日本ハム 自前球場建設へ 札幌ドームの借用負担に耐えかねる
(株)札幌ドームの業績は堅調に推移してきた。2016年3月期は売上高と稼働率で過去最高を見込み、黒字経営が定着している。稼いだ利益は設備更新に充てるなど、施設の魅力を高めることにも余念が無い。
札幌ドームは、札幌市の所有で、運営を第三セクターの札幌ドーム社に委託している。世界でも珍しい野球とサッカーのグランドが移動式により入れ替わる構造になっている。
ところが・・・(株)札幌ドームの利益の源泉である日ハム球団が自前の球場建設を検討している。
<札幌ドームと日ハムの関係>
札幌ドームの年間売上高のうち、7割が日ハム関連から得ている。
現在、球団とドームとの関係は、
1、球団がドーム側に開催日数に応じた費用の支払いを行っている。約9億円。
2、チケットは球団販売している
3、グッズは球団がドーム側に卸、ドーム側が販売している
4、売店・飲食店はドーム側が運営している
5、球場の広告・看板は球団が2.5億円をドーム側に支払っている。
6、球団側負担で、コンサートなどのたびにフィールドシート(ファールゾーンに突き出た客席)の撤去と設置を行っている。
7、コンサートなど行われるたびに球団側がドーム内のトレーニング施設の器具などすべて片付けをしている。
8、球団側が開催日の警備費、清掃代など負担している。
球団側は1の使用料外にドーム側に年間15億円ほどの支払いがある。
結果、9億円+15億円+2.5億円=26億5千万円。
日ハム球団は、親会社から年間27億円の広告宣伝費を受けているが、この札幌ドーム使用料にほとんどを費やしてしまう計算。
また、今後行われる札幌ドーム改修費は総額200億円が予定されており、20年で10億ずつ支払うことになるが、この費用の半分近くを日ハム球団が負担することになっているという。
こうしたことから、日ハム球団は、札幌ドーム使用料が球団経営に大きな痛手を与えているとしている。
日ハム選手の年棒合計は約27億円。選手の強化ができず、高額からダルビッシュや糸井などを放出せざるを得ない状況の球団経営となっている。
そうした中、日ハムが、新球場を建設するため、候補地の調査を進めているという。札幌市が所有する札幌ドームからの移転を前提に、同市内やその周辺など15ヶ所をすでにリストアップ。今後具体的に選定する。自前の球場を持つことで収益力を高めることができるとしている。
新球場は遊園地付で、開催日以外でも楽しむことができる施設を目指しているという。
自前の新球場では、看板広告だけでもかなりの売上高が見込め、売店・飲食店の売上収益も計上できる。ましてやドーム改修費の負担もせずに済む。
球団側は経営負担から2012年4月に、ドーム側に対し「使用料の値下げ、飲食店経営を日ハム側も携わる」等の要望書を提出したが、ドーム側が無視し続けたことにより、球団・日本ハム側は大きく自社球場建設へ動いたものと見られる。
(反面、札幌市は、日ハムが去れば当ドームを抱え、維持経費に相当の財政負担が生じることになる)
札幌ドーム社の決算推移
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/百万円
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売上高
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営業利益
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経常利益
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当期利益
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16年3月期
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3,800
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15年3月期
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3,677
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-492
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-454
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-427
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14年3月期
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3,315
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122
|
160
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74
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13年3月期
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3,645
|
379
|
432
|
243
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12年3月期
|
3,617
|
362
|
413
|
232
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11年3月期
|
2,847
|
51
|
103
|
40
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10年3月期
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3,694
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383
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458
|
166
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・所有は札幌市、運営は第3セクターの札幌ドーム
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・15年期の赤字はオーロラビジョン設置によるもの。
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(株)北海道日本ハムファイターズ
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2014年12月期の貸借対照表/百万円
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流動資産
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4,500
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流動負債
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1,609
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固定資産
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1,935
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固定負債
|
182
|
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資本金
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200
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利益剰余金
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4,443
|
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純資産合計
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4,643
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資産計
|
6,435
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負債+純資産
|
6,435
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・親会社の日本ハムから毎年27億円の広告宣伝費を計上
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