東北縦貫線建設と品川駅構内の工事(2011年1~4月取材まとめ)


神田付近で続く東北縦貫線の高架橋建設(2011年3月6日撮影)

2008年に着工した東京~上野間の「東北縦貫線」ですが、2011年に入ってから再度工事の状況を取材してまいりました。今回はこの東北縦貫線の工事と、関連する品川駅構内(田町車両センター)の配線変更工事について記事にしたいと思います。なお、この記事の内容には東日本大震災発生前に取材した内容も含まれています。このため、震災の影響により工事の状況に一部相違が生じている箇所もあると思われます。ご了承ください。

▼関連記事
東北縦貫線建設工事(2010年8月14日取材)(2010年10月23日作成)
東北縦貫線工事(2009~2010年取材まとめ)(2010年3月15日作成)

■東北縦貫線工事の状況(2011年3月6日取材)

東北縦貫線の位置
東北縦貫線の位置

東北縦貫線は2000(平成12)年に発表された運輸政策審議会(現在の都市交通審議会)第18号答申で「2015(平成27)年までに建設するべき路線」として位置づけられました。東北縦貫線が建設される東京~上野間を走る山手線・京浜東北線では上野駅で常磐・宇都宮・高崎線から、東京駅で東海道線からそれぞれ大量の乗客の流入があるため、これまで激しい混雑が発生しており、その混雑率は長年にわたり国内最高の数字を誇っていました。(例として2006(平成18)年の上野~御徒町間の混雑率は216%。)その後、つくばエクスプレス線の整備などの効果により2009(平成21)年には混雑率国内最高の座を総武緩行線錦糸町~両国間に譲り渡したものの、依然として混雑率は200%を超えており、混雑緩和が急務となっています。
東北縦貫線はこの山手線・京浜東北線に並行する形で東京~上野間に建設されます。このうち、秋葉原~上野間については上野止まりの常磐・宇都宮・高崎線の折り返し線があることから、その一部を東北縦貫線に転用することになっています。また、東京~秋葉原間では東北新幹線の上部に高架橋を継ぎ足して東北縦貫線を通す計画となっています。東北新幹線が通っている敷地にはかつて東京駅と上野駅を結ぶ「回送線」という線路があり、東北新幹線の高架橋は将来の「回送線」の復活を視野に、継ぎ足し可能な構造で建設されており、完成から二十数年の時を経てその構造が真価を発揮することとなります。
当初、この東北縦貫線の完成は2009(平成21)年の予定となっていましたが、東北新幹線との二重高架となる神田付近で沿線住民の反対運動が起きたことから、着工が2008(平成20)年まで遅れることとなりました。そのため、完成予定は2013(平成25)年に延期されています。

神田駅のホームから東京駅方面を見る。2010年8月14日撮影 2011年3月6日に撮影した同じ地点。左と比べ、桁が前進してきている。
左:神田駅のホームから東京駅方面を見る。2010年8月14日撮影
右:2011年3月6日に撮影した同じ地点。左と比べ、桁が前進してきている。
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2008年に着工した東北縦貫線の工事は、まず新設線の敷地に存在する支障物の撤去から始まり、2010(平成22)年初頭からはいよいよ神田駅付近の東北新幹線上空に高架橋を継ぎ足す工事が開始されました。高架橋の継ぎ足しは一度に行うことは不可能であるため全体を260の部品に分けて組み立てを行っています。また、既存の橋脚の一部は部材の継ぎ足しを行うと耐震基準を満たさなくなることが判明したため、該当する橋脚は中空だった内部に鉄筋コンクリートを充填する補強工事が行われました。工事は深夜、新幹線の終電後に行われており作業用の重機や資材は全て東京駅南側にある作業基地から新幹線の線路上を通じて搬入されています。

神田駅のホーム脇で続く橋脚の工事 反対側のホームから建設中の橋脚を見る。
左:神田駅のホーム脇で続く橋脚の工事。
右:反対側のホームから建設中の橋脚を見る。2011年3月6日撮影
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工事開始から1年以上が経過し、2011年3月取材時点では神田駅ホーム脇まで橋脚が建ち上がっています。また、以前はボルトが仮締めだった既設橋脚と新設部材の継ぎ目はほとんどの箇所でボルトの締め付けが完了し、一部は上から塗装が行われています。

秋葉原駅の南側に出現した重層高架へのアプローチ部。 斜めに持ち上げられた佐久間通りの架道橋。
左:秋葉原駅の南側に出現した重層高架へのアプローチ部。
右:斜めに持ち上げられた佐久間通りの架道橋。2011年3月6日撮影
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昨年取材時点では新設高架橋の基礎工事が続いていた秋葉原駅側の重層高架へのアプローチ部分は今回高架橋が完成していました。秋葉原駅のホーム端からは急こう配で東北新幹線の上空へ立ち上がるコンクリート製の高架橋が確認できます。また、秋葉原駅のホーム脇にある佐久間通りの架道橋は東京駅側に向けて斜めに持ち上げられた状態で置かれています。その傾斜は左の重層高架のアプローチ部分へ通じる角度のように見えることから、このまま固定して縦貫線の構造物として流用するものと思われます。

御徒町駅付近で行われている線路の改築工事。 同じ地点で上野駅方向を見る。
左:御徒町駅付近で行われている線路の改築工事。
右:同じ地点で上野駅方向を見る。2011年3月6日撮影
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一方、既存の引き上げ線の高架橋をそのまま利用する秋葉原~上野間については引き上げ線の機能を維持したまま工事を進めています。秋葉原駅付近に6本あった留置線は2本が休止となっており、この留置線と上野駅を接続する通路線も3本のうち2本が休止となっています。また、休止している線路のうち1本は一旦軌道がすべて撤去され、跡地には鋼材を敷き詰めたうえで新たな軌道を敷設する工事が進められています。この線路は縦貫線完成後、秋葉原駅付近の留置線と接続する単線の通路線として利用されるものですが、なぜこのような特殊な構造になったのかは今のところ不明となっています。

▼参考
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転) - JR東日本(2002年3月27日発表)
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について - JR東日本(PDF)(2008年3月26日発表)
August 2010:特集「新幹線直上に架けるJR東北縦貫線」| KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社
JR山手線上野-御徒町間が混雑率ワースト2位に-ワースト1位は総武線 - 上野経済新聞

■品川駅・田町車両センターの配線変更(2011年1月9日・4月6日取材)

品川駅の北側に広がる田町車両センター

東北縦貫線の新設によるもう1つの効果として、車両運用の効率化があります。現在、東海道線と宇都宮・高崎線は山手線の西側を通る湘南新宿ラインで結ばれていますが、東海道線の品川駅付近宇都宮・高崎線の上野駅(正確には尾久駅)付近にそれぞれ存在する車両基地は経由しないルートであるため、両系統で車種を統一したにもかかわらず別々の車両基地を持たざるを得ない現状となっています。いずれの車両基地も都心の一等地に存在しており、経済や街づくりの面におけるポテンシャルは極めて高いことから、東北縦貫線の開業後は、二十万平方メートルの面積を誇る品川駅側の車両基地(田町車両センター)を上野駅の車両基地(尾久車両センター)に統合する形で大幅に縮小し、跡地を再開発する計画となっています。
このことはJR東日本が発表しているプレスリリースの他、ここ最近東京都から発表された資料にも直接的ではないものの記載されています。具体的には車両基地跡地を含む品川地区全体を再開発対象としていること、海側に存在する水辺(運河)と調和や建物同士の回遊性を確保した街づくり、さらに近年問題となっている東京都心のヒートアイランド現象の抑制のため、車両基地跡地については東京湾から都心への風通しを重視して超高層ビルの建設を禁止するといった再開発の案が示されており、プロジェクトの通称は「東京サウスゲート計画」とされています。
また、JR東日本からまだ公式な発表は無いものの、車両基地跡地の再開発にあたっては事業用地内を走る山手線・京浜東北線への新駅設置も検討されています。

拡幅工事中の臨時ホーム9・10番線。 引き続き工事中の9・10番線ホーム。11・12番線ホームとの間に鉄骨が渡され屋根が拡幅された。
左:拡幅工事中の臨時ホーム9・10番線。2011年1月9日撮影
右:引き続き工事中の9・10番線ホーム。11・12番線ホームとの間に鉄骨が渡され屋根が拡幅された。2011年4月6日撮影
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品川車両基地跡地の再開発に向けた準備は2009(平成21)年頃から既に開始されています。手始めとして遊休化していた旧東京機関区の詰所や機関庫などが解体・更地化され、昨年からはいよいよ品川駅構内についても不要な線路の撤去や移設などが開始されています。
このうち、使用頻度が低かった品川駅の臨時ホーム10番線の線路は2010年初めに撤去され、接続していた田町車両センターの留置線も車止めが設置されて行き止まり式となりました。その後、跡地ではホームの大幅な拡幅と新しい線路を建設する工事が行われており、9・10番線ホームの東京方はこれまでの2倍以上の幅となっています。(このため、橋上駅舎に取り付く階段も拡幅している。)新しい線路は東海道線の下り線にぴったり沿う形で敷設されており、一部にはポイントも挟まっていることから、将来的にさらに脇に線路を増設することになる模様です。

東海道線下り11・12番線ホームから田町車両センターを見る。手前では新しい線路を敷設中。 横浜方面へ延長工事中の東海道線下り11・12番線ホーム。
左:東海道線下り11・12番線ホームから田町車両センターを見る。手前では新しい線路を敷設中。2011年1月9日撮影
右:横浜方面へ延長工事中の東海道線下り11・12番線ホーム。2011年4月6日撮影
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さらに、東海道線下り11・12番線ホームについても横浜方にホームを延長する工事が開始されています。これは11・12番線ホームが他のホームに比べて東京寄りにずれて設置されているため、これを他のホームと揃えることにより、より多くの土地を再開発に回せるように考慮したものと考えられます。

この品川駅の配線変更・再開発については現在のところ具体的な公式発表はされておらず、詳細が不明な点が多々あります。JR東日本などから公式発表がされ次第、追って情報をお伝えしたいと思います。

▼参考
品川周辺地域都市・居住環境整備基本計画 - 東京都都市整備局(PDF)
(仮称) 品川駅・田町駅周辺 まちづくりガイドライン(案) - 東京都都市整備局(PDF)
東京都品川周辺の街づくり、JR東の再開発案件に追い風 | ビジネスニュース | Reuters(2007年9月11日)

(つづく)
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