やはり、面白い。佐藤輝明である。この日、契約更改に臨み、来季への抱負を語った。その中で将来の大リーグ挑戦の意向も明かし、虎党をドキドキさせたかもしれないが、それは虎番記者の記事で読んでいただくとして、面白いなと思ったのはラッキーゾーンの話である。交渉の席でその復活をお願いしたという。

「言わないと始まらないんでね。言っただけです。もちろん真面目に。(本塁打は)もっと増えるでしょ。自費でも付けさせてもらえるなら」などと直訴したようだ。言うまでもない…と書きかけて、若い人は知らないかもなので念のため書くと甲子園のラッキーゾーンは1947年(昭22)から1991年(平3)まで存在した。フェンスの前に柵を設け、本塁打が出やすくしたものだ。

前回の阪神日本一だった85年当時はこれがあった。そう考えると昨年の日本一は結構、立派かもしれないが、とにかく佐藤輝が言うように打者、特に左打者にとっては大きく違うはず。看板選手の直訴で復活あるか、オフの話題か、と思ったがわずか数時間後にそれはなくなる。

「いまが甲子園のあるべき姿かなと思っている。打者からしたら、そう言うかもしれんけど。今のままで行かせていただきます」。球団本部長・嶌村聡はそう話し、佐藤輝の願いを“一蹴”した。「前向きに考えてるんじゃないですか」と話していた佐藤輝にとれば「えっ? そうなん?」と言う結果かもしれない。

個人的な考えを言わせてもらえば、これに関しては、まあ、球団の方が受け入れやすいのかな、とは思う。まず、その手のお願いは佐藤輝以外からは皆無なよう。さらに投手、打者それぞれにそれぞれの希望があるだろうし、それこそ1人の意見で左右されては困るというところか。

あえて提案させてもらえればこういうのはどうだろう。来季、ガンガン打って、阪神を優勝にも導き、その契約更改の席で佐藤輝がこう宣言するのだ。「もしもラッキーゾーンを付けてくれるのなら将来においても大リーグには行かせてくれとは言いません!」。

もちろん、そんな宣言が意味を持つかどうかは分からない。それでも球団側の態度も、ひょっとして、少しは軟化するかもしれない。いずれにせよ球場の広さなど意に介さない、豪快な本塁打を放つ打撃スタイルを来季も佐藤輝には期待するのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

契約更改を終え会見し時折笑顔を見せる佐藤輝(撮影・加藤哉)
契約更改を終え会見し時折笑顔を見せる佐藤輝(撮影・加藤哉)