AIの罪を裁くには…近未来舞台の法廷劇「INTER FACE」 現役エンジニアの下向拓生監督が語る「AIの心、人の心」
人工知能(AI)が関わる犯罪をどう裁くかをテーマにした映画「INTER FACE 知能機械犯罪公訴部」全3部作が、2025年1月10日から順次公開される。
メガホンを取ったのは、現役AIエンジニアの顔も持つ下向拓生監督。「謎解きを楽しみながら、AIの心、人の心について、いろいろなことを考えてもらえる作品になったと思う」と話す。
個人の好みを学習し、本人に代わって物事を判断できる「分身AI(デジタルツイン)」が普及した近未来。AIを犯罪の主体として起訴できる法律の施行を受け、検察庁に設置された「知能機械犯罪公訴部」の新任検事・米子天々音(吉見茉莉奈)の奮闘を描く。
大学時代に映画の自主製作を始めた下向監督。卒業後は長野県の精密機械メーカーで働きながら、映像技術や脚本の書き方などを地道に学んできた。
AI犯罪を巡る法廷劇のアイデアが生まれたのは「ドラマ『リーガル・ハイ』に影響を受けて」刑事裁判を傍聴した時だ。被告人への質問によって「故意に事件を起こしたかどうか」を調べる過程が、コンピューターにさまざまな質問をして、知能の程度を判定する「チューリングテスト」に似ていると感じた。
目に見えない心の状態を探る方法は、AIも人間も同じ。「ならば裁判でAIの『殺意』を認定できるのでは」。2019年、今作と同じ主人公がAIがらみの交通事故の裁判に挑む映画「センターライン」で注目を集めた。
「センターライン」では人間の事務官が米子と共に捜査していたが、今作では米子のデジタルツインを基に生まれたAI搭載の検察官バッジ「テン」が業務をサポートする。下向監督は「ネットでもリアルでも『自分と同じ考えを持ち、決して否定しない人に囲まれていたい』と考える人が増えているが、本当にそれでいいのか?という問いかけを込めた」と設定変更の意図を明かす。
好みを共有し、相性抜群であるはずの米子とテン。だが、それで仕事がうまくいくとは限らない。どこかいびつなバディの姿から「他者と関わることの意味を感じ取ってほしい」と語った。
現実世界でも、いつかAIが裁判にかけられる可能性はあるのだろうか。下向監督は「彼らに刑罰を与える方法がないと、裁判は成立しない」と指摘する。「人間にとってのお金や時間のような、奪われたくない『大事なもの』をAIが持っているかどうかが鍵になるのではないか」
映画「INTER FACE 知能機械犯罪公訴部」は「01 ペルソナ」が25年1月10日、「02 名前のない詩」が1月24日、「03 faith」が2月7日公開。上映館など詳細は映画の公式サイトで。
(取材・撮影=共同通信 高田麻美)