横浜駅横須賀線ホーム拡幅工事(2010年12月~2011年6月取材まとめ)
公開日:2011年06月23日02:04
2006年頃から工事が続いている横浜駅の横須賀線ホーム拡幅工事ですが、今年に入り新たな変化がありましたので再度取材してまいりました。今回は昨年12月から今年6月の半年間に取材した内容をまとめてお伝えいたします。
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■横浜駅横須賀線ホーム拡幅の概要
横須賀線ホームの拡幅計画(再掲)
横浜駅では2004(平成16)年にみなとみらい線が新規に開通し、東急東横線との直通運転が開始されました。これに伴い、それまで地上を走っていた東急東横線の線路が地下に移設され、横須賀線ホーム9・10番線に隣接していた高架橋が不要となりました。一方、横須賀線ホームは昭和50年代に貨物線に強引に追加したという歴史的経緯から幅が最大で8mと全体的に狭く、かつホームが東京寄りに偏って設置されていたため混雑する傾向にありました。みなとみらい線開通と同時期に開始された湘南新宿ラインの運転開始は、この混雑にさらに拍車をかけることとなったため、JR東日本では東急東横線の高架橋跡地を利用して横須賀線ホームの拡幅を行うこととなり、東横線の高架橋撤去と並行してその工事が続けられてきました。工事の内容は
●ホームの幅を平均7.2m→12.3m、最大7.8m→15.3mに拡幅する。
●ホームを大船寄りに30m延伸し、上下線で列車の停止位置を統一する。
●不要となるホームの東京寄り70mを撤去する。
●混雑緩和のため階段を1箇所、エスカレータを2箇所新設する。
●既設のエスカレータ1箇所を移設し階段を拡幅する。
というようにホームの拡幅にとどまらない、充実したメニューとなっています。拡幅部分のホームは2009年初めより本格的に構築が始まり、2010年4月末に上り10番線の線路が拡幅ホームの外側に移設され、旧上り線上に仮設の床面を新設することで暫定的にホームの拡幅が完了しました。この際、上り10番線の列車の停車位置が大船寄りに3両分程度移動したため、東京寄りの新田間川上に張り出す形で設置されていたホームが使用停止となりました。
▼参考
停車場改良あれこれ「横浜駅」 - 日本鉄道施設協会誌 2010年2月号 2~5ページ
横浜駅における横須賀線ホーム拡幅に伴う施工計画について - 第35回土木学会関東支部技術研究発表会
→以前、土木学会のWebページでPDFが公開されていましたが、現在は会員専用となっています。
■2010年12月~2011年6月の状況
床のタイル貼り付けが完了したホーム中央部。2010年12月23日撮影
拡幅ホームの暫定供用開始後は仮設の床面の下にある旧上り線の線路の撤去工事が進められ、撤去が完了した部分から鋼材でできた仮設の床がコンクリートパネルの床に交換されました。また、床面はアスファルトだった既設部分も含めて全てタイル張りに貼り替えられており、拡幅部分で採用された膜屋根による採光ともあいまって旧ホーム部分よりも明るく、開放的な雰囲気を感じることができるようになっています。
左:中央北改札口へ通じる通路との間に新設された階段。
右:その階段を下りたところ。内装が一部新しくなっている。2枚とも2010年12月23日撮影
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既設の階段・エスカレータのうち、中央北改札口に通じる1箇所はこれまでエスカレータしかなく混雑が著しかったことから旧上り線跡地を利用して階段が新設されました。12月時点ではまだ内装が一踏み完成でしたが、現在は完全な形となっています。
左:中央南改札口へ通じる通路との間に新設されたエスカレータ。階段とは独立している。
中:そのエスカレータと通路が接続する部分。以上2枚は2010年12月23日撮影。
右:同じ場所の2010年5月16日の状況。LEDの発車表が一部移設されているのがわかる。
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中央南改札口の通路でも旧上り線跡地を利用してエスカレータが新設されました。このエスカレータは階段とは完全に独立した位置に1機単独で設置されており、ホーム下のコンコースとは短い通路で接続しています。このエスカレータは当初平日の始発から9時の間までが下り運転、それ以外の時間が上り運転で使用されていましたが、現在は東日本大震災発生に伴う電力不足により、ほとんどの時間帯で運転を見合わせています。
延長準備中の下り9番線ホームを東海道線上り7・8番線ホームから見る。2010年12月23日撮影
左:エスカレータ工事中の南改札への通路。2010年12月23日撮影
右:同じ箇所のエスカレータ供用開始後。奥の下り列車も停止位置が変わった。2011年6月19日撮影
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ホームの大船寄りの端にある南改札口へ通じる通路はこれまで階段しかなく、みなとみらい線開業以後は混雑が激しくなっていました。ホームの拡幅完了後はまず下り9番線のホームを新上り線と同じ位置まで延長する工事が行われ、完成した2011年1月末より延長部分の供用が開始されました。同時に、旧上り線の跡地を利用してエスカレータを上下1機ずつ新設する工事が行われました。こちらは東日本大震災による部品供給の停滞などもあり、当初より完成が遅れましたが、6月上旬にようやく完成を迎え供用が開始されました。現在は内装の一部が未完成の状態で、今後その仕上げの作業が行われるものと思われます。
左:下り9番線停止位置変更前のホーム東京方。2010年12月23日撮影
右:同じ箇所の停止位置変更後。屋根は骨組みのみとなっている。2011年6月19日撮影
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9番線の停止位置変更に伴い移設される信号機。使用開始前のため黒いビニールで覆われていた。
左が東京方面の出発信号機、右がホーム中ほどの第二場内信号機・出発反応灯など。
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下り9番線ホームが大船寄りに延長される際、列車の停止位置の変更が行われました。これは下り列車の停止位置を大船寄りに1両半分移動させるもので、関係する信号設備も全て大船寄りに移設されています。また、この移設に伴い、ホームの東京寄りは昨年4月の上り線移設時点で既に使用されていなかった部分も含めて完全に不要となったため撤去する工事が行われており、6月時点では屋根板が全て取り外されています。既に床面の一部も撤去されていることから、今年中にはホームの構造物全てが姿を消すものと思われます。
■西口駅ビルが建て替えに着手…横浜駅の再開発は次のステップへ
横須賀線ホームの拡幅工事がひと段落した横浜駅ですが、2010(平成22)年8月に新たな事業着工の計画が発表されました。それは西口駅ビルの建て替え事業です。
横浜駅西口の駅ビルは複数のビルが複合して形成されているもので、古いものでは築年数が半世紀を超えるなど老朽化が進んでいます。駅という公共施設である関係から阪神大震災以後は耐震補強の必要性にも迫られてきましたが、建物が古く改修が困難であることからこれまで建て替えに関する検討が続けられてきました。そして今回、この西口駅ビルの中で一番北側に位置する駅ビル「CIAL(シァル)」と「横浜エクセルホテル東急」について所有者であるJR東日本と東急電鉄の間で計画がまとまり、去る2010(平成20)年8月26日に事業に先立って必要となる「環境影響評価方法書」が横浜市に提出されました。(いわゆる「環境アセスメント」の開始。)
計画では現在の駅ビルとホテルの建物を全て解体・撤去したうえで、地上33階、地下4階の超高層ビルに建て替えることとなっています。また、建物の一部は現在の京浜東北・根岸線ホーム3・4番線の上まで張り出す構造となり、この部分については地上8階建てとなる計画となっています。さらに、駅の北側にある現在は保線作業の事務所などが置かれている鶴屋町の一部区画にも地上9階、地下1階の立体駐車場・駐輪場が建設される計画となっており、新しい駅ビルとは線路沿いに新設される遊歩道で接続する計画となっています。この新駅ビルの工期は8年の予定となっており、既に横浜エクセルホテル東急は今年1月に閉館したうえで内装類の撤去工事に入るなど取り壊しに向けた準備が着々と進められています。
横浜駅に関してはこのほかに横浜市が主導となり進めている「エキサイトよこはま22」という大規模再開発計画が存在します。これは横浜駅西口駅ビルの建て替えのみならず、駅を中心に半径500~700mの範囲全体を開発対象とし、環境に配慮した省エネルギー型の建物への改築・リニューアル、現在は独立している地下と地上の施設や交通機関同士の円滑な連携、中心部への自動車の流入抑制による回遊性の向上、水害対策と親水環境を両立した河川の再整備などその内容は多岐にわたっています。
東日本大震災とそれに伴う電力不足はエネルギーを大量に消費するこれまでの日本の生活様式に一石を投じる大きなきっかけとなりました。横浜駅のみならず日本各地で行われている都市開発は今後大きな方針転換を余儀なくされるものと考えられます。この横浜駅の再開発事業が大量消費社会からの脱却を図るモデルケースとなることを期待しております。
▼参考
(仮称)横浜駅西口駅ビル計画の環境アセスメント手続き着手について - JR東日本(PDF)
横浜市 都市整備局 都市再生推進課 横浜駅周辺地区
asahi.com : 横浜駅西口に195mビル 再開発、19年度めどに完成 - マイタウン神奈川
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