喘鳴(ぜんめい、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と鳴る呼吸音)、息切れ、胸の圧迫感。ぜんそく発作の症状は、特に子どもにとっては怖いものだ。しかし、10月9日付けで医学誌「Med」に発表された最新の研究は、子どもがぜんそくを発症するかどうかに妊婦がある程度の影響力を及ぼせる可能性を示唆している。
フィンランドの研究チームは、妊娠中に少なくとも週3回運動していた女性の子どもは、そうでない女性の子どもに比べて、ぜんそくと診断される可能性がほぼ半分であることを発見した。
「運動が(子どもの)ぜんそくの予防にもなることが初めて示されました」と研究を率いた東フィンランド大学のピルッカ・キルヤバイネン氏は話す。(参考記事:「妊娠中に足が大きく変化、元に戻らない場合も、何が起きている?」)
子どもがぜんそくを発症する原因は?
米国立衛生研究所(NIH)によれば、米国では約2500万人がぜんそくで、そのうち470万人が18歳未満だ。米国では毎年、70万人以上の子どもがぜんそく発作で救急外来を訪れている。日本では約1000万人がぜんそくだと推定されている。
ぜんそくは気道の炎症や収縮を引き起こす慢性の呼吸器疾患で、どの年代も発症の可能性がある。
ぜんそくの正確な原因はいまだ不明で、治療法も確立されていない。とはいえ、家系の中で受け継がれやすい傾向があり、30以上の遺伝子と関連づけられている。
母親がぜんそくの子どもは3倍、父親がぜんそくの子どもは2.5倍、ぜんそくを発症する可能性が高くなることが研究でわかっている。
「遺伝的な素質が非常に強い病気です」とキルヤバイネン氏は話す。「しかし、たとえ遺伝的な素質があったとしても、ぜんそくを発症するかどうかは環境要因に左右されます」
成人の発症には、抗生物質を使った出生前の治療、室内の汚染物質、喫煙、肥満などの要因が関係している可能性がある。(参考記事:「「ガスコンロじゃないほうが良い」科学が示す二つの理由」)
社会経済的な要因が重要な役割を果たすこともある。米国立環境衛生科学研究所が支援する研究チームは、大気汚染が最もひどい地域に住む成人は、ぜんそくの発症率が最も高いことを発見した。(参考記事:「動物性食品の生産による大気汚染で年1万人超が死亡、米国」)