今年の落語界では女性の活躍が目立った。けん引したのは、林家つる子。3月に三遊亭わん丈とともに先輩を追い越しての抜てきで真打ちに昇進したが、女性の抜てき昇進は初めてだった。鈴本演芸場の昇進披露興行は10日間連続満員の人気で、その実績から、7月上席の鈴本でもトリを務めた。昇進から3カ月と10日でのトリは落語協会では最速という。

2年前に真打ちになった蝶花楼桃花は、7月の池袋演芸場で31日間連続の独演会「桃花三十一夜」を行った。夜の部終了後の午後9時からの開催で、31日連続のネタおろしを含めて毎日異なる演目を披露するというチャレンジングな会を見事に成功させた。

桃花やつる子の先輩である柳亭こみちが、古典落語に登場する人物を男性から女性に変えて新たに作り上げた「こみち噺」の数は30を超えている。今年も古典の女性版ともいえる「こみち噺」を女性落語家だけでなく、柳家三三ら男性落語家も挑む「この落語、主役を女に変えてみた~こみち噺スペシャル」を開催した。また、12月上席の鈴本でもトリで「厩火事」「寝床」などのこみち噺を披露した。

若い世代では春風亭一花、昨年二つ目になったばかりの鈴々舎美馬がNHK新人落語大賞の決勝に進出した。東西の若手130人が参加し、予選を勝ち抜いた6人に残った。惜しくも大賞は逃したものの、爪痕はしっかりと残していた。

30年ほど前に、三遊亭歌る多と古今亭菊千代が真打ちに昇進した時は「女真打」として男性の「真打」とは扱いが異なったものだったが、2002年に男女ともに同じ扱いになった。今では女性落語家は東西で60人近くいる。先日も寄席に行ったら、つる子の高座が一番盛り上がっていた。女性落語家は、落語界には不可欠の存在となっている。【林尚之】