クラウドサイエンスで野生生物研究に貢献

野生生物に遭遇した写真や動画を投稿すれば、手軽に研究に参加できる

2015.01.19
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メキシコ湾でジンベエザメと泳ぐダイバー(PHOTOGRAPH BY PABLO CERSOSIMO, ROBERT HARDING/CORBIS)

 ジンベエザメは一般的に、メキシコ湾の熱帯海域か、インド洋の暖かい海域に生息すると言われている。ところが2014年7月、米国東岸ニュージャージー州の一般市民が、1頭のジンベエザメに遭遇したとWebサイト『Wildbook for Whale Sharks』に投稿した。同サイトは、旅先で遭遇した動物の写真や動画をシェアするサイトである。

 同サイトの開発に携わった「Wild Me」のジェイソン・ホルムバーグ氏は、その投稿に驚いた。「そんなに北にジンベエザメがいるなんて、にわかには信じられませんでした。確認できる写真もありませんでしたし」

 ホルムバーグ氏はその後、裏付けとなる証拠を発見する。ニュージャージー州でジンベエザメをとらえた動画が、Youtubeにアップされていたのだ。このように、一般市民からの情報によって、科学者の想像を越える現象が発見されるケースが増えている。

 写真が簡単にアップロードできるようになったことは、野生生物学者たちにとって吉報だ。彼らが動物を特定し追跡するには、ビジュアルデータが欠かせない。衛星を利用したタグや自動撮影カメラなどの技術がいくら進歩しても、動いている判別しにくい種を特定するには、専門家といえども何らか助けが必要である。そして、一般市民もその助けになることができる。

 プロジェクトをうまく設計・運営すれば、専門家でない人からでも、正確な情報を集められる。たとえば、ニューヨーク州イサカのコーネル鳥類研究所には、年間20万人もの一般人科学者が、クラウド経由で参加している。

 WWF野生生物保護プログラムのコルビー・ロークス副代表は、「シチズンサイエンス、あるいはクラウドサイエンスは、将来有望です。テクノロジーを利用しないことは、潜在的なデータを無視することと同じ。同じデータを職員だけで集めようとすれば、莫大なお金がかかるでしょう」と述べている。

 では、一般人が世界の野生生物研究に参加するにはどうしたらいいのだろうか。以下に、それが可能な5つのサイト(すべて英語)を紹介する。

野生生物研究に参加できる5つのサイト(すべて英語)

Wild Me 野生生物の発見を誰でもアップロードできる、ユーザーフレンドリーなサイト。世界最大の魚(ジンベエザメ)を目撃したラッキーな人はWildbook for Whale Sharksに、マンタを見つけた人はMantaMatcherに報告を。

iNaturalist あらゆるレベルの動物学者が集まる、情報豊富なサイト。クラウドベースの発見記録から種や場所を指定した検索が可能で、研究に利用できる。iNaturalistの下にあるナショナルジオグラフィックGreat Nature Projectでは、グローバルな生物多様性データベースに写真をアップロードできる。コメントや品種の特定を行うことで、他の自然愛好家との交流も可能だ。

Snapshot Serengeti セレンゲティ・ライオンプロジェクトのサイトには、225台の自動撮影カメラで撮った数百万枚もの写真が蓄積されており、分類を助ける人を募集している。プロジェクトのデータベースからアフリカに生息する動物が表示され、その大きさ、形、色などの質問に答えることで、動物の種類を特定する。世界中の動物愛好家による回答は、今のところ96%の正解率を誇っている。

WildScan ペットショップや露店で販売されている動物の違法捕獲が疑われる際に、当局に報告できるAndroidアプリ。動物の大きさ、形、色、種に関する質問に答える方式で、写真のアップロードも可能。違法捕獲が疑われる場合、地元の当局がフォローしてくれる。

Bat Detective 巨大なクラウドサイエンス・プロジェクト、Zooniverseファミリーに属するサイト。北米に住むコウモリの音を聞いたり、音の波形を見てコウモリの種類を特定したりできる。コウモリの音の特定が進むと、研究者は何千種ものコウモリをモニタリングするのに役立つ。

以上を参考に、休憩中のちょっとした気分転換として、あるいは昔の旅行写真が大量に出てきたときなどに、野生生物研究に貢献してみてはいかがだろうか。

文=Karen de Seve/訳=堀込泰三

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