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京急品川駅地平化・北品川駅高架化工事 - 品川駅再開発2023(1)
公開日:2024年01月27日22:09
品川駅では上野東京ライン開業に伴い大幅に敷地が縮小された旧田町車両センター跡地の再開発が進められています。これに連動する形で現在京急品川駅のホームを高架から地上へ降ろす工事と北品川駅を高架化する工事が行われています。前回の調査から1年が経過し、現地ではJR線を跨ぐ新しい橋梁の架設準備が開始されたことから、9月以降現地の調査を行いました。今回も京急品川駅・北品川駅の事業区間全体の状況をレポートします。
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京急品川駅地平化・泉岳寺駅改良 - 品川駅再開発2022(3)(2023年2月8日作成)
京急品川駅の地平化
京急品川駅1番線。横浜方面の電車は基本的にこのホームから発車する。
京浜急行電鉄(京急)は、東京都港区の泉岳寺駅から羽田空港および神奈川県南部の三浦半島にかけて路線網を持つ私鉄です。泉岳寺駅からは都営地下鉄浅草線と相互乗り入れを行っており、浅草線を経由し千葉県の成田空港まで運行される列車もあります。
京急本線の起点駅は都営浅草線との接続点である泉岳寺駅ですが、同駅を発着する京急の列車は浅草線直通列車と快特の一部となっており、品川駅が東京側の実質的なターミナルとなっています。京急品川駅は島式ホーム+片面ホームの2面3線に加えて泉岳寺寄りの上下線間に2本の引上線(通称「新品川」)があります。このうち西側の3番線は行き止まりとなっていることから、朝ラッシュの普通列車と夜の座席指定列車“Wing”など一部列車が発着するに留まっており、大半の列車を1・2番線2線のみで捌いています。特にJR線との乗り換え口に面した1番線は横浜方面・羽田空港方面の複数種別の列車が数分間隔で発車しており、混雑や誤乗のリスクが高くなっています。
上:品川駅上部を横断する東西自由通路は京急品川駅の部分で階段になっている。2020年2月16日撮影
下:京急品川駅の地平化前後の横断面比較図
この京急品川駅は、品川駅に乗り入れる各鉄道の中で唯一高架化されています。品川駅では1998年に東西自由通路が完成しましたが、京急の駅が高架化されているためにその部分で通路が地上へ迂回するレイアウトとなっています。品川駅では、今後リニア中央新幹線や東京メトロ南北線など新たな鉄道路線が開通する計画となっており、駅周辺の更なる発展が見込まれています。現状のように東西自由通路が地上へ迂回すると、これらの開発エリアへのアクセス性に問題が出ることが予想されました。
これらの問題を解決するため、京急品川駅のホームを2面4線に拡張するとともに駅全体を地上へ降ろす計画が立てられました。これにより長年の懸案だった行先・種別ごとの発着ホーム分離が可能となります。なお、泉岳寺寄りの引上線は現行通り2本設置されます。地上に線路を降ろす区間が必要となるため、駅全体が泉岳寺方面(北)に移動します。
移設後の駅上部には地上9~28階建ての高層ビル4棟(品川駅街区地区)※が建設されます。また、隣接する国道15号(第一京浜)ではすでに公表されている歩行者用デッキの整備に加え、地下に東京メトロ南北線の延伸が決定しました。地平化後の京急品川駅や高層ビルはこれらの施設と一体的に整備され、駅西側の高輪地区との連携も強化されます。これらの再開発事業は、既に着工している高輪ゲートウェイ駅周辺とともに国家戦略特区に指定されています。
▼脚注
※北側から順に「北街区」(地上28階・地下3階)、「南街区南-a棟」(地上28階・地下2階)、「南街区南-b棟」(地上9階・地下1階)に加えて名称未定のホテル棟が建設される。
北品川駅の高架化
京急品川~北品川間にある通称八ツ山踏切。急カーブ上にあるため電車の通過速度が遅く遮断時間が長い。
京急品川駅を出た京急本線は急なS字カーブを描きながらJR線をオーバークロスし、台地上にある北品川駅に向かいます。このS字カーブの最小半径は100mと非常に急であり、車輪を軋ませながら25km/hというゆっくりとした速度で通り抜けていきます。このカーブを含む北品川駅の前後には、八ツ山通り・旧東海道など3箇所の踏切があります。2012年に京急蒲田駅付近の高架化が完了したことから、都内の京急本線上に残る踏切はこの3箇所のみとなっています。この区間は前述の通り羽田空港方面・横浜方面の全列車が集中しており、急カーブによる走行速度の遅さもあって終日に渡り開かずの踏切と化しています。
この開かずの踏切を解消するため、北品川駅については逆に高架化することとされました。高架化後の北品川駅は現在と同じ対向式ホーム2面2線(+保守機材線1線)のレイアウトとなり、高架橋は現在線の真上~やや東に建設されます。また、地平となる品川駅との間の40m近くに及ぶ高低差を接続するため、駅自体を新馬場方面(南)に数十m移動させます。
工事の手順
京急品川~北品川間の高架化前後の比較図
※国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「淡色地図」「空中写真」合成レイヤーに加筆
京急品川~北品川間はJR線を跨ぐ橋梁を架け替えるため現在線の北側に並行して新しい高架橋を建設します。一方京急品川駅・北品川駅は現行のホームの真下もしくは真上に新しいホームを作ります。また、京急品川駅泉岳寺寄りの引上線部分は、引上線の両側に泉岳寺駅へ向かうトンネル入口があり、現在の線路を維持したままでは新しい線路を作ることができません。そのため一旦線路を東側(高輪ゲートウェイ駅開業前のJR山手線跡地)に移設したうえで現在の高架橋を取り壊します。引上線、京急品川駅、北品川駅、新馬場駅方面高架橋接続部分それぞれの工事手順は以下の通りです。
A断面:引上線部分
引上線部分の地平化手順
※クリックで拡大
①着工前(現状)
②下り線をJR線跡地に建設した仮設高架橋に移設する。
③引上線を下り線跡地に建設した仮設高架橋に移設する。
④高架橋跡地に新しい線路を敷設し、4線全てを地平化。
B断面:京急品川駅本体部分
京急品川駅本体部分の地平化手順
※クリックで拡大
①着工前(現状)
②単純撤去となる3番線以外の高架橋を仮設構造に作り替える。
③仮設高架橋の下に新ホームを建設し、線路を地平化。
④仮設高架橋を撤去し、コンコースを建設する。
C断面:北品川駅本体部分
北品川駅本体部分の高架化手順
※クリックで拡大
①着工前(現状)
②現在線の真上に高架橋を建設する。上り線側は保守基地の跡地に仮の橋脚を立てる。
③線路・ホームを高架化
④地上ホームを撤去し、上り線側の橋脚を本来の位置に付け替える。
D断面:北品川~新馬場駅間高架橋接続部分
駅間高架橋接続部分の施工手順
※クリックで拡大
①着工前(現状)
②現在線を囲むように門型の枠を作り、計画よりも少し高い位置に新しい軌道桁をセットする。
③ジャッキを操作して軌道桁を計画高さへ降下し、線路を高架線へ接続する。
④門型枠を撤去し、高架橋を完成させる。
高架橋や駅設備の仮設化が進む
着工から3年が経過し、京急品川駅周辺では既存の高架橋の仮設化や橋梁の新設に向けて準備が進められています。今回は昨年9月2日に調査した現地の状況をレポートします。
京急品川駅ホーム端から泉岳寺方面を見る。高輪築堤の発掘調査が続いており仮線の構築は始まっていない。奥では早くも環状4号線の橋桁架設が始まっている。
泉岳寺~京急品川間のトンネル出口は、上記の通り一旦線路をJR山手線側に振り替えたうえで地上に新しい線路を敷設する計画となっています。しかし、この振り替え先の土地は高輪築堤の遺構が埋没していると想定されるエリアに重なっており、試掘調査の結果実際に関連すると思われる盛土や暗渠などがいくつか出土しました。そのため現在も調査が続いており、仮設高架橋の本格的な工事は開始されていません。
左:解体が進む高輪口駅舎
右:東西自由通路の階段は迂回路の準備のため6月から半分閉鎖された。
右:東西自由通路の階段は迂回路の準備のため6月から半分閉鎖された。
上:解体が進む高輪口駅舎
下:東西自由通路の階段は迂回路の準備のため6月から半分閉鎖された。
下:東西自由通路の階段は迂回路の準備のため6月から半分閉鎖された。
京急品川駅本体部分は本格的な工事に先立ち、支障となるJR高輪口駅舎の解体が進められています。高輪口駅舎の中には東西自由通路へ通じる階段やエスカレーターがあります。工事期間中これらの機能を維持するため、現在の階段の南隣に仮設の階段が設けられる計画となっており、6月以降現在の階段の一部が閉鎖されています。
左:泉岳寺寄りのホーム端は線路のバラストが抜かれ、鋼材により支持されている。
右:第一京浜に面した工事車両入口の名称はズバリ「品達ゲート」
右:第一京浜に面した工事車両入口の名称はズバリ「品達ゲート」
上:泉岳寺寄りのホーム端は線路のバラストが抜かれ、鋼材により支持されている。
下:第一京浜に面した工事車両入口の名称はズバリ「品達ゲート」
下:第一京浜に面した工事車両入口の名称はズバリ「品達ゲート」
高輪口駅舎の解体作業と並行して京急の高架下では、地平化までの間ホームや線路を支える仮支柱や仮の床面を作る工事が進められています。仮設高架橋への改築は通路などに関係しないホーム両端から進められており、線路は徐々にバラストが抜かれ、まくらぎとレールのみのシンプルな構造に変わりつつあります。
横浜寄りのホーム下には後ほど説明するJR線上空の橋梁架替えに必要な工事車両の出入口も設けられました。その部分は元々あった高架橋のコンクリート床面が取り壊され、薄い鉄製桁が渡されています。この工事車両入口は2020年春までラーメンテーマパーク「品達品川」があった場所で、工事車両の出入口はそれにちなみ「品達ゲート」と命名されています。
八ツ山踏切横で開始された橋台の工事
JR線を越えた反対側の品川第1踏切(八ツ山踏切)横では、隣接する京王品川ビルに挟まれたわずかな空間でJR線を跨ぐ新橋梁の橋脚構築が始まりました。地平化される京急品川駅と高架化される北品川駅の高低差は40m近くに及ぶため、この間は24~35‰の急勾配で接続されます。また、高架化後もS字カーブは残りますが、その最小半径は現在の100mから170mへ緩和されるため、走行速度は幾分向上するものと思われます。
北品川駅は跨線橋の代替となる地下道を建設中
北品川駅は現在上りホーム側にしかなく、下りホームへは跨線橋を通じて出入りしています。跨線橋が高架橋建設の支障になることから現在代替となる地下通路の掘削が進められています。地下通路は跨線橋のほぼ真下に設けられており、その部分は線路が橋梁状に作り変えられています。
高輪築堤に配慮した八ツ山新橋梁架設工事
山手線留置線跡地で始まった八ツ山橋梁の架設構台製作
京急品川~北品川間ではJR線を橋梁でオーバーパスしています。京急品川駅の移設や北品川駅の高架化により線形が変わるため、この八ツ山橋梁は架け替えられる計画となっており、昨年夏より山手線留置線跡地でその工事に必要となる架設構台を作る工事が開始されています。この構台の上で新しいトラス桁を組み立てた後、JR線を越えて北品川駅側の橋台まで橋桁を突き出すように架設します。この方法を「送り出し工法」といいます。なお、構台は地平化後の新しい線路とは違う位置に作られており、将来この上を電車が走るわけではありません。
上:架設構台と八ツ山新橋梁の位置関係。留置線跡地でトラスを組み立てた後、JR線上に送り出す。
国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「空中写真」レイヤーに加筆
下:架設構台の設計変更イメージ。高輪築堤遺構エリアへの侵入を回避するため、後ろ側の仮トラスをJR線上へ送り出した後装着する計画に変更した。
この架設構台が作られている山手線留置線跡地は、品川駅の初代駅舎があった位置でもあります。また、現駅舎の直下には高輪築堤第8橋梁に関連する築堤(南横仕切り堤)が埋没していることが判明しており、構台の製作にあたってはこれら遺構の損傷を最小限に抑える必要がありました。着工に先立ち実施した試掘調査の結果、構台が主に設置される旧留置線部分については地盤にいくつかの特徴が見られたものの、まとまった量の人工物は存在しないとみられることが判明しました。
送り出し工法では、架設作業中トラス桁を支えるため前後に仮のトラスを取り付けて桁を延長します。当初計画通りこの仮トラスを装着しようとした場合、後ろ側の仮トラスを支える構台が高輪築堤の遺構エリアに侵入してしまい、地中の遺構を傷つけてしまうと予想されました。そこで本体トラスの組み立て期間中は後ろ側の仮トラスを省略し、ある程度組み立てが終わった時点でトラスをJR線上へ少しだけ送り出し、構台上に空きスペースを作ったうえで後ろ側の仮トラスを追加することにしました。これにより構台の長さが20m短縮可能になり、遺構エリアへの侵入が回避されます。
品川駅構内では引き続き高輪築堤の発掘調査が続く一方、調査が完了した高輪ゲートウェイ駅周辺では高層ビルの建設が本格化しています。次回はその高輪ゲートウェイ駅周辺の状況や、出土した築堤石材の利用状況などについてレポートします。
▼参考
京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)連続立体交差事業 | 京浜急行電鉄(KEIKYU)
品川駅街区地区における開発計画について | ニュースリリース | 京浜急行電鉄(KEIKYU)
京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)連続立体交差事業 高輪築堤調査・保存等検討委員会での検討経緯 | 京浜急行電鉄(KEIKYU)
品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)における高輪築堤調査・保存等検討委員会での検討経緯:JR東日本
京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間) - 東京都建設局 連続立体交差事業(連立事業)ポータルサイト
品川駅西口基盤整備事業 | 東京国道事務所 | 国土交通省 関東地方整備局
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品川駅再開発(3)京急品川駅地平化と北品川駅高架化(2020年3月1日作成)
品川駅再開発(2)2018年~2019年、そして今後(2019年11月29日作成)
→山手線留置線の板橋駅への機能移転について
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