久々のSIMPLEレビュー!
PSPで再出発したSIMPLE2000シリーズポータブルの第一弾として
THE麻雀やTHE将棋と一緒に発売された「THEホントに頭を使うアクション」だ!
本作は2007年にD3から発売された
「デッドヘッドフレッド~首なし探偵の悪夢~」の廉価版。
ディスクがフルプライス版と同じで、
タイトル画面まで全部一緒なのはちと萎えたぜ……。
昔SIMPLEで出した魔界転生やプロジェクトミネルヴァもそうだったけど
SIMPLEで出すんならちゃんとSIMPLEシリーズにしてくれ。
デッドヘッドフレッド~首なし探偵の悪夢~公式サイトフルプライス版の時の公式サイト。
かっこいいイラストや楽しい4コマが満載。
開発はVicious Cycle。
このゲームを出した後にD3に買収されて子会社になり、
「イートレッド~マットハザードの逆襲~」や
地球防衛軍の新作を手がけることになったのは記憶に新しい。
「THEホントに頭を使うアクション」という
しょーもないタイトルがついてるが誤解しないでもらいたい。
これは首なしでゾンビでガイコツで案山子でゴーレムでイケメンの探偵が
放射能汚染ミュータントゾンビガイコツマフィア軍団を相手に
墓場やカジノや原子力発電所で首をもぐか、もがれるかの
仁義無き戦いを繰り広げるゲームだ!
主人公である私立探偵のフレッドは、不気味な怪物共を従えて悪事を働く実業家の
ユリシーズ・ピットを失脚させるために調査を続けていたが、
ピットに見つかり殺されてしまう。
ピットを裏切ったドクタースタイナーに再生させてもらったものの、
死体に頭が無かったため、記憶を失った上に
液体の詰まったビーカーに脳みそがプカプカ浮かんだバケモノ頭に。
ピットへの復讐と失った記憶を取り戻すために、
そして自分の本当の頭を取り返すためにフレッドは戦うのだ。
ピットのせいでホープフィールドとその周辺の町はひどい状態。
ガイコツ頭のマフィアやゾンビが暴れまわってるし
通行人がいきなり緑色のゲロ吐いてぶっ倒れてそのまま死んだりするし、
ピットの建てた原子力発電所は事故起こしまくり付近を汚染しまくりで
核廃棄物から生まれたミュータントがこれまた暴れまわっていたりと
風都やゴッサムシティも真っ青な荒れっぷり。
そこでこの街を泣かせる奴は許さねぇ!
と、頭に来て立ち上がったのが我等の首なし探偵様よ。
ゲーム自体は軽い謎解き要素もアリの3Dアクションゲーム。
シナリオは一本道だが、本筋に関係ないサブミッションをこなしたり
豊富なミニゲームを楽しんだりと色々寄り道が出来る。
首なし探偵として蘇ったフレッドは自分の首を自在に取り替えることが可能で
これがこのゲーム最大の特徴だ。
ヘッドの交換はLボタン押しっぱなしでクイックメニューを開いて
使いたいヘッドの方向にアナログパッドを倒してLボタンを離すだけ。
背中からサッと首を取り出してサッと取り替える。
この間1秒にも満たないスピード感が素晴らしい。
ヘッドは空気や水を吸い込んで活用出来るゾンビヘッドや、
カラスを使った遠距離攻撃と炎にも負けない強い体のカカシヘッド。
鋭い爪による斬撃と歯を弾丸のように飛ばす遠距離攻撃を持ち、
ガイコツ頭もイカしてるボーンヘッドなど。
装備すると放射能が充満してる場所でも活動可能で
胃酸混じりのゲロで相手を溶かすことも出来るミュータントヘッドや、
小さくなって普通では入れない場所にも侵入できるようになるシュリンクヘッド。
通行人と会話するためだけに使うイケメンのマネキンヘッド、なんてのもある。
ビーカー頭やガイコツ頭じゃ怖がって話してくれないからね。

ゲッツ!
この豊富な種類のヘッドを使ったアクションが実に爽快。
戦闘はパンチ&首固有の特殊攻撃&ガードのシンプルな構成。
パンチボタンとジャンプボタンと組み合わせたコンボが強力だったり、
画面外からガンガン攻撃が飛んできたりと、バランスはやや大味なんだが、
カウンターとレイジアタックの爽快感は格別。
「怒ゲージ」を溜めることでヘッド固有の強力なレイジアタックが繰り出すことが可能で、
ゲージは敵にトドメを刺すと一つ。カウンターで倒すと二つ溜まる。
トドメは敵に一定以上ダメージを与えると可能で、
相手の首を引きちぎったり、巨大な敵の体によじ登って首を引っこ抜いたり、
ライフルを奪いとって腹をぶち抜いたりとなかなかえぐくてステキ。
この時のフレッドの「ハッ!」っていうボイスがまたカッコいいんだ。
カウンターは敵の弱点となるヘッドを装備している際に
溜め攻撃に対して発動させることが出来る。
弱点の首は敵が溜め攻撃を出す直前に右上に表示されるので、
敵が溜め攻撃を出すのを確認してから首を交換、カウンターというのも可能。
ぬるいと感じたらこのヒントを切ることも出来る。
ゾンビヘッドで相手の首に連続で噛み付いて食いちぎったり、
カラスをけしかけて鳥葬の刑にしたり、
ストーンヘッドだと地面に倒れた敵に
頑丈な自分の頭を何度も何度も叩きつけてミートせんべいにしたり
各ヘッドの特色を生かした攻撃になっている。これも見ていて楽しい。
レイジアタックは爪を使った回転斬りや電撃パンチ。
サイコキネシス(ゲーム中だと念力になってるが)で相手を破裂させる、
強烈な毒霧を噴射、岩を降らせる攻撃などこちらも種類は豊富。
戦闘自体は単純なんだが、相手に合わせてサッ、サッと首を取り替えて
カウンターなりレイジアタックでガツンと強烈な一撃を食らわすのがとにかく爽快。
「敵をぶん殴った時の気持ち良さ」「敵をぶち殺した時の気持ちよさ」
が凄くしっかりしてるのよねこのゲーム。だから少々大味でも飽きさせない。
ヘッドを選んでる時は時間が止まるので、慣れないうちはじっくり選ぶことが出来るし、
敵にやられて死んでもその直前からロード時間無しでリトライできる親切設計も嬉しい。
イベントで手に入る「金のミミズ」を使うことでヘッドの能力を拡張できるんだが
発射出来る歯の数が二倍になるとか
クリティカルが出やすくなるオーソドックスなものから、
体から放射能を発生させて敵の体力をジワジワ削れる
「原子力フィールド」が使用可能になる、なんていうキてる効果もあったり。
ヘッドは戦闘だけではなく謎解きにも使う。
液体やガスをなんでも吸い込めるゾンビヘッドを使って
除草剤を噴射して道を塞いでる植物を枯らしたり、
明かりが無いと謎の生物に殺される洞窟では、
火に平気なカカシヘッドを使って自分の体に火をつけて強行突破したり。
重量級のストーンヘッドで地面のスイッチを押したり。
まあ、割と力押しなところも多いけどゼルダ的で楽しい。
首を交換できるってのはシナリオにも生かされていて、
倒したボスの首をちぎって装着して情報をゲットしたり、
死体安置所に忍び込んで重要人物の首をちぎって装着して情報をゲットしたり。
ホントに独特だわこのゲーム。
登場人物も主人公の首無し探偵フレッドに始まり、
下半身のことや金のことばかり考えている相棒のベニー。
フレッドの恋人で結構いい性格してるジャンヌ。
ゾンビみたいな見た目で、
フレッドに敵の頭を集めてくれるように頼むヘッドコレクターのサム。
ボスは馬に乗ってカッコ良く登場するデュラハンや
フレッドのことを気に入って殺そうとしてくるゾンビ女のジュージュージュディ。
脇役でも死体を使って自分の美貌を保っているブティックのオーナーとか
対立していてお互いの農場に大砲を撃ち込みあってる農民とか。
味方も敵も脇役もみんなキャラ立ってるっていうか
このゲーム頭のおかしい連中が多すぎるよ!
ラスボスであるピットの肩腕であるレフティなんかは、
右腕が針金みたいに細くて、右足の長さも半分までしかないというキャラ。
義足の変わりに機関銃みたいなのに右足を乗せて歩く。
で、原子力発電所の管理人という……。
ゲームでやるのには表現的に色々マズそうなキャラなんだけど
このゲームは血液が全部緑色でCERO:Dなので大丈夫なんだろう多分!
レフティって名前は右腕が異常であることと、
「ボスの片腕」であることの両方にかかってるのかなやっぱり。
俺のお気に入りは中ボスのファッキャ・ケッツーさんなんだけど、
すぐ死ぬ上にグラフィックがザコキャラの流用なことが後で判明して泣いたぜ。
好きなんだけどなあ、ファッキャ・ケッツーさん。主に名前が。
ステージは街に墓場に森に農場に教会に工場にカジノに
放射能に汚染された毒沼にゴミ捨て場に原子力発電所にと。
怪しげな場所ばかりだがどこも個性的で、
その上かなりの広さがあって行ける場所、入れる建物も非常に多い。
背景の作りこみもかなり凝ってるので主観視点でじっくり眺めてみるのもいい。
原子力発電所ステージはあちこちで放射能漏れ起こしてたり、死体が転がってたり
「タイムレコーダーが故障したので今日の給料は入りません。修理は来週になります」
っていう放送が流れたり、ブラック過ぎる。
被爆して死んで核廃棄物満載のゴミ捨て場に捨てられた研究員の死体から
カードキーを回収するっていうイベントをクリアしないと入れないのもまたキてるわ。
ちなみに放射線が発生してる場所でミュータントヘッドを装備していないと、
ガイガーカウンターの鳴る音がして体力がガンガン減って死にます。
ミニゲームもビリヤード、バイオ鶏同士を戦わせる闘犬ならぬ闘鶏、
釣り、パイ食い競争、ピンボールと豊富。
特にピンボールはデキが本格的で、
縦持ちか横持ちかを選ぶことが出来たり細かい。もちろん台揺らしもあるぞ。
SIMPLEシリーズで出てるTHEピンボールとTHEピンボール×3より
普通にこっちのピンボールの方がデキいいと思うわ。まあ、双葉理保はいないがね。
ピンボールはフレッドをモチーフにしたものと、
劇中に登場するピット原子力発電所をモチーフにしたものの2種類。
原子力発電所をモチーフにしたピンボールってなかなか斬新だと思う
フリッパーの間に表示される放射能マークが超イカス。
管理人であるレフティに引っ掛けて
左右の大きさが異なっているフリッパーデザインもなかなか凝ってる。
さらに、「GOONZIRA」の文字を点灯させるとボーナス。
GODじゃなくてGOONなのでお間違いなきよう。
パイ食い競争は別にゲームとしては面白くないんだが、
他の対戦相手にゲロを吐き掛けて食欲を失わせることが出来るというひどい内容。
ゲロを食らった相手は気持ちが悪くなってまたゲロを吐く。
これ、元ネタはスタンド・バイ・ミーのアレなんだろうなあ。
「パイ食い競争に出場して全員をゲロまみれにして!」
なんていうサブミッションもあったりでまたひどい。
かなりイカしたゲームなんだが欠点は翻訳。
フレッドの悪態を交えたセリフ回しが
どうにもイマイチというか全体的に稚拙に感じられるし、
表現が硬いセリフも結構多い。
字幕もキャラの喋ってるセリフに合わせて表示するじゃなくて、
3行~4行とか使って一気に表示する。通常画面だけじゃなくてデモでも全部それ。
ムービーとかでもそんな感じで時には字幕で画面下が見えなくなったりも……。
うめき声とかをいちいち「んんん!んんん!」とか翻訳するのも間抜け過ぎるし、
「てめえなんてボタン一押しでお前なんかすぐに片付けられるのさ!」
ってセリフがあったり、
フレッドと恋人が会話するシーンでセリフが入れ替わっている箇所があったりと
すぐに分かるようなミスもチラホラ。
ピンボールでtiltをわざわざ「傾いた!」って訳してるのも脱力した。
台を揺らしすぎると「傾いた!」って画面に表示されるんだ……。
XBOXLIVEアーケードのゲームみたいな翻訳だわ。
そこまで複雑なマップ構成というわけじゃないんだが、
ミニマップの類が一切無いのでやや道に迷いやすいのと、
細かい読み込みがちょくちょく挟まるのも気になった。
ドアを開けるデモとかも細かいデモはスキップ可能なんだけど
スキップするとその分読み込みが入るから意味がまったくなかったり…。
あと、サブミッションの種類が豊富なのはいいんだけど、
クリアして貰える報酬がゴミみたいなアイテムばかりで
そこらのザコ敵を適当に殴ってる方がずっと稼げるのはちょっと物足りない。
とはいえ、金のミミズとかのレアアイテムが貰えるミッションもちゃんとあるし、
ミッションが割とイカれたのばかりで楽しいし、
とりあえず受けるだけ受けられて条件達成はいつでもいい、
というゆるい条件でのんびり挑めるから、個人的には気にならないかな。
自分の首をスナック感覚でホイホイ取り替えて進めるという独特のゲーム内容。
個性的な世界観とキャラ。やや大味だが楽しさをきっちり押さえたアクション。
死んでもすぐにリトライ出来る親切設計。
山ほどあるサブミッションに山ほどあるミニゲーム。
特定のヘッドじゃないと通れない場所みたいなのも多いので、
一通りヘッドを手に入れた後で探索するのがまた面白い広大なマップ。
とにかく人を選ぶ作品なのは確かなんだが、
ゲームとして良く作りこまれているし、
サブミッションやミニゲームを含めればボリュームもある。
B級要素を詰め込みまくった、とびきり悪趣味なおもちゃ箱みたいなゲーム。
色んな映画のパロディネタっぽいのも多いし、
スタッフロールでのフレッドのセリフは洋ゲーならでは。
これで2100円はお買い得過ぎる。公式サイト見てピンと来た人にはオススメだぜ。
しかしこの「THEホントに頭を使うアクション」ってタイトルはホントに最悪だと思う。
ここまで読んでくれた貴方ならお分かりいただけていると思うが、
これは山ほどのB級要素をゲロと放射能で煮込んでビーカー詰めしたゲームであって、
そういう脳トレパロのおふざけタイトルつけて売るゲームじゃねぇから!
「マス・デストラクション」っていうミサイルや火炎放射機を積んだ重戦車で
建物を爆破したり人間を燃やしたりする楽しいバーベキュー洋ゲーを
「お父さんにも出来るゲーム」ってタイトルにして日本で売るようなモンだ。
「THEホントに頭がおかしいアクション」だったら評価したんだけどね。
BANTRAIN最後に日本版デッドヘッドフレッドの
メインビジュアルを担当したtogatsukoさんのサイトを紹介。
日本版のパッケージや説明書のイラストや4コマは全部この人がやっている。
公式サイトで確認できるが、オリジナルの洋モノ丸出しのアクの強いデザインを、
雰囲気を崩さずにマイルドかつカッコ良くリファインしたその手腕は見事の一言。
D3PUBLISHER (2010-08-26)
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