2016年は出生数がまた減って98.1万人で、
初の100万人割れとなったことをお話したのでした。
「出生数が100万人を割った」
2015年は100.6万人で、2014年の100.4万人より微増です。
昨年の記事を見ると、厚生労働省はこの微増について、
安倍政権の経済政策や子育て支援の効果だ、などと分析しています。
「出生数5年ぶり増加、100万8000人 15年推計子育て支援影響か」
同省によると30代の出産数が前年より増えており、
「雇用状況の改善に加え、保育所の整備などの子育て支援策が
影響している可能性がある」(担当者)とみている。
最近10年の傾向を見ると、2006-07年、2007-08年、
2009-10年と出生数の変化がほぼ横ばいの年はいくつかあります。
2012-13年も0.7万人減少なので、比較的減り幅は小さいと言えます。
これらと比較すると、2014-15年に微増したのも
「変動範囲内」の可能性があります。
安倍政権の経済政策や子育て支援は、
この際、関係ないのではないかと思います。
子どもを持たない理由の上位に、雇用や収入の不安定があることは、
よく言われているし、統計が示していることでもあります。
「未婚・晩婚化の意識調査」
アベノミクスで雇用が改善したと言っても、
女性や若年層は低賃金の非正規雇用が多く、
生活の安定が得られたとは言えない状況です。
実際、恋愛や結婚に関心のなくなった若年層が
最近になって急速に増えている事実があります。
「「増えた雇用は非正規」の実態」
「結婚願望と交際経験の減少」
子育て支援に関しても「保育園落ちた日本死ね」で、
だいぶ話題になったにもかかわらず、
安倍政権は保育士の賃金水準の引き上げに不熱心です。
「保育士の給与が低い理由」
「保育士給与2%引き上げ案」
安倍政権の経済政策や子育て支援には、出生数を目立って
上昇させる要素は取り立ててないと言ってよいでしょう。
出生率が2015年だけ微増したところで、
安倍政権の施策は関係ないと考えたほうが、
かかる実情に合っているのではないかと思います。
厚生労働省は以前にも、「2015年に待機児童が増えたのは、
アベノミクスによって女性の就労者が増えたから」
なんて分析して、出産適齢期の女性の就労者数は増えていないと、
データを示して反証されたことがあります。
「待機児童と女性就労者数」
2015年に出生率が微増したことをアベノミクスの成果
なんて分析するのも、厚生労働省が安倍政権の顔色を
伺ってのことではないかと、勘ぐりたくなってきます。
2015年に出生率が微増したことが、
かりにアベノミクスの成果だったとしても、
安倍政権の施策の成果は1年限りということになります。
2013年も2014年も2016年も、出生率は減っているからです。
(2017年以降はまだどうなるかわからないですが。)
2016年12月の毎日新聞の記事を見ると、次のように述べています。
2016年はアベノミクスが成果を出さなかったことは
認めたと言っていいでしょう。
「加速する人口減少 16年推計 出生数100万人割れ」
厚労省は「昨年は雇用や経済の状況の好転が追い風になったが、
今年は雇用情勢などに目立った変化はなく、
出産世代の女性人口減に伴い減少した」と分析している
2015-16年の2.5万人の出生率減少は、
最近の10年間の中では、比較的大きいほうです。
安倍政権は出生率の減少に関しては、
ほとんど対処できずにいると考えたほうがよいくらいです。