2016.02/20 [Sat]
スペースオペラの金字塔が藤崎竜の手で紡がれる「銀河英雄伝説」 1巻 原作田中芳樹先生 漫画藤崎竜先生 感想
にほんブログ村
スペースオペラの金字塔、田中芳樹先生の「銀河英雄伝説」が藤崎竜先生の手で新たにコミック化されました。
道原かつみ先生版の完結を受けて新たに藤崎竜先生の手による「銀河英雄伝説」が開幕です。
小説だとアスターテ会戦から始まる「銀河英雄伝説」ですが、藤崎竜版では外伝作品のエピソードも取り入れ再構成しています。
ラインハルト、キルヒアイス、アンネローゼの出会いから、フリードリヒ四世の後宮に召し上げられるアンネローゼとの別れ、ラインハルトの野望への決意を丁寧に描いています。
藤崎竜版「銀河英雄伝説」大きな特徴はキルヒアイス視点で物語が語られることが多いということ。
更に藤崎キルヒアイスはまだまだ少年ということもあるのですが、完璧超人ではありません。
原作小説、アニメ版、道原版との差別化、新たな「銀河英雄伝説」のイメージをこれで確立したと個人的には思います。
ラインハルトからの誘いに対するこのキルヒアイスの表情。このシーンは藤崎竜銀英伝のカラーを決めてると思います。
もう一つ、藤崎竜銀河英雄伝説は、ラインハルト、ヤン陣営と対立するキャラをかなり負の感情を刺激するキャラ造形にしています。
アンネローゼを見出し後宮に入れるきっかけをつくった宮内省役人コルヴィッツ
エル・ファシルでのアーサー・リンチ少将
そして、銀河帝国皇帝フリードリヒ四世
特にフリードリヒ四世は超越した部分のあるキャラとしてのイメージが合ったのですが、藤崎竜版では生理的嫌悪感を抱かせるほどのキャラ造形。
ラインハルトが憎悪を向けるにふさわしい醜悪さを感じます。
1巻ではこの一コマだけはっきり表情がわかるのもまた憎らしい演出です。それまではシルエットや逆光ではっきりと見えないのですが、これがラインハルトと皇帝との距離を感じさせるのです。幼年学校を卒業したばかりのラインハルトには、フリードリヒ四世もゴールデンバウム王朝もいまだ超克するには力が足りないと。
いままであまり触れてこなかった幼年学校での生活も細かい所まで描き、かつ、銀英伝ファンならぐっとくる台詞を入れ込んだりと憎い演出です。
メカニックなどはアニメ設定を踏襲しつつも、新たな銀河英雄伝説を描き上げた藤崎竜版、人気キャラも次々出てくる今後の展開楽しみです。
それと、ラインハルトと同期であるという設定をここまで活かしてきたかと驚いたのがイザーク・フェルナンド・フォン・トゥルナイゼンの登場。
後々宇宙艦隊総参謀長に「声は遠くにとどくのに、目は近くのものしか見ない。忌避すべき輩ですな」と一刀両断される。トゥルナイゼンくん。将来を予見させる浅慮を見せて笑いを誘ってくれます。
まさかコマぶち抜きで登場する好待遇で登場するとは思いませんでした。
銀河英雄伝説を中学生の頃に読み、自分の人生に少なからず影響を与えたこの作品を、30年近くたって新たな作品として読める。至福と言わずしてなんという。
Comment
Comment_form