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Intel、288コアCPU「Clearwater Forest」を2026年前半に投入へ。9μm幅配線のFoveros Direct 3Dを活用
2025年10月9日 22:00
Intelは10月9日(現地時間)に報道発表を行ない、同社がXeon 6 6700E(開発コードネーム: Sierra Forest)の後継製品となる「Clearwater Forest」(開発コードネーム)の技術概要を発表し、来年前半にXeon 6+のブランドで投入する計画を明らかにした。
Clearwater Forestでは、新しい先進パッケージ技術となる「Foveros Direct 3D」を利用して、アクティブダイの上にCPUダイを3D方向に実装するという技術が採用され、トータルで288コアのDarkmontのEコアが実装されるという密度を重視したデータセンター向けCPUとなる。Intelとしては通信キャリアの5Gコア(5Gの機能を実現するサーバー)の構築など、CPUコアの数が重視されるアプリケーションに向けての製品として投入したい意向だ。
一般向け製品としては初めての288コアCPUとなるClearwater Forest
IntelのClearwater Forestは、2024年の5月に発表されたXeon 6のうち、Eコアを搭載した製品となるXeon 6 6700Eシリーズの後継となる製品だ。
Intelのデータセンター向けCPUは、製品のプロセッサーナンバーの末尾にPがつくXeon 6 6900PとXeon 6 6700P(開発コードネーム: Granite Rapids)、さらには末尾にEがつくXeon 6 6700Eという2種類の製品が用意されている。
Pがつく方は、クライアント向けCPUでPコアとして採用されているCPUコアで構成されている。たとえば、Granite Rapidsでは「Redwood Cove」(Core Ultra シリーズ1: Meteor Lakeに採用されたPコア)がCPUコアとして、最大で128コア搭載されているのがXeon 6 6900Pシリーズとなる。
それに対して、Xeon 6 6700Eシリーズは同じくCore Ultraシリーズ1のEコアとして採用されていた「Crestmont」のCPUコアにより144コア構成され、8チャネルのメモリ、300WのTDPというスペックになっていた。
なお、発表当初にはコンピュートタイル(1タイルで144コア)を2つ搭載して最大288コアになる「Xeon 6 6900E」も後日提供開始される予定とアナウンスされていたが、結局こちらは特定顧客限定とされ、大規模に出荷されることはなかった。
Clearwater Forestでは、同日に技術概要が発表された次世代Core UltraとなるPanther Lakeに採用されているEコアの「Darkmont」がCPUコアデザインとして採用されている。
Darkmontは、Crestmontと比較して2世代分新しいCPUになっており、デコーダが6ワイドから9ワイドに、整数演算のALUが4から8に、浮動小数点演算のALUが3から4に増えているなど、内部構造に大きな手が入っており、IPC(Instruction Per Clock-cycle)が大きく向上しているのが特徴となる。
今回このClearwater ForestではこのDarkmontを、1パッケージに288コア実装している。従来のSierra Forestの288コアは実質的には幻の製品となってしまったので、この点が一番大きな強化点と言える。それに加えてDarkmontを採用したことによる性能強化が実現されており、コア数とコアあたりの性能の向上という両方が実現されている。
9μm幅の配線を利用するFoveros Direct 3Dを利用して、288コアを実現
今回IntelがこのClearwater Forestの製品化に成功した背景には、CPUのダイをIntel 18Aという最新のプロセスノードで製造することができた点、また新しいチップレットの技術として「Foveros Direct 3D」を活用したことにある。
Clearwater Forestのコンピュートタイルは、4コアで1つのクラスタ(4つのCPUで1つのL2キャッシュをシェアする形になる)となるDarkmontコアを、6クラスタ搭載している。つまり、1つのコンピュートタイルで24コアを実現している。その24コアのコンピュートタイルを12枚、Intelのチップレット技術を活用してパッケージ上に実装している。
これまでIntelのデータセンター向けCPUではEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)と呼ばれるダイとダイをインターポーザの内部に埋め込まれたブリッジで実現する技術が利用されてきた。第4世代Xeon SP(Sapphire Rapids)や第5世代Xeon SP(Emerald Rapids)などがその典型例で、Xeon 6世代の2つの製品となるGranite RapidsとSierra Forestも同様だった。
今回のClearwater ForestではEMIBも使われているが、同時に3Dのダイスタッキング技術となるFoveros Direct 3Dが利用されている。具体的には、サブ基板の上に、EMIBを利用してベースタイルが3つ実装される。その上に、9μmという非常に微細な間隔の配線を利用したFoveros Direct 3Dにより、コンピュートタイルを12個載せる形になっている。
Intelはクライアント向けのMeteor Lake、Arrow Lake、Lunar Lake、Panther LakeでもFoveros Sで知られる3Dのダイスタッキングを利用しているが、こちらはパッシブダイを利用し、複数のダイを積層する形になっている。
それに対して、Clearwater Forestのベースダイはアクティブダイで、1つのベースダイにはDDR5のメモリコントローラが4つ、192MBのLLC、さらにはほかのベースダイやIOダイと接続するためのEMIBなどが搭載されている。そのベースダイが3つ、さらにIOダイが2つのEMIBによりサブ基板上に実装されている。このアクティブダイのベースダイ上に、1つのベースダイに4つのコンピュートタイルがFoveros Direct 3Dで3D方向に積層され、合計で12個のコンピュートタイルが積層されているのだ。
なお、コンピュートダイは最新のIntel 18Aで、ベースダイは1世代前までコンピュートタイルを生産していたIntel 3、そしてIOタイルはIntel 7で製造されている。基本的にIOタイルは前世代のXeon 6に採用されているものと同じで、Xeon 6で12チャンネルメモリを実現していたXeon 6 6900Pとピン互換を実現している。
Clearwater Forestは、Granite RapidsのXeon 6 6900Pシリーズとピン互換
こうしたDarkmontコア、Foveros Direct 3D、Intel 18Aなどの最新の技術要素を採用したClearwater Forestは、高密度向けのCPUとして高い競争力を持つ製品に仕上がっている。なお、製品名はXeon 6+になる。Intelによれば、Xeon 6とソケットピン互換であるならば製品名はXeon 6を維持してほしいという要望が多数あったためだという。
Xeon 6 6700E | Xeon 6 6700P/6500P/6300P | Xeon 6 6900P | Xeon 6+ | |
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開発コードネーム | Sierra Forest | Granite Rapids | Granite Rapids | Clearwater Forest |
CPUソケット | LGA4710 | LGA4710 | LGA7529 | LGA7529 |
ソケット数 | 1~2 | 1~2/4~8 | 1~2 | 1~2 |
ダイ構成 | CPU×1+I/O×2 | CPU×1~2+I/O×2 | CPU×3+I/O×2 | CPU×12+Base×3+IO×2 |
CPUコア | Crestmont | Redwood Cove | Redwood Cove | Darkmont |
CPUコア数(最大) | 144 | 86 | 128 | 288 |
製造プロセスノード(コンピュートタイル) | Intel 3 | Intel 3 | Intel 3 | Intel 18A |
製造プロセスノード(ベースタイル) | - | - | - | Intel 3 |
製造プロセスノード(I/Oタイル) | Intel 7 | Intel 7 | Intel 7 | Intel 7 |
メモリ | DDR5-6400 | DDR5-6400 | DDR5-6400 | DDR5-8000 |
メモリチャンネル数 | 8 | 8 | 12 | 12 |
PCIe Gen 5 | 最大88レーン | 最大88レーン | 最大96レーン | 最大96レーン |
UPI | 最大4レーン(24GT/s) | 最大4レーン(24GT/s) | 最大6レーン(24GT/s) | 最大6レーン(24GT/s) |
最大TDP | 350W | 350W | 500W | 500W |
今回は技術的な概要の発表で、SKUなどの具体的な製品の構成などは明らかにされていない。それらは来年(2026年)の前半に予定されている正式発表時に明らかになるだろう。例年のスケジュールだと、こうした高密度な製品は、通信キャリアの5Gコアなどに採用されることが多いため、来年の3月上旬に予定されているMWC 2026あたりに発表される可能性が高いのではないだろうか。