【シトウレイの街角スタイル研究所】「2024年冬編」アメカジに「原点回帰」 女性性解放から正反対へ
シトウレイです、こんにちは! 今回は2025年春夏のパリコレクションの会場周辺で見えてきた傾向をお話します。ファッションの流れが180度変わり、「アメカジ」がおしゃれモード女子の間でトレンドになったんです!
ここ数年。ファッションは「女性性」を解放するべく、おなかをチラ見せ、背中パッカーン、肩出し、脚出し…等々、肌の露出は進化していました。そしてちょうど1年前の24年春夏。「ショーツのファッション化」という事件が起きました。女性性の解放を最終地点までやり尽くした焼け野原の後に訪れた、アメカジトレンドの爆誕!
原因は幾つかあります。まずは「女性性から離れてみる」というムーブメント。色気とか女らしさとかいわゆる「女性っぽさ」から一度離れよう、ただ抜け感とかニュアンスのような雰囲気のあるテイストはやり尽くしたから、いっそ正反対の「メンズっぽく、かつ土臭いもの=アメカジ」にいってみよう、と。
もう一つは「原点回帰」。ここ数年よく話題に上るクワイエットラグジュアリー(装飾的ではなく、シンプルで質の高いものを着ることこそが贅沢)というトレンドの背景には、原点回帰の動きがあります。服としてあるべき姿の機能性および機能美、衣服として必要な要素のみに絞った「質実剛健な服」に光が当たったと言えます。
メンズ服の四大要素といえば「ワーク、ミリタリー、スポーツ、テーラード」ですが、その中で一番質実剛健のテイストが強く、土臭い「ワーク」のアイテムが注目され始めた。「土臭い」は今シーズン大きなポイントになりそうです。
また、トレンドセッター「ミュウミュウ」の存在も。その影響力は昨今勢いを増していて、このブランドの提案が流行することが多いのですが、アメカジっぽいアイテムを前シーズンに提案していたんです。
スポーツと他要素をミックスしたスタイルへの飽き、という理由も。スポーツ×モード、スポーツ×ガーリーなどが近年トレンドでしたが、ようやく飽きがきた。そして四大要素の中の「ワーク×〇〇」に方向性が移ったとも言えます。こんなふうにトレンドが生まれるには、いろいろな要素が絡み合っているんです。
「ファッションは時代の深層心理を映し出す」とよく言われますが、今シーズン改めてそう感じました。ファッションは表面的なものだと思われがちですが、時代や人々の深層心理と照らし合わせながら捉えると、割と奥深いものだと気づいてもらえるのではないかな、と。それでは今日はこの辺で。また次回お会いしましょう!(ストリートスタイルフォトグラファー)
★2024年秋編 泥くさくて濃いつながり 手売りだけのブランド
【シトウレイ】石川県生まれ。早稲田大卒。雑誌で写真家として活動を始め、日本を代表するストリートスタイルフォトグラファーとして国内外で高い評価を得る。テレビやラジオ、講演など幅広く活動するほか、ユーチューブ「シトウレイチャンネル」で最新のファッション事情をリポートしている。