本文中にある褐色字は、書籍ならばルビを振りたい語句です。マウスポインタを合わせて下さい。ツールチップでその読みが表示されます 〔必ずしもその漢字本来の読みではないことに注意〕。
ローラの夢はついに叶えられた
LAURA’S DREAM
夢はどこからやってくるのだろう?
日毎 夜ごと 周りの人たちと
本当はやりたくもないのに演じている軋轢を
懲りもせずに 眠りの中で また繰り返す
人間という この愚かなる存在への
けっして終わり果てぬ 刑罰なのだろうか?
それとも……
欲しても欲しても 応えはなく
それゆえに尚更 ほしくなる
永遠に満たされぬ心が醸し出す
悲しい希望の澱か……?
正直いって わたしは
夢というものが嫌いだ
現を逃れた闇の中にあっても
変わらぬ死闘をやらされるなんて
もう好い加減 真っ平ごめんだ
それでも夢は訪れてくる
振り払おう振り払おうと 夜ごと眠りに落ちる前
深い水底へと沈んでいく自分を
つとめて想像裡に浮べる このわたしにさえも……
見覚えのない街
ふと気がつくと見覚えのない街を歩いていた。
センターラインのない幅の狭い道路なのに、その両側に高い街路樹が並んでいる。間隔はそれぞれ20メートルくらいか……。一見して有りふれた木であると解るのに、なぜか樹種を思い出すことができない。
幅5メートルほどの道は緩やかにカーブして、先の方は片側の樹列に隠されていた。反対側の幹の連なりはだんだんと不明瞭になり、遠くの方では暗褐色の壁のようにのっぺりと視界を阻んでいる。遠近法どおりに小さくなっていく樹冠は、それでも、異様なまでに高い位置に葉叢をなしている。それはまるで……緑の崖だ。
どうやら住宅街のようだった……。
大寺院の柱か 神社の鳥居のように太い樹幹の向こう側に、かなりの距離を置いて、平屋か せいぜい2階建ての建物が不規則に連なっている。見たところ家々は ごく普通の大きさで、巨大な街路樹とはどこか不釣り合いな感じがした。