになる。 環がネーター的であるというのは極めて重要な有限性条件であり、この条件代数幾何学頻繁に生じ多く操作のもとで保たれる例えば、R がネーター環ならば、その上多項式環 R[X1, X2, …, Xn] もそう(ヒルベルトの基底定理、独: Hilbertscher Basissatz、英: Hilbert's basis theorem)であり、また任意の局所化 S−1R や剰余環 R/I もそうである。

※この「ネーター環」の解説は、「可換環」の解説の一部です。
「ネーター環」を含む「可換環」の記事については、「可換環」の概要を参照ください。

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