「スラマッ・パギ(おはようございます)!6月4日、インドネシア付近の上空35,348kmから朝8時をお伝えします。」

タイトル
「みちびき」のTwitterサイトから。

 「みちびきさん」が毎日2回、自分の現在地をTwitterで知らせるつぶやきは、インターネットの人気コンテンツの一つだ。Twitterのフォロワーは3万3000人を超える。

 みちびきは、2010年9月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた準天頂衛星(quazi-zenith satellite、QZS)の初号機。同じ年に小惑星から帰還した探査衛星「はやぶさ」以来続く宇宙ブームを支える擬人化キャラクターの一つになった。

 このみちびきに代表される測位システムを巡る国内の取り組みが本格化している。「日本版GPS」として期待を集めるシステムである。高精度測位を可能にする準天頂衛星を用いることから「準天頂衛星システム(QZS system、QZSS)」と呼ばれる。

 このシステムが実用化のフェーズに移れば、スマートフォンでの地図サービスやカーナビゲーションのような位置情報を用いる身近なサービスに加え、防災や農業、土木といった産業分野でも従来に比べて高精度の測位を利用しやすくなる。

なぜ測位を高精度にできるのか

 準天頂衛星は、赤道上にある静止軌道を斜めに傾けた「準天頂軌道」を周回する人工衛星のことである。アジア・太平洋の広い地域をカバーするこの軌道には、特定地域のほぼ天頂に、衛星が1日のうち数時間とどまる特徴がある。このため、高い建物や山などの障害物に衛星から送信する電波を遮られにくい。

 現在用いられているGPS衛星は、地上から見ると天頂から30~50°傾いた位置に存在するためうまく電波を受信できないことが少なくない。利用できる衛星数が少なかったり、高層ビルによる反射波(マルチパス)の影響を受けたりすることが、測位誤差が大きくなる一つの要因になっている。

 ほぼ天頂に見える衛星があれば、高層ビルの多い都会や、山に囲まれた山間部などで良好に測位できる地域を格段に広げやすくなる。これが準天頂衛星に期待が集まる理由の一つだ。