FLOWERS -Le volume sur printemps- (春篇) その1(シナリオレビュー)
祝・冬篇発売決定!
ということで、記事を書かずにやりっ放しプレイだったFLOWERSだけれど、ようやく2周目をしたので、ようやく記事にします。余談だけれど、イノグレは私のベスト3に入るお気に入りブランドなのです。
そのお気に入りポイントをごり押ししてくるのが、この作品。
この透明感は他所じゃ味わえない!
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『悪魔と青く深い海の間で』という英語の慣用句がある
"後がない、切羽詰まった状況"に使われる表現だ
青い海に飛び込み身を投げてしまった女性
後ろには悪魔、前には青く深い海がという状況であれば――
悪魔に食べられたくない女性は時として深い海のほうが魅惑的に感じるという
どちらを選んでも救いはない
これから始まるのは
優しい悪魔の囁きと、絶望の海への選択
救いのない二つの問いに迫られる、始まりのお話
「百合系ミステリィADV」と銘打たれているように、このゲームには主人公も含め、女の子しか登場しない。
(ついでに、全年齢レーティングなのでHシーンもない!)
四部作の「起」に位置づけられるこの春篇は、超絶コミュ障な主人公が、拙い足取りで初めての友達を作り、ゆっくりと絆を結んでゆく、三角関係のお話である。
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ストーリーそのものについては、語るべきことは多くない。
学院生活に起こる身近な事件を、主人公が探偵のように解決していくあたりが「ミステリィADV」なのだろう。
けれど、このゲームでのメインは、謎解きミステリィではなく、謎を解いた結果として影響を受ける少女たちの関係性がメイン。
(例えば、立花の濡れ衣を晴らしたことで、主人公のポジションが「取っつきづらいミステリアスな美人」から「知的で寡黙な大人な女性」にランクアップし、立花からの好感度がうなぎ上りする――など)
まぁ……マユリちゃんを失踪させた「真実の女神」は、本物のミステリィかもしれないけど。
この謎については、冬まで持ち越しということで……ひとつ。
(というか、毎度イノグレ作品は選択肢が意味不明すぎるんだよなあ?)
「好き」も「嫌い」も、本当に他人だったなら持ち得ない感情だ。
もはや他人でもただのクラスメートでもない「アミティエ」という仮初の友人となったせいで「関係」が生まれる。
三人の少女たちのそれぞれの思惑と、否応なしに起きる出来事と、どうしようもない感情によって、近づいては離れ、また近づいて……な、思春期独特の距離感が、このシナリオの醍醐味である。
ここでは主人公・白羽蘇芳にスポットを当て、感想文をまとめてみようと思う。
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彼女はいわゆる「おどおど系」で、内気な小心者だ。
このキャラクターには、たぶん好き嫌いがあると思う。
(うじうじ思い悩むばかりの彼女にイライラさせられた諸兄姉も多いのではなかろうか?)
けれど、そのメンタルの弱さとは対照的に、今流行りのラノベ主人公も真っ青な超絶スペックの持ち主でもある。
誰もが学年一と認める容姿に、恵まれた体躯、頭脳明晰、手先も器用で、アルパカみたいに優しくて、おっぱいも大きい。
彼女こそが「実は出来る系主人公」そのものなのだ。
ついでに個人的な話をさせてもらえれば、彼女こそが私の「憧れ」でもある。
もし私が女の子として生まれたのなら、蘇芳ちゃんになりたかった。
そう、そんな私はおどおど系の陰キャなのでした!
(どーでもいいことを一応断っておくと、今から女の子になりたいとは思わないので、TSモノには興味がなかったのでした)
そして、このシナリオはそんな人見知りな蘇芳ちゃんの成長ストーリーでもあるのだ。
例えば、「血塗れメアリー」事件での、沙沙貴姉妹との顛末。
自分の中に膨れ上がる感情を初めて発見し、思い切って言葉にした日。
「――だって、友達じゃない」
例えば、「桜狩」事件の最中、自暴自棄にすべてを吐露せざるを得なくなるほど弱り切ったマユリとの顛末。
自らの過去を明かし、そしてこう続ける。
「私が自分の事を告白したのは、マユリさんを擁護するためではないの」
「貴女が今ここで全てを失っては……諦めてしまったら、貴女を目指していた私も終わってしまう。そう感じたのよ」
「私を立ち直らせるのは……自分の為、か」
「そう。だから聖母役を降りるなんて言わないで。私が目指せる貴女で居て欲しいの」
蘇芳は決して自分に自信が持てるようになったから、強い言葉を口にできるようになったわけではない。
友人になれるほど彼女たちと積み重ねてきた日々を――つまりは友情を、信じられるようになったからだ。
そうして結実するのが、マユリエンドなのである。
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ふと
「悪魔と青く深い海の間で」という英語のことわざを思い浮かべ
私自身が分水嶺にいるのだと識った
後ろには悪魔、前には青く深い海がという状況――
"後がない、切羽詰まった状況"に使われる表現
どちらを選んでも救いはない
私たちの行為は神に叛するものだろう
だけれど、
優しい悪魔の囁きと、絶望の海への選択
救いのない選択を迫られている今こそ愛おしいと思えた
彼女たちの関係性は変わっていく。
それがたとえ背徳だったとしても、想いを交わすことの、互いのすべてを受け入れることの喜びを知る。
けれど、彼女たち自身は変わらない。
己の弱さを克服できないままだ。
真実はいつも残酷だという
ならば嘘は優しいのだろう
いつか読んだ文章にあった言葉、次はなんと続くのだったか
二人きりの深夜の図書室を「青く深い海」となぞらえた蘇芳は、なぜマユリを「悪魔」にたとえたのか。
互いのすべてをさらけ出し、重ねること。
その後戻りのできない一歩が「絶望の海」だというなら、「優しい悪魔の囁き」は、マユリの抱く二心だ。
――だから優しさは嘘だ
それを知っていたから、少女たちは祈るのだ。
どうかこの一時だけ
アングレカムの花言葉を私に――
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