迷惑な進化--病気の遺伝子はどこから来たのか

迷惑な進化--病気の遺伝子はどこから来たのか
シャロン モアレム
日本放送出版協会
¥ 1,890


進化医学研究の博士である著者が糖尿病やアルツハイマー病、ソラマメ中毒など分かりやすい例を使いながら、なぜ進化の過程でそういった迷惑な遺伝子が受け継がれているのかを中心に最新の進化医学の本。

分かりやすい文章で書かれていながら、研究に裏付けされた斬新な説が語られており、非常におもしろいです。例えば、寒冷期を行きのびるため体内の糖度をあげるための性質が今となっては糖尿病のもとになっているとか、患者の血を抜く瀉血(しゃけつ)は迷信ではなくそれなりの効果があるから行われてきたとか。確定していることだけではなく、人類がなぜ毛がなく、二本足歩行で、皮下脂肪があるのかについて、実は人類は昔水の中および水辺に棲んでいたという水生類人猿説などまだ説の域をでない物も積極的に紹介してあり、最新の進化医学をかいま見ることができます。

<抜粋>
・あなたの祖先がノルウェーのイヌイットの漁師など、ひじょうに寒冷な地域に住んでいた人だったなら(中略)寒さで手や足の毛細血管が閉じはじめて、しばらくすると、あなたの体は短時間だけ欠陥を開いて暖かい血液を手足に送りこみ、ふたたび欠陥を引き締める。(中略)イヌイットの漁師は、零度以下になっている手の表面温度をほんの数分で10度にまで高めることができる。
・(アメリカアマガエルは)冬のあいだずっと体を完全に凍らせて、仮死状態になっている。だが、冬眠をする哺乳類が厚い皮下脂肪で体温と栄養を保ちながら深い眠りにつくのとちがい、このカエルは完全に冷えきっている。
・ALDH2-2変異型はなぜアジア人に多くて、ヨーロッパ人には皆無なのだろうか。その答えは飲料水にある。人類が町や都市に集まって住むようになると、飲むための水と汚れを流すための水の問題が発生する。(中略)それぞれの文明はそれぞれの解決策に行き着いた。ヨーロッパでは発酵を利用した。(中略)一方、地球の別の場所では涌かした水で茶を飲むという方法がとられた。煮沸消毒だ。ヨーロッパではアルコールを解毒する遺伝子をもっていなければおそろしく不利だったがアジアではそうでもなかったため、アジアのALDH2-2保有者は生き延びて子孫を増やしたというわけだ。
・成人の体内に棲みつく「よそ者」微生物の細胞は、哺乳類としての人間を形作っている細胞の10倍も多いのだ。よそ者を全部かき集めると100種を超え、重さにして1キロ半、数にして10兆から100兆個となる。
・胃潰瘍の原因のひとつは感染症だというのはいまなら常識だが、10年前までの科学界ではだれも信じていなかった。現在の僕たちが疑ってもいない症状の原因が、じつは感染症だったと近い将来に見出されることは大いにありうる。(中略)トキソプラズマが統合失調症を引き起こすという説を裏付けるような実験結果が出てきた。トキソプラズマに感染したマウスに統合失調症の治療薬をあたえると、マウスの行動に変化が見られるというのだ。※注:トキソプラズマは世界人口のおよそ半数が感染しているという説がある

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