「変えるぐらいだったら辞める」新潟・松橋力蔵監督が貫いた美学/取材ノート9

J1復帰2年目のアルビレックス新潟が今冬、ルヴァン杯で準優勝しました。

1999年(平11)のJリーグ参入から25年目で初のファイナル進出。

120分間の激闘の末、PK戦で敗れ初タイトルは逃しましたが、松橋力蔵監督(56)は、選手たちとつくり上げたパスでつながり合う「新潟のフットボール」で6万2517人のファンを魅了しました。

サッカー

名古屋対新潟 後半、終了間際PKでゴールを決める新潟小見(撮影・垰建太)

名古屋対新潟 後半、終了間際PKでゴールを決める新潟小見(撮影・垰建太)

「ここからひっくり返すんだ」

松橋監督の言葉に、選手たちは奮い立った。名古屋グランパスとのルヴァン杯決勝。0-2のハーフタイム、松橋監督は言った。

「これで舞台は整った。ここからひっくり返すんだ」。

チームは後半に猛攻を仕掛け、FW谷口、MF小見のゴールで試合を振り出しに戻した。延長前半に勝ち越されても再び小見が執念の同点ゴール。PK戦で屈し初タイトルは持ち越しとなったものの、元新潟コーチで、日本代表の森保監督が「ルヴァン杯史上最高のゲームだった」と絶賛するほど、中身の濃い内容だった。

選手、スタッフから親しみを込めて「リキさん」と呼ばれた松橋監督は「監督がつくり上げて浸透させたスタイル」との言われ方を嫌い「選手たちとつくりあげたスタイルです」と必ず言い直した。

公式戦に同行せず、クラブハウスに残るメンバーの練習も映像でチェックする。ルヴァン杯では特殊なポジションであるGKをのぞき、フィールドプレーヤーは2人の特別指定選手を含め全選手を起用した。

サンクスフェスタでスタンドのファンを見つめる新潟の松橋監督

サンクスフェスタでスタンドのファンを見つめる新潟の松橋監督

「ここまでだろう」と自ら限界を作らない

全員が戦力―。

そうした言動がチームの士気を高める。さらにビジネス書、登山家や五輪競技者の手記などを参考にした表現力豊かな言い回しで心を揺さぶった。

元陸上選手で、五輪に3度出場した為末大氏の著書「限界の正体」の言葉を引用。

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