特集
悩ましいモバイルノートのサイズ問題。14型と12.5型のどちらにすべきか?VAIOノートで考えてみた
2025年10月6日 06:06
14型ノート「VAIO SX14」と12.5型ノート「VAIO SX12」の新モデルが9月に発売された。SXシリーズはちょうどいいサイズ感でビジネスユーザーに人気があるが、どちらも持ち運びを考慮したモバイルノートで装備もよく似ている。
基本的にモバイルノートは、1kg前後の重さと、14型以下のサイズであることが多い。画面が大きい14型ノートにするか、さらに質量を減らしてそれ未満のサイズにするかは、VAIOを問わず、ほかのメーカーのモバイルノート選びでも悩ましいところだ。
そこで、ここではVAIO SX14とVAIO SX12の両者を横並びで細かく比較してみて、14型と12.5型ノートで実用面にどういった違いがあるのか、使い勝手はどう変わるのか、といったあたりを確かめてみることにした。
なお、今回はVAIO SX14とVAIO SX12の中でもスペック的に上位モデルとなる「ALL BLACK EDITION」を借用した(直販価格27万6,800円から)。試用機のスペックは標準構成よりもかなり盛り盛り(約40万円)だったが、これをベースに比較してみる。
実用的なデスクスペースは?外部モニターなども組み合わせて置いてみた
まずはサイズ感の比較から。方や14型ディスプレイ、方や12.5型ディスプレイということで、並べて見れば確かにディスプレイや筐体の大きさにははっきりとした違いがある。この違いが、たとえばデスクに置いたときの見た目の印象や使い勝手にどんな影響を与えるだろうか。
ということで、「一般的な広さのデスク」(幅120cm×奥行60cm)と「狭いデスク」(幅60cm×奥行60cm)に置いてみたのが下記の写真だ。それぞれで「ノートPC単体」「外部モニターとのセット」「外部モニターと外付けキーボード・マウスのセット」の3パターンで配置してみた。
一般的な広さ(普通)のデスク
狭いデスク
ノートPC単体であれば、SX14とSX12の両方とも、狭いデスクであっても快適に利用できそうだ。外部モニターとのセットでも、奥行きは多少余裕がなくなるとはいえ問題なく使える。
しかし、「外部モニターと外付けキーボード・マウスのセット」だと、SX14の場合、狭いデスクでは外付けキーボードの利用が難しい。ノートPCのパームレストにキーボードを半分載せざるを得ず、不安定なので安全性を考えるとおすすめできない(SX14に傷も付いてしまいそうだ)。
SX12のほうはなんとかギリギリ作業できるが、窮屈ではある。SX14もSX12も、スペースに少しでも余裕を持たせるため、狭いデスクではクラムシェルモードにして使う、といったことも考えたい。
対して、一般的な広さのデスクであれば横方向に広げて配置できることから、SX14も「外部モニターと外付けキーボード・マウスのセット」が実現できる。外部機器と一緒に使うことを考えている場合は、デスクスペースをどうしても広げられないならSX12を、一般的な広さ以上を確保できるのならSX14を、という選択になるだろう。
サイズが違えば入るバッグも変わる?持ち運びのしやすさを比較
続いて、持ち運びを想定したときのバッグへの収まりやすさを見てみたい。重量は試用機を実測したところSX14が1,054g、SX12が906gと約150gの違いで、正直なところ持ち運んでいるときにその差を実感することはない。それよりも、大きさによる違いのほうが気になりやすいのではないだろうか。
そんなわけで、以下の3種類のバッグを用意して、そこにSX14とSX12をそれぞれ収納してみた。
- 小さめのトートバッグ
- ビジネスバッグ
- 大きめのバックパック
それが下記の写真だ。実際には裸のままバッグに入れるのではなく、スリーブケースにしまったうえでバッグで持ち運ぶことが多いと思われるが、今回は違いが分かりやすいようにスリーブケースなしとしている点はご了承いただきたい。
小さめのトートバッグでは、SX12はすっぽり収まっているものの、SX14ははみ出してしまった。このままの状態でSX14を持ち運ぶのは現実的ではないだろう。SX14を持ち運ぶならせめてビジネスバッグ以上の大きさはほしい。大きめのバックパックであれば、ぴったりサイズのスリーブケースと併用しても余裕があるはずだ。
小さいPCは非力なの?ベンチマークでPC性能チェック
VAIO SX14 ALL BLACK EDITION | VAIO SX12 ALL BLACK EDITION | |
---|---|---|
OS | Windows 11 Pro | |
CPU | Core 7 150U (10コア12スレッド、最大5.4GHz、Processor Base Power 15W) | |
GPU | Intel Graphics(CPU内蔵) | |
メモリ | 32GB(LPDDR4X) | |
ストレージ | 1TB(NVMe M.2 SSD) | |
ディスプレイ | 14型液晶 1,920×1,080ドット (4K HDR対応モデルあり) | 12.5型液晶 1,920×1,080ドット |
インターフェース | Thunderbolt 4(Type-C) 2基 USB 3.2 Gen 1(Type-A) 2基 HDMI出力 ヘッドセット端子 | |
通信機能 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、有線LAN 1Gbps | |
WAN | NanoSIM+eSIM(非対応モデル選択可) | |
カメラ | 207万画素 | |
セキュリティ | Windows Hello顔認証・指紋認証 | |
スピーカー | ステレオスピーカー(Dolby Atmos対応) | |
キーボード | 日本語配列(英語配列モデルあり) | |
バッテリー駆動時間 | 動画再生時9~9.5時間 アイドル時22~24.5時間(JEITA 3.0) | 動画再生時8.5~9.5時間 アイドル時24.5~28.5時間(JEITA 3.0) |
サイズ | 約320.4×222.9×13.3~17.9mm | 約287.8×205.0×15.0~17.9mm |
重量 | 1,054g(実測) | 906g(実測) |
価格 | 40万4,800円(VAIOストア直販価格) |
次に処理性能を比較してみよう。今回試用したSX14とSX12のスペックをチェックしてみると、表にある通り、ほとんどのスペックが同一。サイズ、重量以外にはバッテリ稼働時間が多少異なるくらいだ。であるならば、パフォーマンスも同じになるのだろうか。ベンチマークテストを実行してみた。
結果はご覧の通り。どのテストでもほぼ誤差と言えるような違いしか出ず、同等のパフォーマンスを持っていることが分かった。同じCPUやメモリ・ストレージ容量を選ぶ限り、SX14とSX12でPCパフォーマンスには差がないと考えて良さそうだ。
ただし、異なるところが1点。それはファンノイズだ。3DMark実行中の高負荷状態で動作音を騒音計で計測したところ、SX14は「48.3dB」、SX12は「47.5dB」という結果に。SX14のほうがノイズが大きいことになるが、聴感上の差はごくわずかではある。個体差によるものとも考えられるので、これを根拠に「より静かなほう」を選ぶほどのものではないだろう。
ディスプレイサイズの違いによる影響はどこに現れる?
先ほどのスペック表にある通り、SX14とSX12とでインターフェイスを始め各種装備にもほとんど違いはない(1つだけ挙げるとすれば、SX14は4K・HDR対応ディスプレイモデルも選べる、というのが異なる点だ)。
しかし、同じ性能・装備でも、ディスプレイサイズが違えば使い勝手は多少なりとも変わってくるはず。そこで、SX14とSX12でWebページを表示して比べてみることにした。
どうやらSX12のほうがより多くの情報を表示できている。が、これはSX14がデフォルトで150%のスケーリングになっているため。SX12のデフォルトである125%に合わせると、解像度が双方同じフルHDであることから、見た目の広さは同一となった。
ただ、125%にしてもディスプレイサイズが大きい分、SX14のほうが文字などの要素もひとまわり大きい。なので、スケーリングをもう1段階下げた100%にしてみた。
これによってSX14のフォントサイズを限りなくSX12に近づけつつ、画面の見た目の広さは圧倒的にSX14が上回る形に。情報量をできるだけ多くしたい、でもフォントの視認性も一定以上は確保したい、ということであれば、やはり14型ディスプレイのSX14が有利なようだ。
キーボード周り、カメラ、セキュリティなど装備面の差は?
ディスプレイ以外では、タッチパッドのサイズが両者で異なる。SX14は広め、SX12はかなり小さめで、指先を大きく動かしやすいという意味ではSX14のほうが操作性は上になるだろう。
ただし、キーボードのサイズやレイアウトについては完全に同一だ。パームレストやキーボード左右のスペースに多少の違いこそあれど、タイピングする上で使い勝手の差はないと言える。もちろんタイプフィーリングについてもまったく同じだ。
207万画素の内蔵Webカメラの画質についても、キャプチャ画像を見る限り違いはない。マイクとスピーカーの「AI ノイズキャンセリング」機能や、カメラの画質補正機能などが使える独自の「VAIO オンライン会話設定」も、SX14とSX12で同じものがプリインストールされており、Web会議はどちらも同じようにこなせる。
内蔵スピーカーは両者ともにDolby Atmos対応で、筐体サイズが異なるにもかかわらず、音の広がり感は同等と思える。ただ、SX14のほうが若干低音域の厚みがあるように感じられた。映画などのエンタメコンテンツは、ディスプレイサイズが大きいこともあり、SX14のほうがより楽しめるに違いない。
セキュリティ面では両者とも、電源ボタン一体型の指紋センサーによるWindows Hello指紋認証、およびWebカメラによるWindows Hello顔認証に対応。在席・離席状態を認識する人感センサーも内蔵しており、着席した瞬間に顔認証を実行してログオンしたり、離席時に自動で画面ロックしたり、といった機能も実現している。安心・安全なPC利用ができるのはどちらも同じだ。
性能は変わらない、でも使いどころはちゃんと異なる
VAIO SX14とVAIO SX12の場合、サイズや重量が異なるモバイルノートとして、使いどころがしっかり変わってくるようだ。数値上は数cmのわずかな違いでも、快適に使える最小限のデスクスペースは変わってくるし、安全に持ち運べるバッグの大きさにも明らかな差がある。
ただし、性能や装備はほぼ同一なので、選択したCPUやメモリなどのスペックが双方同じである限り、パフォーマンスやできることは変わらない。ノートPCの場合「小型だと非力」とか「タイプしにくい」といったようなイメージもあるが、VAIO SX12にそれは当たらないし、キーボードの使いやすさもまったく同じ。気になりそうなのはタッチパッドの大きさくらいだろうか。
個人的には、ノートPC単体で使うことが多いなら画面の大きい14型を、そうでないならほとんどのケースで12.5型にしておけば間違いないのではという結論になった。とはいえ、今回はあくまでもVAIOの製品を使ってみての印象である。メーカーによっては変わってくるところもあるだろうから、1つの傾向とするにとどめたい。いずれにしても今回の内容がみなさんのノートPC選びの一助になれば幸いだ。