アメリカ世界覇権を揺るがしかねない運命のハイチ by F・ウィリアム・イングドール 2
アメリカ世界覇権を揺るがしかねない運命のハイチ by F・ウィリアム・イングドール 2010年1月30日 翻訳:為清勝彦 The Fateful Geological Prize Called Haiti By F. William Engdahl (globalresearch.ca) Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo
http://tamekiyo.com/documents/W_Engdahl/geoprize.html その2
ハイチは、新サウジアラビアか?
ハイチとキューバの並外れた地質特性と、キューバ沖で世界最大級の石油資源が発見されたことを考えると、ハイチの領域内で大きな石油の発見があるという逸話的な話にも信憑性が出てくる。また、ブッシュ親子と今や国連ハイチ特使となったクリントンが、どうしてハイチにそれほど高い優先順位を置くのかの説明にもなる。
そして、なぜワシントンとそのNGOたちが、民主的に選ばれたアリスティド大統領を、二度も、素早く追放する動きを見せたのかも説明できる。アリスティドの経済政策の中には、とりわけハイチの天然資源をハイチの国民のために開発することがあった。
2004年3月、テキサス大学とアメリカのビッグオイル(巨大石油会社)が、カリブ海の炭化水素の可能性を意欲的にマッピングする調査を始める数ヶ月前であるが、ハイチの著述家Dr. Georges Michelが、「ハイチの石油」という記事をインターネットに発表している。そこには、
ハイチの島を共有する二つの国と周辺の海域の地下深くに巨大な手付かずの石油が埋蔵されていることは隠すことのできない事実である。人は手付かずのままにされている理由を知らない。20世紀初頭のハイチ島の物理的・政治的地図(1908年にAlexander PoujolとHenry Thomassetが組み立てた)には既に、ハイチのアルティボニット(Artibonite)川の右側支流リオトドエルモンド(Rio Todo El Mondo)川(今日ではThomonde川と呼ばれることが多い)の水源付近に大きな石油埋蔵資源があることが示されていた。 【脚注8】
2008年6月にRoberson Alphonseがハイチの新聞(Le Nouvelliste en Haiti)に書いた記事によると、「ハイチの石油(黒い金)探査の妥当性を示す根拠には心強いものがある。石油ショックの最中に、四社ほどがハイチ政府に石油採掘の正式な免許を求めていた」とある。
その当時、石油価格は一バレル140ドルを超えて上昇していた。ウォール街のさまざまな金融機関が操作していたのだ。Alphonseの記事には、ハイチ政府の鉱物エネルギー局長Dieusuel Angladeの言葉が引用してある。彼は「石油の採掘許可要請を四件受け付けている。(略)我々は黒い金(石油)の探査を実行するだけの十分な根拠を持っている。石油の探査は1979年で中止されている」とハイチの新聞に語っている。【脚注9】
1979年にハイチで行われた地質調査では、プラトーセントラルのPlaine du Cul-de-sac とL'ile de La Gonaiveで 11の試掘井が調査されたが、その結果判明したことをAlphonseはこう伝えている。「南の半島と北の海岸部で、石油があることを示す地表面の(試験的な)証拠が得られた、と技師のAngladeは語った。彼はこの探査がすぐに商業化に結びつくことを強く確信している」【脚注10】
ジャーナリストのAlphonseは、ハイチの弁護士Francois Lamothe の1979年8月16日の文書を引用している。9千フィートの深さまで「5つの大きな油井が掘削され」、そして、「ドイツのミュンヘンで物理・化学分析を受けた」ところ標本は、「石油の形跡が示されていた」と記載されている。【脚注11】
このハイチの1979年の有望な結果にもかかわらず、「ハイチで操業している巨大な多国籍石油企業は、発見された油田を採掘しないように圧力をかけた」と、Georges Michel博士は伝えている。 【脚注12】その結果、ハイチ領土内とハイチ沖の石油探査は、挫折し、突然の中止を迎えた。
正確さは劣るが同様の報告が、ハイチのホームページに掲載されており、ハイチの石油埋蔵量はベネズエラよりも遥かに大きい可能性があることが述べられている。 【脚注13】そして2010年、金融情報サイトのブルームバーグ・ニュースが次のように報道した。
1月12日の地震は、天然ガス田の可能性のある場所の近くを通る断層上で発生したと、地質学者のStephen Pierceは述べた。彼は、元モービル社などこの地で30年間働いている。地震により、断層沿いに岩盤組成にヒビが入った可能性があり、ガスや石油が一時的に地表に向けて染み出してくる可能性があると、月曜の電話インタビューで述べている。「地質学者たちが、断層帯をポルトープランスから国境に向けてガスや石油の漏出がないか調べまわっているが、今までに採掘されたことのない構造体を発見するかもしれない。彼ら地質学者には人情はないようだ」とZion Oil & Gas社(ダラスの会社でイスラエルでの採掘を行っている)の探査マネージャーのピアスは述べている。【脚注14】
サントドミンゴ(ドミニカ共和国)のインターネット新聞Leopoldo Espaillat Nanitaのインタビューで、ドミニカ石油精製(REFIDOMSA)の元社長は、「ハイチ国民の鉱物資源を違法に奪い取ろうと複数の国が陰謀している」と述べている。 【脚注15】ハイチの鉱物資源には、金、貴重な戦略的金属であるイリジウム、石油など様々なものがあるようだ。
抹殺されたアリスティドの発展計画
HLLN(ハイチ法律専門家リーダーシップネットワーク)の会長Marguerite Laurent (Ezili Dantò)は、追放されたアリスティドの弁護士を務めたことがある。
彼女は、アリスティドが大統領だった頃(ブッシュ時代の2004年に米国が支援した追放が起きるまで)、アリスティドは、彼の国家発展計画を構想し、冊子にして出版していると記している。その計画には、史上初めて、ハイチの資源がどこに位置しているのか既知の場所の詳細リストが含まれていた。この計画の出版は、ハイチの将来についてラジオなどマスコミで国民的議論を巻き起こした。アリスティドの計画は、ハイチの石油や金など貴重な資源の開発が、国の経済と国民の利益に幅広くつながることを確実にするため、官民の提携を実行するものだった。単にハイチを寡頭支配する5つの家系と彼らを支援する米国(キメラとかギャングといわれている)のためのものではなかった。 【脚注16】
2004年のアリスティド追放以来、ハイチは、胡散臭い選挙で選ばれたプレバル(Rene Preval)大統領とともに、占領された国になってしまった。
プレバルは、問題の多いIMFの民営化要求の追従者であり、アリスティドの排除を支援したキメラ(ハイチの寡頭権力)とつながっていると言われている。米国の国務省が、アリスティドが南アフリカ亡命から帰国する許可を拒絶していることは注目に値する。
さて、1月12日の破滅的な地震の発生により、米国の軍隊がハイチの4つの空港を掌握し、現在2万人もの兵士が駐留している。ジャーナリストと国際援助組織は、米軍が、緊急に必要な水や食糧、医薬品を空港の場所から人々に届けることよりも、軍事支配を強制すること(好んで「セキュリティ」と称している)にばかり関心を持っていることを非難している。
地震災害の「救援」を偽装した米軍のハイチ占領は、ワシントンとそれにつながる私企業の利権に、第一級の地質学的な「褒美」を与えることになるだろう。地震の前から、ポルトープランスの米国大使館は、世界中の米国大使館の中でも五番目に大きな規模であり、地政学的に重要な戦略地域であるベルリンや北京に匹敵するものだった。【脚注17】
キューバ沖で巨大な新油田が発見されロシアの会社が採掘を始めたこと、ハイチには同様の巨大な手付かずの石油(金、銅、ウラン、イリジウムも)がある明確な証拠が積み上がっていること、さらに、ハイチの南の隣人にはウゴ・チャベスのベネズエラがあること、アリスティドの帰国など国民に人気のあるリーダーがハイチの国民のために資源を開発する可能性があること、これらを考えれば、南北アメリカ大陸で最も貧しい国ハイチが、世界で唯一のスーパーパワーを吹き飛ばす壊滅的な打撃を与える可能性は十分にあるのだ。地震の余波として、国連ハイチ特使ビル・クリントンが、アリスティドの敵ジョージ・W・ブッシュとともに、「クリントン・ブッシュ・ハイチ基金」なるものを作った事実に、我々は戸惑いを感じるべきであろう。
先述のHLLNのMarguerite Laurentによると、緊急援助活動を隠れ蓑にして、米国、フランス、カナダは、今後の鉱物資源の支配に向け、ハイチの島のバルカン化を図っているという。彼女のレポートによると、カナダは、現時点でカナダの鉱物利権が存在しているハイチ北部を所望しているという噂がある。米国は、ポルトープランスと少し沖に離れたLa Gonaive島を要求している。ここは、アリスティドの開発計画の冊子によると、巨大な石油資源があるエリアだ。 そして、この要求にフランスが苦々しく抗議しているそうだ。また、事実上、国連が占領したこの国で、国連の拒否権を持つ中国は、こうした米・仏・加によるハイチの財産分割に一言あるようだと、彼女は述べている。 【脚注18】
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日本もバルカン化が図られているかもね?
脚注
8 Dr. Georges Michel, Oil in Haiti, English translation from French, Pétrole en Haiti, March 27, 2004, accessed in http://www.margueritelaurent.com/pressclips/oil_sites.html#oil_GeorgesMichelEnglish
9 Roberson Alphonse, Drill, and then pump the oil of Haiti! 4 oil companies request oil drilling permits, translated from the original French, June 27, 2008, accessed in
http://www.bnvillage.co.uk/caribbean-news-village-beta/99691-drill-then-pump-oil-haiti-4-oil-companies-request-oil-drilling-permits.html
10 Ibid.
11 Ibid. The full text indicated that, “five big wells were drilled at Porto Suel (Maissade) of a depth of 9000 feet, at Bebernal, 9000 feet, at Bois-Carradeux (Ouest), at Dumornay, on the road Route Frare and close to the Chemin de Fer of Saint-Marc. A sample, a ‘carrot’ (oil reservoir) drilled up from the well of Saint-Marc in the Artibonite underwent a physical-chemical analysis in Munich, Germany, at the request of Mr. Broth. ‘The result of the analysis was returned on October 11, 1979 and revealed tracks of oil,’ confided the engineer, Willy Clemens, who had gone to Germany.”
12 Dr. Georges Michel, op. cit.
13 Marguerite Laurent, Haiti is full of oil, say Ginette and Daniel Mathurin, Radio Metropole, Jan 28, 2008, accessed in http://www.margueritelaurent.com/pressclips/oil_sites.html#full_of_oil
14 Jim Polson, Haiti earthquake may have exposed gas, aiding economy, Bloomberg News, January 26, 2010.
15 Espaillat Nanita revela en Haiti existen grandes recursos de oro y otros minerals, Espacinsular.org, 17 Nov, 2009, accessed in http://www.espacinsular.org/spip.php?article8942
16 アリスティドの発展計画はハイチで2000年に出版されたInvestir dans l’Human. Livre Blanc de Fanmi Lavalas sous la Direction de Jean-Bertrand Aristide, Port-au-Prince, Imprimerie Henri Deschamps, 2000に所載。詳細な地図、図表、2004年に向けた国家計画が記載されており、計画は、農業、環境、商業・産業、金融部門、インフラ整備、教育、文化、健康、女性問題、公共部門の課題など広い範囲に及んでいた。” In 2004年にアリスティドを中傷する邪悪なプロパガンダ・キャンペーンが、NGOと国連も利用して実施され、ブッシュ政権は選挙で選ばれた大統領を追い出した。
17 Cynthia McKinney, Haiti: An Unwelcome Katrina Redux, Global Research, January 19, 2010, accessed in http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=17063
18 Marguerite Laurent (Ezili Danto), Did mining and oil drilling trigger the Haiti earthquake?, OpEd News.com, January 23, 2010, accessed in http://www.opednews.com/articles/1/Did-mining-and-oil-drillin-by-Ezili-Danto-100123-329.html
原文の紹介
The Fateful Geological Prize Called Haiti
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=17287
GlobalResearch.ca
http://www.globalresearch.ca/
F.William Engdahl ホームページ http://www.engdahl.oilgeopolitics.net/
訳者(為清勝彦)メモ
石油支配の歴史に詳しいウィリアム・イングドール氏から、ついにハイチの石油資源の記事が出たので紹介する。
(概要)
・ ハイチに膨大な石油資源(他の鉱物資源も)があることは「常識」だった。サウジアラビア並みの可能性あり。
・ 米系石油会社は、1979年に意図的にハイチの石油開発を中止させた。石油を高く稀少品にしたい彼らにとっては、「大きな油田は発見できない」「石油産出量はピークを迎える」と信じこませたい。
・ 2008年にキューバで「スーパージャイアント油田」が発見され、ロシアの会社が採掘している。中国も南米諸国に接近。→米国石油利権にとって脅威。
・ 2004年に米国が追放したアリスティド大統領は、ハイチ国民のための資源開発を計画していた。現在南アに亡命しているが、米国が帰国を拒絶している。
・ ハイチ人が巨大な石油の自主開発に乗り出せば、ベネズエラのチャベスも反米、さらにロシアや中国と結び付くと、米国支配層(石油・金融利権)にとっては、その世界覇権を揺るがす脅威。だから放置するわけにはいかず、「災害援助」を偽装して占領している。
以下略
追加リンク
ハイチ巨大地震の犯人は地震兵器?
http://money.mag2.com/invest/kokusai/2010/02/post_150.html
by oninomae | 2010-02-04 19:30 | 政治詐欺・政治紛争