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2010年5月19日 (水)

ホットメディアとしての電話

 

学生時代のことだが、アルバイトで電話セールスをしたことがある。夕方頃から、事務所の電話ブースに入り、電話帳の一ページ分、一日100軒以上電話をかけまくるのだ。セールストークは、電話機の正面の壁に書いてある。「あなたは、私どもの顧客リストから選び出されました。(本当は電話帳なんだけど) この度、私どもから~という本が出版され、~さんに是非読んでいただきたいと思い電話をかけております。・・・・。」書かれてある文章をそのまま読みすすめば良い。質問に対する答えは、両サイドの仕切り板(パテッション)に書かれてある。

 

売っているのは確か、タイムライフ系の海洋について写真は多用してあるものの硬い内容の雑誌だった。今思い出すと確かサメに関する特集本だった。

 

注文までこぎつけるのは、100分の1の確率。100軒かけて注文がひとつとれるかとれないか。一日3件注文がとれると歩合がつくことになっていた。

 

とにかく、本を発送してよいという返事をもらったら、電話帳に書いてある住所を読み上げ、最後の番地を聞きだし、注文確定となる。もちろん、客には気に入らなかったら、返品してよいと逃げ道を与える。

 

 

 

いま思えば詐欺まがいの商法だった。しかし、電話をかけまくると相手の生活をかいま見ることも間々あった。「出産したばかりで本は読めないの」「年だからねえ、本が読めないよ」。中には、注文寸前までいって、住所の確認をしている間に、男がでてきて「そんなのはいらねえ、ガチャン」。モニタールームで聞いていた雇い主が、「残念もう少しだったのにね」。

 

 

 

電話というのはホットメディアだと言ったのはマクルーハン理論だったと思う。テレビはクールメディアで、比較的客観的に物事が見える。しかし、電話はかなり主観部分が入りやすく、客観的にはなりにくい。「オレオレ詐欺」のニュースを聞くにつけ、電話というホットメディアを利用し、電話をかける側が、迫真の演技をすると、当然受けては、勝手に頭の中の想像力が働き、ストーリーを信じてしまうのだ。それは、あたかも、ラジオドラマに入り込み、話のクライマックスで心臓がドキドキ興奮するのに似ている。

 

 

 

有名な話では、1938年に火星人来襲のドラマをニュース放送のような雰囲気でスタートしたところ、ラジオを聴いていた人々が本当のニュースと思い込み大騒動になったという事実がある。

 

 

 

しかし、マクルーハンも、ホットメディアの電話を使ってこのような詐欺が横行したことを聞いたら、なんと言うだろうか?ごく近い将来、テレビ電話が普及した場合、テレビ電話はクールメディアとしての役割か? または電話と同じホットメディアなのか?気になるところだ。それとも、偽りのビデオ映像を使って、新たな詐欺を働くのだろうか?

 

 

 

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